見出し画像

“ファースト・チョコ”それから

チョコをもらってからというもの、
僕の通学路(登校時)は大きく変わった。

しかし、それ以上に大きく変わったのは、
僕の気持ちだ。

眠っている間以外は、
ずっと彼女のことを考えている。
こんなことは初めてだった。

学校にいても、
家にいても、
お風呂の中でも、
テレビを見ていても、
マンガを読んでいても、
ずっと考えている。

認めざるを得ない。
これが“恋”というものか。

毎日毎日、家に帰ると、
包みを解いてチョコを眺める日々…

それだけなら単なる「内気(チキン)野郎」。
僕は、やることはやっていた。
(↑変な意味ではない↑)

朝、途中まで一緒に行きながら、
彼女についての知識を蓄積していった。
・ピアノを習っている。
・お姉さんが東京の大学に行っている。
・友達とバンドを組み、
 キーボードを弾いている。
・エイジア(Asia)という
 ロックバンドが好き。 等々。

特に“音楽”が2人の共通の趣味なので、
話が盛り上がった。

僕は長渕剛をこよなく愛し、
アコギをかき鳴らし、
「エレキやバンドは
 チャラチャラした音楽」
と放言していた。

しかし彼女の
「エレキとか興味ある?」に、
「うん。そろそろ始めようかな」
と即答。
やっぱ話は合わせとかないと。

ある日、僕は長渕剛のLPレコードを買った。
「いいなぁ~聴きたいな~」と彼女。
「え?貸そうか?」と僕。
「いいの?嬉しい!」と、
とんとん拍子に僕の家に
借りに来ることとなった。

僕の家は彼女と同じマンションの7階。
親は少し離れたところの本屋で働いてる。
そう…。
夕方は家に親はいないのだ…。
脳内BGM『チャンス到来』
   byバービーボーイズ

夕方の6時。
一度家に帰って着替えた彼女が、
レコードを借りにやって来た。

夏間近の僕の部屋。
レコードジャケットを見ている彼女の髪から
とても良い匂いがしてきた。

見つめる僕に気づいた彼女が
「ん?」と顔を上げた。
目が合った…。

その時、玄関の方から
「ガチャガチャ」と音がして、
ドアが開いた。

こんなことは滅多にないのだが、
何と!母が帰宅してきたのだ!

これが世に言う
“虫の知らせ”なのか。

母は
「親の留守中に女の子を引っ張り込んでいる!!」
とでも思ったのか、
物凄い空気になった。
凍り付いた。

レコードを持って彼女が帰った後、
母は
「ここに座りなさい」
と静かに言った。

もちろん正座だ。
長く激しい説教だった。

しかし、誓って言うが、
僕は何もしていない。
する気もなかった。
しかし、その「する気が無かった」ことが、
後々の悲劇を生むことになろうとは…。

【完結編に続く】

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?