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感情を味方につける:安藤俊介氏が語るアンガーマネジメントの極意ーTHE21

 The21 2024年12月号の中で、「怒りを溜め込みやすい人が怒りとうまくつきあう方法ー安藤俊介氏」(p40)を取り上げます。

 ここでは、安藤氏が「アンガーマネジメント」に関する情報を中心に取り上げたもので、現代社会における怒りの感情とその管理方法について深く掘り下げています。この内容は、特にビジネスパーソンが職場や家庭で直面する怒りの課題に対応するために、非常に有益な内容です。組織風土の面で、人事としても考えるところが多くあります。

アンガーマネジメントの基本

 アンガーマネジメントとは、怒りを「我慢する」ものではなく、適切に付き合う方法を学ぶことであるという点が強調されています。多くの人は、怒りを抑え込むことで問題を解決しようとしますが、それは間違ったアプローチです。怒りは自然な感情であり、自己防衛のために起こるもので、生物学的にも本能的な反応として備わっています。そのため、この感情を無理に押し殺すのではなく、どう対処するかが重要です。

 怒りを適切に管理することは、特に日本社会においては重要なスキルとされています。日本人は一般的に、感情を表に出すことを避ける文化的傾向があるため、怒りを溜め込みやすく、その結果として突然爆発するケースが少なくありません。このような爆発的な怒りは、本人にとっては当然の行為であったとしても、周囲にとっては信頼を損なう行動とみなされる可能性があります。そのため、怒りの感情を適切に管理し、適切な場面で適切な形で表現することが、職場や家庭での円滑な人間関係を築く上で欠かせない要素となります。

怒りをコントロールする方法

 怒りを管理するための具体的な方法も紹介されています。まず第一に、自分自身の中で「怒るべき」状況と「怒らなくてよい」状況を明確に線引きすることが重要です。この線引きが不明確だと、周囲からは「何に怒るかわからない人」と見られることがあり、コミュニケーションの障害となることがあります。そのため、自分の価値観に基づいて怒りの基準を定め、その基準を守る努力をすることが推奨されています。

 さらに、感情が高ぶった際には、冷静さを取り戻すための方法として「6秒待つ」というテクニックが有効であるとされています。この6秒という時間は、大脳の原始的な部分である大脳辺縁系が感情を司る一方で、理性をつかさどる前頭葉が働き始めるまでの時間とされています。したがって、6秒間の冷静な時間を確保することで、感情に流されずに理性的な判断を行うことができるようになります。

 また、自分自身の怒りのパターンや「べき」という価値観を把握するために、怒りを引き起こした出来事を記録することが推奨されています。この記録を振り返ることで、自分がどのような価値観を持っているのか、そしてその価値観が厳しすぎないかを見直すことができます。特に、「まあ許せる」という範囲を広げる努力をすることで、怒りに駆られる頻度を減らし、より柔軟な思考ができるようになります。

怒りを適切に表現するためのポイント

 怒りを適切に表現するためには、いくつかの具体的なポイントを意識する必要があります。まず、相手を傷つけるような人格攻撃を避け、具体的な事実に基づいて指摘を行うことが重要です。例えば、「あなたはいつもこうだ」といった決めつけや、「使えない」という否定的な表現は、相手の人格を攻撃するものとして受け取られるため避けるべきです。その代わりに、「ここに誤植がある」「見出しと内容が一致していない」といった具体的な指摘を行うことで、相手が問題を解決するための具体的な行動を取りやすくなります。

 また、曖昧な表現を避け、具体的な行動を指示することも重要です。「しっかりやってほしい」や「きちんと仕上げてほしい」といった抽象的な表現では、相手が何をどうすればよいのかわからず、結果的に問題解決につながりにくくなります。具体的な指示を行うことで、相手が期待される行動を明確に理解できるようになります。

 さらに、長期的な視点を持つことも重要です。怒りの感情を通じて、相手に何を伝えたいのかを明確にし、その場の感情に流されるのではなく、建設的なコミュニケーションを図ることが求められます。

怒りをポジティブな力に変える

 怒りの感情は、適切に活用することでポジティブな力に変えることができます。例えば、自分のふがいなさに対して怒りを感じた場合、それは自己成長のきっかけとなる可能性があります。同様に、社会の問題に対して怒りを感じた場合、その怒りを変革へのエネルギーに変えることができます。このように、怒りを建設的な行動に変えることで、自己や社会の改善につなげることができます。

 怒りは「自分がどう生きたいか」を考える指針にもなり得ます。怒りの感情をきっかけに、自分の価値観や目指すべき方向性を再確認し、それに基づいて行動することで、より充実した人生を送ることができるでしょう。

 以上のように、今回は、怒りという感情を適切に理解し管理する方法を詳細に解説されていました。特に職場や家庭での人間関係を改善したいと考える方々にとって非常に参考になる内容となるでしょう。

