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世界屈指の顔認識技術Face++を開発したMegvii(メグビー)とは?

先日、Face++のAPIを活用した『顔偏差値』を計測できるアプリの作り方を紹介しましたが、このFace++を開発したMegvii(メグビー)はマイクロソフトやグーグルに劣らない世界屈指の顔認識技術を持つAI企業です。最近も香港でIPOを申請したことが報じられ、その成長スピードや高い技術力に世界中から注目が集まっています。

ただ、同社のサービスや生活における活用シーンに関してまとめた日本語の記事、実は多くありません(なお、2019年10月時点では『メグビー』すら日本語のウィキペディアに記事がありません…)。

そこで今回の記事では、このメグビーについて
・代表的なサービス
・具体的にどんな所で技術が使われているのか
・今後私たちの生活をどう変えるのか
といった、基本的な情報をまとめてみました(^^♪ 基本的には中国国内でのみ展開しているメグビー、一体どんな企業なのでしょうか。私たちの生活をどう変えるのか見ていきましょう。

Megvii(メグビー) 企業情報

まずはメグビーの企業情報を確認(・ω・)ノ

会社名:Megvii Technology Limited(北京旷视科技有限公司)
創業:2011年10月
本社所在地:中国北京市
従業員数:2,000名以上
事業内容:顔認識プラットフォーム”Face ++”の開発・提供など
主な顧客:アリババ、フォックスコン、ハーウェイ、シャオミ、Uber、中国政府ほか

2019年1月~6月期を見ると収益の約95%を国内で得ていますが、海外比率は徐々に高まっています(昨年は国内が約98%)。最終損益は52億元の赤字を計上したものの、8月時点で今年は既に約760億円を調達するなど非常に大きな期待。投資の大部分は国内の政府系ファンドをはじめ、アリババなど中国の大企業が中心です。

冒頭で触れた通り8月に香港でのIPOを申請しています。審査を経て秋の上場を目指し、約1,000億円の調達を意図しているとのこと。

Megviiの創業について

メグビーを創業したのは、中国屈指の難関大学である清華大学の学生だった印奇(Yin Qi)氏。
もともと印奇氏は授業にはほとんど出席せず、もっぱらプログラミングなどの課外活動(仕事)に没頭していたようです。様々な起業家ストーリーに通ずるものがありますね。

そんな中、親友2名(Wenbin Tang、Yamg Mu)と共同でメグビーを創業しました。2011年、印奇氏23歳の時です。この時世界で最も正確とされた顔認識システムを開発し、そのシステムを取り入れたゲームをリリースしたところ人気に。中国のアップルストアでダウンロード数5位に入るという快挙を成し遂げます。

この時点でもある程度の利益はありましたが、創業メンバーはもっと大きなビジョンを持っていました(ちなみに『Megvii』の由来は”Mega vision”なんだって!)。創業の翌年2012年、現在同社の代名詞とも言える顔認識プラットフォームFace ++を開発。これは中国初のクラウドベースによる顔認識プラットフォームでした。

大学を卒業後、印奇氏はコンピューターサイエンスの研究をする為コロンビア大学へ進学。しかし2013年に研究を切り上げ、本格的にメグビーでの活動に参画するべく帰国しました。印奇氏は昔を振り返り、こう述べています。

『メグビーを立ち上げた時はAIブームの直前でした。完璧なタイミングでしたし、とてもラッキーだったと思います。』

Megviiのサービス

そんなメグビーですが、一体どんなサービスを提供しているのでしょうか。

Face ++

ほぼ同社の代名詞となっているのが、クラウド型の顔認識プラットフォームであるFace ++。先ほど触れた通り創業の翌年である2012年に開発されました。ほかにもサービスはありますが、Face++があまりの注目度ゆえ会社名よりFace ++の方が有名かも知れません(◎_◎)

公式サイトのサンプルを見ると、人種や性別は勿論、感情の状態、年齢、眼鏡をかけているかどうか、どれくらい目を見開いているかといったことまで検出することが可能となっており、それぞれの顔の『点データ』を83箇所検出・分析することで極めて正確な顔認識を実現しています(ちなみにマイクロソフトの”Face API”の点データは27個)。なんと双子までハッキリと分けられるほど。

メグビー自身、そもそも顔認識プラットフォームを開発した中国初の企業とされていますが、その顔認識にAIを取り入れたのがFace ++で、こちらに関してはなんと世界初の技術。

APIも無料で公開されており、世界中のエンジニアや開発者がこのプラットフォームを用いて自分のサービスやアプリ開発に活用することが可能です。「みゃふの顔偏差値アプリ」もこのテクノロジーを使いました。

Face ++で出来ること

具体的にどんなことが可能なのでしょうか。Face ++のホームページでは次のようなケースが紹介されています。

1.顔認証による入場コントロール
Face ++では、予めライブラリに保存された顔写真と検出した人の顔の一致or不一致を瞬時に行うことが出来ます。
これにより来場したビジターの顔をライブラリと照らし合わせることで、入場ゲートの自動化や出席確認等を自動化することが可能に。

2.セキュリティチェック(Security Monitoring)
ライブラリ内を検索し、監視カメラ等の画像に写った顔と似たものがあるか検知する技術です。いわゆる犯罪者の発見や追跡に活用されています。

3.顔認証によるログイン
上記2つが『登録されたデータから似た顔を検索する』技術である一方、次に紹介する2つは『本人確認』に使用されるもの。
ウェブサービス等へのログインを顔認証で行うことができます。
そういえば『ユーザー名・パスワードを入力』という手続き、この10年以上の間ほとんど進化がありませんでしたね。一般的になれば煩雑なログイン作業がすっごく楽になるかもしれません。

