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「手紙」から予見される日本の未来

●●からの手紙

今、日本は徐々にインフレの波を被り始め、私達国民もそれを許容、あるいは我慢しているようにも見えています。
所得が上がらない中でのインフレ。(一部の大企業の社員は別として)
このまま日本はインフレとなっていくのでしょうか。

先日の経済番組で、とても興味深い一通の「手紙」が紹介されていましたのでご紹介します。
差出人はポール・クルーグマン。
宛先は「日本」です。

ポール・クルーグマン氏は、ノーベル経済学賞受賞の米国経済学者で、ニューヨーク市立大学の教授です。
以下、引用します。

クルーグマンの手紙(2015年9月)
(未来に)最善の状況が訪れた時
あなた(日本)は「臆病のわな」に直面するだろう
たとえば①人々に「2%のインフレが本当に来る」と信じさせたとしよう
②その時 あなたはきっと財政再建に取り組む
③すると景気は落ち込み インフレ率は2%を優に下回るだろう
この時 すべてのプランは崩れる
信頼は失われ あなたは2度と同じことを試せないだろう

この中の「臆病のわな」とは、景気が良くなった途端に金融緩和とか財政出動をストップしてしまうことを指しています。
クルーグマン氏は、今から8年前に日本に対して戒めていたのです。

現在、日本は、高い消費者物価にによって、日銀のYCC(イールドカーブコントロール)修正観測も予測されています。
が、今の日本は、この手紙の①②③全てに当てはまっている、と同番組ゲストの専門家は見ています。

①「2%のインフレが本当に来る」と信じさせた
企業は2%のインフレ率を信じ始めたと、日銀短観ではインフレ率見通しの企業からの回答を示しています。

②財政再建
こちらは、2023年度「骨太の方針」で国民の負担について示唆されています。
その示唆されている国民の負担とは、少子化対策や働き方改革、防衛力強化についてです。

③景気落ち込み
米国の景気後退観測は徐々に高まってきております。
ここまでの推移を見ても、12ヶ月先の米国景気後退の確率が高まると、それにつられて日本の景気後退も本格化するとデータが紹介されています。

今の日本の状況を考えると、今後も金融緩和は継続すべきである、というのが、このクルーグマンからの手紙から見て取れます。

未来の日本を予言

さらに、クルーグマン氏は、1998年にも、当時のバブル崩壊後の日本に対して
「デフレ脱却のための処方箋」として
「未来の好景気時にも金融緩和を続けることを今約束する」
ということを示しています。

つまりは、インフレ期待を醸成し現在の支出を促そうとすることを伝えているということです。

この未来への確約こそが1999年当時、今の日銀・植田総裁が日銀の審議委員だった頃に推進されたフォワードガイダンスの「時間軸政策」でした。
フォワードガイダンスとは、日銀が将来の金融政策の方針を前もって表明することを言います。

しかしながら、この時間軸政策は効果が薄いということが長年言われ続けていました。
それは、当時はデフレの長いトンネルに突っ込んだ後で、なかなかトンネルの出口、つまり未来の好景気を見透すことができなかった、ということが挙げられます。
そのような状態では、なかなか支出を増やすことができません。

また、デフレからインフレになったとしても、金融緩和継続が信用されない、ということも当時のフォワードガイダンスの効果が薄い理由の1つに挙げられます。

今必要なのは金融緩和継続

先日も、日銀・植田総裁は、金融緩和継続を表明しています。
が、多くの専門家は、早期のYCC撤廃、つまり金融緩和の修正を見込んでいると言われています。
信用されていないのですね。

ただ、ここで金融緩和を止めて、インフレが鈍化または低下するということになると、金融市場の信頼が失われてしまいます。
そうなると、クルーグマンの手紙でも予言されているように、「この先は無い」という眼も当てられない結果に陥ってしまいかねません。

賃金上昇と物価上昇の好循環が生まれるまであと数年はかかると言われいます。
それまで我慢が必要です。
じわじわと金融緩和を慎重に行う必要がありそうです。
我々国民もここが我慢のし時かもしれません。明るい未来を夢見ながら。

参考
テレビ東京「モーニングサテライト」より
#経済 #金融 #日本経済

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