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食べたいパンを焼く

パン屋をオープンしてもうすぐ2年が経つ。
この2年間、本当にたくさんのパンを焼いた。営業日が少ないので他のパン屋に比べれば製造数はものすごく少ないのだけど、いちから自分で考え、それを形にして、この手で売り、食べてもらうという全てをすることは、雇われてそのお店のパンを焼いたり、家で自分や家族のためにパンを焼くのとは全く別物だった。

オープン当初は、私が焼きたいパン、食べたいパン、食べて欲しいパンを焼いていた。それは2年経つ今でも変わらないのだが、ときに憧れから焼くこともあった。
SNSや本で他のパン屋のパンを見て、ゴツゴツしたゴリゴリのハードパンを焼きたくなって焼くこともあれば、具が溢れんばかりに包まれたパンを焼いたり、大きなパンを焼いたり。あとは使う材料もそう。物産館で買うことが主だったが、オーガニックや無農薬のものだけを使用しているパン屋を見て私の店もそうしようかと調べたり、酵母も自家製酵母とドライイーストを併用しているが、自家製酵母だけのパン屋をみて試みたり。

ただ、この憧れから焼いたパンは、正直パッとしないことが多かった。食べたい、焼きたいと思い焼くパンは良いが、こういうパンが並ぶパン屋になりたいからとか、こうしなければと焼いたパンの出来はイマイチ。美味しくないわけではないが、なにか違う。また焼こう、焼き続けようと思えないのだ。
結局残るのは、自分が起点のパン。

今の季節の食事と一緒に食べたいとか、この見るからに絶対美味しい野菜や果物を使いたいとか。美味しいものを食べたときの感動を大切な人にも共有したいと思うこととか。
そういう今の自分が感じるものをパンにしたとき、本当に美味しいと感じるし、作り続けたいと思う。
何を使ったとか、どう作ったとか、そういうことよりも大事にしたいのは、
このパンを私は食べたいだろうか。
並んでいたら手に取りたくなるだろうか。
大切な人におすすめしたいだろうか。
そういうことだと思う。

食べ物の好みが歳を重ねていけば変わるように、暮らしが変われば感じることや思うことも変わるように、私のお店なのだから、今の私が感じるままに、思うままにパンを焼けばいい。

どんなパンを焼くんですか?
そう聞かれたらこう答えたい。

今、私が食べたいパンを焼きます。

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instagram @hidekuni.mw

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