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ヒデキング
2020年5月23日 07:49
気が付くと俺はベランダで倒れていた。日は出ているが時間はよくわからない。 なんでこんな事になったんだ。 俺は今日一日の出来事を思い返す。 昨夜、飲みに行った帰り道。自宅のそばの暗い路地で、脇に停まったバンのスライドドアが突然開き後部座席に引きずり込まれた。 頸動脈を絞められ気を失い、次に目を覚ますと、暗い倉庫のような建物の中でスチール製の椅子に両手足を縛りつけられていた。「ちょ、な、な
2020年5月23日 07:46
病院の待合室は静寂に満ちていた。 誰も口を開かない。空気は天津飯のあんかけのように、ドロッと重く淀んでいた。 崇は幸い一命を取り留め、入院の手続きは済まされていた。「私が、悪かったわ。今まで隠しててごめんなさい」沈黙に耐えかねた妻が口を開く。「いや、悪いのは俺です」という妻の同僚。「誰が悪いとかもういいよ。今まで気が付かなかった俺が情けなさすぎる。荷物、送るから後で住所教えてくれ」
2020年5月23日 07:44
「ねえ、あなた。今日急遽仕事になっちゃったのよ。崇(タカシ)どっか連れていってあげてくれない? もう出なきゃなのよね」「そっか、わかったよ。にしても大変だな。休日に、そんなにバッチリメイクして」 今日は子供の日。今朝自宅で妻とそんなやり取りがあり、吉田は今年年少になったばかりの一人息子、崇と二人で遊園地に来ていた。今が可愛い盛り。たまには男二人というのも悪くない、と吉田は思っていた。 入場券