見出し画像

1on1の対話を変えるーアクティブ・リスニングによる人間関係構築の術

 先般、「能動的傾聴:アクティブ・リスニングで築く信頼関係ー川上真史氏より」という記事を公開しました。

 アクティブ・リスニングは、リーダー・エフェクティブ・トレーニング(L.E.T.)でも中核となっている重要な技術です。今回は、1on1ミーティングの中でのアクティブ・リスニングのあり方について考察してみたいと思います。

 1on1ミーティングは、上司と部下、先輩と後輩、同僚同士など、様々な関係性の中で行われる非常に重要なコミュニケーションの機会です。このような1対1の場面において、アクティブ・リスニングは極めて有効なテクニックだと言えます。お互いの理解を深め、信頼関係を構築するためには、相手の話に耳を傾け、その内面を汲み取ろうとする姿勢が何より大切だからです。

 1on1では、話し手と聞き手が直接向き合うことで、よりパーソナルな対話が可能になります。これは、アクティブ・リスニングの効果を最大限に発揮できる絶好の機会だと言えるでしょう。聞き手は話し手の表情やしぐさ、声のトーンなどの非言語的な情報も得ることができるため、話し手の感情や真意をより深く理解することができるのです。また、1対1の場面では、話し手も聞き手に対して遠慮なく本音を語りやすくなります。周囲の目を気にせずに、自分の考えや悩みを打ち明けられる安心感があるからです。

 このような1on1の特性を活かしながら、アクティブ・リスニングを実践することで、話し手と聞き手の間に強固な信頼関係が築かれていきます。例えば、上司が部下との1on1でアクティブ・リスニングを心がければ、部下の抱えている問題や悩み、将来のキャリアに関する希望などを引き出すことができるでしょう。
 部下の発言内容を正確に理解し、適切な質問を投げかけることで、部下は自分の考えを整理し、新たな気づきを得ることができます。また、上司が部下の話に真摯に耳を傾ける姿勢を示すことで、部下は上司に対する信頼感を深め、より開示的になっていくはずです。部下は自分の思いや考えを上司に理解してもらえたと感じ、上司に対する信頼感や安心感を強めるでしょう。

 同様に、同僚同士の1on1でも、アクティブ・リスニングは大きな効果を発揮します。お互いの仕事の進捗状況を確認し合ったり、困っていることを相談し合ったりする際に、相手の話を能動的に聞くことは非常に大切です。相手の立場に立って考え、共感的な態度で接することで、お互いの理解が深まり、協力関係が強化されていくでしょう。時には、相手の話の中から、自分では気づかなかった問題点や改善点が見えてくることもあるはずです。そのような気づきを得ることで、お互いの仕事の質を高め合うことができるのです。

 また、先輩と後輩の1on1では、アクティブ・リスニングを通して、後輩の成長を支援することができます。先輩が後輩の話に耳を傾け、適切なアドバイスを与えることで、後輩は自分の強みや弱み、課題などを明確に認識できるようになるでしょう。そして、先輩からの支援や励ましを得ることで、後輩のモチベーションや自信が高まっていくはずです。先輩にとっても、後輩の成長を間近に見られることは大きなやりがいにつながります。このように、1on1でのアクティブ・リスニングは、先輩と後輩の良好な関係構築に大きく貢献するのです。

 ただし、1on1でアクティブ・リスニングを実践する際には、いくつか注意すべき点があります。まず、聞き手は自分の意見や判断を押し付けないよう、細心の注意を払う必要があります。相手の話に耳を傾ける姿勢を示しつつも、最終的な判断は相手自身に委ねることが大切です。聞き手の役割は、話し手が自分自身で考え、決断できるように支援することであって、話し手に特定の方向性を強制することではありません。また、相手のプライバシーにも配慮し、聞き出した情報を慎重に取り扱うことが求められます。話し手から打ち明けられた内容は、原則として秘密として扱い、他者に漏らさないようにしなければなりません。

 加えて、1on1では話し手と聞き手の関係性によって、アクティブ・リスニングの効果が左右される可能性があります。例えば、部下が上司に対して強い遠慮や恐れを抱いている場合、なかなか本音を語ろうとしないかもしれません。部下は上司の顔色をうかがいながら、上司の望む答えを言おうとするかもしれません。そのような場合、上司は部下に安心感を与え、話しやすい雰囲気を作ることが重要です。上司自身が率直に自分の思いを語ることで、部下も心を開きやすくなるでしょう。
 また、同僚同士の場合、お互いの関係性によっては、遠慮なく本音を言い合える信頼関係が築けている一方で、ライバル意識から本音を隠してしまうこともあるでしょう。聞き手は話し手との関係性を考慮しながら、話し手が安心して本音を語れるような環境を整えることが求められます。

