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エッセイ・【本音】

これは以前メールマガジンに時々書いていたエッセイ「ココロノハシ」に加筆修正を加えたものです。ずいぶん前の、まだ開かずの踏切があった頃の下北沢の話です。写真はたぶんその頃のもの。

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終電がなくなる時間になっても、まだ下北沢には様々な人たちがいる。
レコーディングスタジオでの仕事が終わってみんなで食事をした帰り道、作業がうまく進んだのでもう少し飲みたい気分だった僕は、一番街の手前にある友達のbarに寄っていこうと思って駅の方向に向かって歩き始めた。
そんなに広くはない下北沢南口商店街の通りには、酔っぱらいや客引きのお兄さん、 漫画の読み聞かせやストリートミュージシャンなどいろんなキャラクターがいるけれど、新宿や渋谷のようにどこか切羽詰まった感じがない。これが下北沢っぽいということなのかなあ、などと思いながら歩いていると、たまに見かける路上に絵を並べて売っている兄ちゃんがいた。
こんな時間までいるってことは、近所に住んでいるのか、それとも帰る手段をなくしたか、もしや結構いい商売になるのか。なんにせよ、僕にはあんまり関係がないので、普段通りに横を通り過ぎた。
すると、後ろから声がした。

「田舎もん、死ねばええねんっ。。。」

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