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最近見た夢のお話し。


高級クラブのような、高層ホテルのラウンジのような場所にわたしはいる。
わたしは、ふわふわの少し毛の立った紫色のビロードのソファに座っていて、目の前のテーブルには美味しそうなお肉やシャンパンが山盛りに置かれている。

テーブルの向こうではオープンになった厨房があって、鉄板の上でお肉を焼くたび、大きな炎がブワッと舞う。

その夢は主観と俯瞰のふたつの視点から眺めることができた。
俯瞰してわたしを見たとき、わたしはかつて憧れていたすてきな女性モデルの姿になっている。
その人そのままの優雅な姿で椅子に座ってシャンパンを飲んでいた。
何人もの男性が彼女に声をかけ、名刺をわたしては去ってゆく。

その彼女の元に、スーツを着た女性がやってきた。
このパーティの給仕の人だろうか。
ここで視点は主観に切り替わる。

わたしの目の前に、スーツを着た女性がいる。
その人の出立や雰囲気からして、パーティ主催の運営の人だなと感じた。
その人が言う。

「〇〇さま、出席のご確認に、名簿にサインをお願いします。」

わたしは、「ちがう」と思った。
わたしはその名前じゃない。
今のわたしは完全に憧れていたモデルの彼女そのもの、だけど違う。
わたしには他の名前がある。
それなのに、思い出せない。

「◯◯さま、サインを」

その運営の女性がなかなかサインしないわたしに圧をかけてくる。
何度も何度も、サインを!と繰り返し、まるで脅されているようだ。

ちがう、ちがう、わたしはこの人じゃない。
わたしにはほんとうの名前がある!
それだけはわかる、だけどどうしても思い出せない。
苦しい、苦しい。
わたしの名前、なんだった??

目の前の女の顔をみるとイライラを隠そうともしない鬼の形相だ。
早く思い出さなければ、それまでサインは出来ない。
でも思い出してしまったら、このパーティから追い出されてしまうかも。


この人の名で書こうか、いや、出来ない。
だってわたしは彼女じゃないもの。


そこで目が覚めた。


こんなに詳細な夢を見たのは久しぶりだなあ。
起きた時は寝ぼけ眼でのんきにそう思った。
でもなんだか、すごく、すごーーく、大切なメッセージがそこにある気がして。
そんな気がしたから、夢のことを思い出しながら朝の支度をした。


その日はそのまま、絵を描いたりお散歩したり、気ままに過ごしていたのだけど、そのお散歩中に
「あ!」
と胸の奥にひらめいたのは


他の人になる事をやめることを選んだんだな
自分を生きることを選んだ道に今はいるんだ


ということだった。

ああ、自分ではない人生を生きるとは、本当の自分を忘れてしまうとは、あんなに苦しい事なのか。
本当の名前があるのに、誰もその名を呼んでくれない。
その事が、こんなに苦しい事だとは。

わたしにとっては、自分でないものになることは相当の苦痛らしい。
そのことを思い知った夢だった。


いま、わたしは「秀実さん」で生きていることがほんとうにうれしい。


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