4.身分証明との一致
上記と同じテクノロジーで、パスポートをはじめとした身分証明の写真と本人が一致するかどうか判断することが出来ます。入国審査などのセキュリティチェックでの活用が期待される技術です。

5.顔ベースの人数カウント
画像や映像内に何人映っているのか、その顔を検出することでカウントすることが出来る技術。
交通や空港、学校などの施設で活用することにより容易に統計を取ることが可能となります。企業や研究機関が重宝しそうな技術です。

6.身体の認識
Face ++=顔認識のイメージが強いですが、実は身体の『認識』も可能。
首、肩、肘など各部分の位置を検知し、例えば怪しい挙動をした人物を特定するなどセキュリティ面で活用することが出来ます。

Face++を活用している事例

Face ++の特徴として、特に『セキュリティ』そして『金融』に注力していることが挙げられます。

1.アント・フィナンシャル “smile to pay”
後に紹介する中国警察に次いで有名なのが、アリババ傘下のアント・フィナンシャルが採用している”smile to pay”。
同社が提供する決済アプリのアリペイで事前に顔写真を登録しておくと、店舗での購入時に顔をスキャニングするだけで支払いが完了してしまいます。そう、なんとスマホすら要りません。既に試験導入が2年前のことなので、そう考えるとちょっと日本は遅れていますね(;´・ω・)なおアリペイでは、ログイン時にやはり顔認証を採用しています。

ちなみにこの”smile to pay”、今年の7月に登録する顔写真をキレイにしてくれる『美顔フィルター』なる機能が実装されました。”映え”の時代にしっかり対応していますね(*'ω'*)

2.中国警察によるAI監視カメラ
おそらく最も有名なのが、中国警察が実施している監視カメラでの活用。非常に高い正確性で映像内の群衆から犯罪者を追跡・確保ことが出来るということです。
ご存じの通りこれについては批判も多く、海外メディアを中心にネガティブな報道をされていはいますが、あくまでメグビーによると『多くの人が思ってるよりも稼働できるキャパは小さい』とのこと。なお防犯の分野に関しては民間企業でも活用されています。

ちなみに警察ではありませんが、先日南京の大学でやはりFace ++を活用した監視カメラが導入され、『誰が何回授業中にスマホをいじったか』『何回居眠りしたか』などが逐一モニターで表示されるというケースがありました。不真面目な学生とっては身の毛がよだつ話ですね(笑)

3.乗車中の安全性確保(DiDi)
昨年日本にも上陸した、中国最大手のタクシー配車サービス・DiDiでもFace++のテクノロジーが使われています。
乗車した車のドライバーが本当に登録された正当な運転手なのか、顔認識技術を用いることで安全性を確保しているそう。これはドライバー側にとっても同じで、例えば乗客との間で揉め事が発生した場合でも当事者を追跡することが可能であることを意味します。

4.オフィスでの入退室管理
Face++の紹介で入場コントロールの話がありましたが、こちらは実際にメグビー社屋で実施されています。
メグビーの従業員は予め登録された顔写真と顔を照合することにより、社員証等を介さず自由にオフィスの出入りが出来るようになっているようです(*'ω'*)
単にセキュリティ面や利便性のメリットがあるだけでなく、各スタッフの入退室時間や頻度、勤務時間などを蓄積することでそれぞれが好む働き方まで判断することが可能とのこと。スマートですね!

メグビーの技術が日本でも?

創業者の印奇氏によると、『中国ではあらゆる作業がマンパワーで賄われているので、AIに置き換えたい』とのこと。先述した名だたる大企業がそのテクノロジーに投資・活用しているところだけを見ても、まさに印奇氏の志向する世界が着々と進んでいることが伺えます。

今回の上場で調達した資金はAIの研究開発やデータセンターの設立などに充てるほか、なんと日本への進出も計画段階として視野に入れているのだとか( ゚Д゚)上記紹介してきた事例はいずれも中国国内でしたが、近い将来POSシステムやオフィス、インフラなどでメグビーの技術に触れる機会が来るかもしれません…!

参照記事
https://www.faceplusplus.com/
https://www.innovatorsunder35.com/the-list/qi-yin/
https://www.forbes.com/pictures/efjl45ggme/qi-yin/#4bbabe182c1a
https://r.nikkei.com/article/DGXMZO49041100X20C19A8FFE000?s=4
https://www.businessinsider.com/china-facial-recognition-tech-company-megvii-faceplusplus-2018-5#in-a-showroom-in-megviis-headquarters-a-highlight-reel-shows-faces-many-capabilities-faces-open-platform-which-allows-anyone-to-develop-apps-using-its-algorithm-is-already-the-largest-facial-recognition-platform-in-the-world-with-300000-developers-from-150-countries-on-it-megvii-is-counting-on-that-popularity-to-make-its-system-the-best-in-the-world-the-more-data-that-goes-into-an-ai-the-better-it-becomes-7
https://chaitech.jp/unicorn/0068/
https://www.wired.com/story/behind-rise-chinas-facial-recognition-giants/
https://www.huffingtonpost.jp/entry/megvii_jp_5d6f2150e4b0110804566dbb
https://www.forbes.com/sites/bernardmarr/2019/05/24/the-amazing-ways-chinese-face-recognition-company-megvii-face-uses-ai-and-machine-vision/#52eeb52312c3

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