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東欧テクノロジーの雄「モルドバ共和国」。 政府の徹底した税制支援と優れたIT人材、GDP10%を超えるモルドバICT分野の秘密に迫る!(1)

モルドバ共和国といってもピンとくる人は少ないと思いますが、ルーマニアとウクライナに囲まれた東欧の小国です。首都はキナシウ。公用語はルーマニア語。1991年、かつての旧ソ連崩壊とともに独立しました。面積は約3万3,600㎢と、日本の九州より少し小さいほどです。小高い丘や森林など多彩な地形に恵まれており、地の利を生かした農業が主要産業です。特に、日本ではワインの名産地として知られています。赤ワインで有名なニストレアナや世界有数のワイナリーが集まるコルドが注目されており、毎年、金賞や銀賞を受賞しています。経済界や有名起業家、外交・商社関連など富裕層のワイン愛好家を中心に人気が高まっています。
https://www.moldpres.md/en/news/2021/04/19/21002920

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日本とモルドバは、1992年から外交・協力関係を築いてきました。現在では、モルドバにとって日本は農業、医療、教育分野の発展を支援する信頼できるパートナーとして認識されています。また、日本からの投資も積極的に行われており、フジクラと住友による自動車産業がそのトップを占めています1)。日本とモルドバはワイン産業と自動車産業での交流を中心に互いの理解を深めています。しかしモルドバがICT分野で大躍進し、経済そのもののデジタルトランスフォーメーションを成功させ、国益に大きく貢献していることは、日本ではまだほとんど知られていません。

1)参考:モルドバにおける日本の投資、支援、主要産業について、片山芳宏在モルドバ日本国大使 http://www.profit.md/articles-ro/number_9_2020/552461/ (ルーマニア語のみ)。

これまで世界最高峰のソフトウェア開発人財が集まる場所と言えば、中東欧エストニアやウクライナの名前が上がりましたが、それらの国々に追随し、モルドバは急成長を遂げています。2020年には、ICT分野の経済への貢献度はワイン産業を上回り、GDPの10%以上を占めるまでに成長しています2)。この背景には、政府の大胆な政策と、ICT分野に対する強力なバックアップがありました。

2) 2020年、ICT分野の経済への貢献度はワイン産業を上回り、GDPの10%以上を占める程に成長 https://www.trade.gov/country-commercial-guides/moldova-information-and-communication-technology

モルドバ政府のICT分野への極めて重要な戦略的アプローチに、独自の税制の制定とモルドバ IT パークの立ち上げがあります。複数の税金(社会税、道路税、健康税など)を7%に統一したことで、昨年から爆発的な急成長を遂げています。このような経済的支援施策をベースに、米国やEUからの投資の働きかけや、ITやエンジニアリングの有能な専門家の招聘が進んでいます。その代表的な事例として、SonyによるCrunchyroll買収があります3)。

3)ソニーによる Crunchyroll 買収の公式声明 https://www.sonypictures.com/corp/press_releases/2021/0809/sonysfunimationglobalgroupcompletesacquisitionofcrunchyrollfromatt

モルドバのICTと研究開発に関する主要なファクトは、以下のリンクからご覧いただけます。
https://investgagauzia.md/en/get-pdf/102
https://investgagauzia.md/en/get-pdf/150

モルドバのテクノロジー企業は、国内での成功を元手に、海外に向けた事業拡大を進めています。アジアマーケットの中では、特に日本に対して熱い視線を送っています。GDP3位の経済規模や、サブカルチャーなど東欧の人々を魅了する多くのコンテンツを有する日本に、魅力と親近感を感じてくれています。日本に関心の高い優れた才能と手を取り、彼らの成功体験から学ぶ機会として、良好な環境が整っています。

次回は、具体的なテクノロジー企業によるケーススタディを紹介します。モルドバのテクノロジー企業と連携することで、実際にどの様なチャレンジや学び、成果が得られるのかをご紹介したいと思います。

私は、10月1日より、モルドバ共和国にあるDeutsche Gesellschaft fur Internationale Zusammenarbeit (GIZ) GmbH(ドイツ国際協力公社)4)と連携して、日本企業との橋渡し支援を開始しました。ソフトウェア開発に限らず、サイバーセキュリティ、オートメーション、ゲーミング、クリエイティブ・インダストリー、ライフサイエンス、ヘルスケアのテクノロジー企業との提携や、M&A、戦略投資、研究開発拠点の設置に関して支援やアドバイスを希望でしたら、喜んでお手伝い致します。ぜひご連絡ください。

4) ドイツ国際協力公社(GIZ)、ドイツ政府が出資して設立された公社で、技術協力プログラム、人材育成、緊急支援などを行っている。ボンとエシュボルンに拠点を持ち、1万6410人のスタッフが世界の130カ国以上で活動。

ニノミヤ・ヒデキ/二宮英樹
CEE Digital Service Association Advisory Board


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