【書評】グローバル・ジャーナリズム

共同通信で記者をされている澤様から頂いたご著書『グローバル・ジャーナリズムー国際スクープの舞台裏』を拝読しました。

https://www.amazon.co.jp/グローバル・ジャーナリズム――国際スクープの舞台裏-岩波新書-澤-康臣/dp/4004316537

パナマ文書をはじめ、世界に衝撃を与えた記事が取材され報道されるまでの過程は、まるで映画・小説のようで読んでいてドキドキします。今の日本ではあまり実感がありませんが、やはり、報道は、時としてマフィアとの戦いや、権力との対峙により、大きなリスクが伴うものです。それに立ち向かう記者たちの「ジャーナリズム魂」をリアルに感じることができました。各海外のジャーナリストの取材方法・組織の活動についても目から鱗のものばかりです。

また、この本を読む中で、権力と緊張関係がある点で、弁護士とジャーナリストも実は似たところがあるのではないかと感じました。正直な話、今までなぜメディアは不正を調査したがるのか、疑問に思うことが多々ありました。むしろ、社会を良くしようと活動している人たちや、そのような活動に焦点を当てて報道いただいた方が、より建設的な議論ができるのではないか、とも考えていました。

しかし、世界各国における腐敗や、権力との闘いを見たときに、やはり、「権力の監視」の機能は不可欠だと改めて実感しました。

また、日本の制度的な課題についても、ジャーナリズム的な視点で、そして、海外との比較も紹介されています。弁護士をしていると、個人情報保護の傾向は当たり前に感じてしまいます。
しかし、個人情報保護を徹底すると市民間における個人情報の流通が抑止されることになります。逆に国家や大企業はそのサービス等を通じて大量の個人情報を取得します。これにより、仮に国や企業における不正があったとしても、市民の立場でこれを検証し、指摘することは困難になります。
現状の日本の制度のリスクを、新たな視点から考えることができました。

グローバルレベルでの記者としてのノウハウの共有、連携の促進が、ジャーナリズムの発展、そして、日本の民主主義の実質化を促進することを実感し学ぶことができる本です。ぜひ、ご一読ください。

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