 このように、1on1におけるアクティブ・リスニングの実践には、状況に応じた柔軟な対応が求められます。聞き手は話し手との関係性を十分に考慮した上で、適切なアプローチを選択していく必要があるのです。画一的なテクニックを適用するのではなく、その場の雰囲気や話し手の反応を見ながら、臨機応変に対応することが大切です。時には、話し手の気持ちに寄り添うことが最優先される場合もあれば、話し手に冷静な判断を促すことが必要な場合もあるでしょう。聞き手には、状況を的確に見極める洞察力と、柔軟に対応する適応力が求められるのです。

 とはいえ、1on1は個人と個人の直接的なコミュニケーションの場であり、アクティブ・リスニングの効果を最大限に発揮できる場面だと言えます。相手の話に耳を傾け、その内面を理解しようと努めることで、お互いの信頼関係が深まり、よりオープンで生産的な対話が生まれるはずです。1on1を通して築かれた強固な信頼関係は、日常の業務におけるコミュニケーションにも好影響を与え、組織全体のパフォーマンス向上にもつながっていくでしょう。上司と部下、先輩と後輩、同僚同士など、あらゆる関係性の中で行われる1on1において、アクティブ・リスニングを実践することで、より強固な人間関係が築かれていくことを期待したいと思います。

 さらに、1on1でのアクティブ・リスニングの経験は、聞き手自身の成長にもつながります。相手の話に耳を傾け、その内面を理解しようと努める中で、聞き手は自分自身の価値観や考え方を見つめ直すことができるでしょう。相手の視点に立って物事を考えることで、これまで気づかなかった自分の偏見や先入観に気づくこともあるはずです。また、様々な立場の人の話を聞くことで、物事を多角的に見る力や、状況を俯瞰する力も養われていきます。このように、アクティブ・リスニングの実践は、聞き手の人間的な成長を促す貴重な機会ともなり得ます。

 アクティブ・リスニングは、1on1において非常に有効なテクニックであると同時に、コミュニケーション全般に通じる重要な姿勢でもあります。相手の話に耳を傾け、その内面を汲み取ろうとする態度は、あらゆる対人関係において欠かせない要素なのです。特に、1on1のような1対1の場面では、アクティブ・リスニングの効果が最大限に発揮されると言えるでしょう。上司と部下、先輩と後輩、同僚同士など、様々な関係性の中で行われる1on1において、アクティブ・リスニングを実践することで、より強固な信頼関係が築かれ、お互いの理解が深まっていくはずです。

 そして、そのような1on1での経験は、日常のコミュニケーションにも好影響を与えていきます。アクティブ・リスニングを通して培われた相手を理解しようとする姿勢は、チームワークの向上や、組織全体のコミュニケーションの活性化にもつながっていくでしょう。一人一人がアクティブ・リスニングを実践することで、より開かれた対話の文化が組織に根付いていくのではないでしょうか。

 また、アクティブ・リスニングの効果は、ビジネスの場面に限定されるものではありません。私的な人間関係においても、アクティブ・リスニングを心がけることで、相手との信頼関係を深め、お互いの理解を促進することができるはずです。家族や友人、恋人など、身近な人々との関係性を豊かにするためにも、アクティブ・リスニングの姿勢は非常に重要だと言えます。

 1on1は、アクティブ・リスニングの効果を存分に発揮できる貴重な機会です。この機会を最大限に活用し、相手の話に耳を傾け、その内面を理解しようと努めることで、より強固な人間関係を築いていくことができるでしょう。そして、そのような経験を積み重ねることで、聞き手自身も人間的に成長していけるはずです。

 私自身も、1on1を始めとする様々な場面で、アクティブ・リスニングを実践することの意義を再認識し、より豊かなコミュニケーションを目指していきたいということを改めて認識した次第です。


社員同士が1on1ミーティングを実施しています。モダンなオフィスで、温かく迎え入れる雰囲気が伝わっています。お互いの話に耳を傾け、理解し合う様子が表現されています。このイラストは、信頼、理解、効果的なコミュニケーションを示しています。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?