人事の視点からの考察

 アンガーマネジメントは個人の感情コントロールを目的としたスキルであり、職場環境や組織運営においても非常に重要な役割を果たします。アンガーマネジメントは単なる個人の問題ではなく、組織全体の生産性やエンゲージメント、さらには職場の健全性を保つための基盤となるものです。人事の視点からアンガーマネジメントがどのように活用できるかを、具体的な要素に分けて考察します。

アンガーマネジメントを組織文化として根付かせる重要性

 アンガーマネジメントを導入することで、組織内での感情的な衝突や無駄な緊張状態を減らすことができます。怒りはしばしばコミュニケーションの妨げとなり、職場の人間関係に悪影響を及ぼします。
 例えば、怒りが適切に管理されない場合、チームの生産性が低下し、個々のメンバー間で不信感が高まる可能性があります。また、感情的な対立が続くことで従業員が職場に不満を抱き、離職率が上昇するリスクも高まります。さらに、怒りが暴言や行き過ぎた指導となり、ハラスメントとして扱われるケースも少なくありません。

 そのため、アンガーマネジメントを単なる個人スキルとして捉えるのではなく、職場全体で共有すべき文化の一部として位置づけることが重要です。これには、全従業員を対象とした研修やワークショップを通じて、怒りの感情を適切に表現する方法を学ぶ機会を提供することが含まれます。

管理職への支援と教育の重要性

 管理職は、部下を指導し、評価を行う役割を担っていますが、その過程で怒りを適切に管理する能力が求められます。特に、怒りをコントロールできない管理職は、部下に対して厳しすぎる態度を取る傾向があり、それがハラスメントとして問題化するリスクを伴います。こうしたリスクを軽減するため、人事部門は管理職に対して次のような支援を提供することが求められます。

 具体的には、管理職が怒りを建設的なフィードバックに変えるスキルを学ぶことが重要です。例えば、「この仕事はできていない」という否定的な指摘ではなく、「この部分をこう改善するともっと良くなる」という形で具体的な行動を促すフィードバックを行うことで、部下にとってもポジティブな学びの機会を提供できます。また、管理職自身が自分の怒りのトリガーや価値観を理解し、それを踏まえた上で感情をコントロールするスキルを身につけることも必要です。

メンタルヘルスとの連携

 怒りはストレスの一形態として現れることが多く、メンタルヘルスの問題とも密接に関連しています。長期間怒りやストレスを抱えた状態が続くと、心身に悪影響を及ぼす可能性が高まります。そのため、アンガーマネジメントをメンタルヘルス対策の一環として位置づける必要があります。

 具体的には、定期的にストレスチェックを実施し、従業員が抱える怒りやストレスの原因を特定することが有効です。また、相談窓口を設置し、専門家によるカウンセリングやアドバイスを提供できる体制を整えることも重要です。これにより、従業員が感情を適切に表現し、解消する機会を得られるようになります。さらに、職場に心理的安全性を確保することで、感情を自由に共有できる風通しの良い環境を作ることが、怒りの蓄積を防ぐ鍵となります。

人材開発とアンガーマネジメントの統合

 アンガーマネジメントは、リーダーシップやコミュニケーション能力の向上にも寄与するスキルです。特に人材開発の一環として位置づけることで、組織全体の成長を促進できます。若手社員が初期段階で感情管理スキルを習得すれば、将来的にリーダーとして活躍する際に必要な基盤を構築することができます。また、管理職に対しては継続的な教育プログラムを提供し、最新の知識やスキルを学ぶ機会を定期的に設けることが重要です。

 評価スキルの向上もまた、アンガーマネジメントの重要な要素です。怒りを抑え込むのではなく、建設的でポジティブなフィードバックを通じて、部下の成長を支援する方法を広めることで、職場全体の風土を改善できます。

組織全体への導入と持続可能性の確保

 アンガーマネジメントの効果を最大化するためには、組織全体での実践が必要です。人事部門は、定期的に従業員アンケートを実施し、怒りの管理や職場環境についてのフィードバックを収集することが重要です。その結果を基に、必要に応じて改善策を講じます。

 さらに、上層部が模範的なアンガーマネジメントを実践することで、従業員にその価値を伝えることも効果的です。チームビルディング活動の中に感情管理スキルの訓練を取り入れることで、相互理解を深め、職場の結束力を高めることができます。

 アンガーマネジメントは個々の従業員だけでなく、組織全体にとって重要なテーマです。人事部門としても、職場環境をより良いものへと変革するための具体的な施策を実行していく必要があります。このような取り組みを通じて、個々の従業員が感情を適切に管理し、組織全体のパフォーマンスを向上させることが可能となるでしょう。


オフィスと家庭の両方の環境を調和的に描き、怒りを適切に管理する象徴的な要素を組み込んでいます。穏やかな対話とリラックスした雰囲気が感じられるシーンです。時間や感情を管理するアイデアも表現され、視覚的にアンガーマネジメントのテーマを補完しています。


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