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コープさっぽろがAIで自動発注システムを導入

流通業に携わる人にとっては、商品の発注が長年の課題でした。

発注力(すなわち仕入れる力)の差で利益が左右されますし、発注に関する時間が店舗の生産性に影響を与えるからです。働き方改革や人手不足で発注業務そのものが店長や管理職に負担が掛かっている実態もあります。


数年前から発注自動システムはあります。しかし、自動発注を導入した企業での不良在庫化や機会損失が発生しやすくなるというデメリットもありました。在庫量が減った分を発注するというシンプルな仕組みですが、安定的に売れる商品であればいいものの急激に売れたり売れなかったりする商品には向いていません。思考がなく、単なる自動的に発注されているという仕組みだからです。

そんな中、日経新聞にこんな記事が
掲載されていました。

コープさっぽろ(札幌市)は2022年3月期に、人工知能(AI)が需要を予測し商品を自動発注するシステムを全店に導入する。欠品による売り逃しを減らすほか、過剰在庫も防ぐ。発注作業にかかる時間も最大8割減らすことができ、接客など人材の有効活用にもつながる。

#日経COMEMO #NIKKEI

人間のカンと経験での発注からAIを活用したシステム化が成功すれば、流通業の格段に進歩するでしょう。既に株式投資やFXの分野など、データを分析してパターン化できる分野は人間よりもAIの方が得意としています。ゲームや囲碁や将棋もAIが人間に勝つということができます。パターンを分析して失敗の確率を減らし精度を上げるからです。

人間が発注する場合は経験力とミスと感情との戦いです。

売上を上げる利益を上げるためには、欠品による売上の機会の損失を減らすことと、不良在庫化による廃棄の損失を減らすことになります。そのために必要なのが発注の精度を上げることが最大のポイントです。

機会損失(チャンスロス)は商品があれば顧客が買っているはずなのにお店に商品がなかった為に売る機会を失い売上に繋がらなかったということになります。機会損失には4つの種類があります。

機会損失の4つの種類


1 店での売り切れ


店での商品が売れて、発注と納品が追いついておらず客が買うことができない売上の機会を逃してしまう機会損失です。鮮度の短い商品は売れ残りでの廃棄を意識しすぎると、発注数を減らして売り切れてしまいます。

ニュース等で話題になっているコンビニの値引きを禁止する問題は発注精度が高まれば廃棄処分が減ることになり、熟練した発注者がいる店では大きな廃棄ロスが出ていることはありません。

ファミリーマートでは消費期限が迫った商品の値引きができる仕組みを導入します。


2 メーカーでの欠品


店からは適正に発注しているものの、メーカーやベンダーに商品が無く機会損失を起こしてしまうことです。昨年のマスクの供給が追いつかない際はメーカーも生産が間に合っていないということで欠品となっていたことは記憶に新しいです。


POSシステムが発達したこの20年は販売側が強くなり、メーカー欠品がほとんど無いというサプライチェーンに変化しています。コンビニの場合メーカー欠品率がほぼ100%です。欠品の多いメーカーは他のメーカーに変更されます。大手流通会社は、メーカー(ベンダー)ごとの納品率ランキングを作って表彰したり取引先間での競争を促しています。

メーカーサイドは欠品しない様に商品を生産していますが、生産量と供給が合わない場合のメーカー側での廃棄も出ています。店に陳列されず廃棄される食品もありフードロスは社会問題となっています。

ちなみにメーカー欠品した最近の事例ですと、アサヒスーパードライのジョッキ缶ですね。


3 顧客が気がつかない


発注がしっかりなされ在庫はあるにも関わらず売れないという機会損失があります。顧客が商品に気がつかないという理由です。売れるべき商品が売れないというのは陳列技術や告知力が足りないということで起こります。またレイアウトがわかりにくい店もその傾向があります。店の棚卸しをしてみて、売れ筋商品なのに不良在庫化している店のケースです。


4 世の中では売れている商品が未導入


他の店では売れているのに、そもそも導入されておらず機会損失となっている場合があります。過去のデータだけに頼っていたり、他店のウォッチをしていない店はこの傾向があり、世の中の流行りとズレていきます。業態によっては、問屋やメーカーのいいなりになって売れない商品を押し付けられて売れている商品が無いという場合もそれにあたります。


以上4つの機会損失です。人間の手での発注ではどうしてもミスが発生しますし。その時の環境で左右されることもあります。



コンビニでよく見かける例では、発注数を間違えてしまってしまい大量に納品してしまった。発注の送信を忘れてしまった(最近ではアラームがなります)。他の業務に追われ忙しすぎて発注が雑になってしまった。発注者の商品の好き嫌いや商品知識の無さで注文し品揃えしてしまったということもあります。

コンビニやスーパーの売場で担当者が変わると売れ行きが変わるのも人為的によるものです。特に嗜好性が強い商品は顕著です。例えば酒の知識がある発注者の場合ですと、立地客層に応じて品揃えを見直し機会損失を減らしますが、一律の商品しか置いていない店はその商品が売れない機会損失ばかりか別の店に客を取られ他の商品まで売上機会を失ってしまいます。


AIに基づいた発注で期待できるのはこうした人間では起こりがちなミスや経験不足、無知を幅広いデータやパターン認識でクリアできるということは店側にとっても客側にとってもメリットがあります。

一方、AI発注で想定されるデメリットとしては、商品に思いを込めて発注し商品を売る為の陳列の工夫や声かけなど、提案力のあるオーラのある売場が減ってしまうということではないでしょうか。


顧客の購買代理人として目利きができて商品の品質や特性を理解して発注する職人型の商人がいる店が尚更際立つ時代が来るかも知れません。


AIを活用して期待できるのは、4つの機会損失削減のみならず立地や客層に合わせたリコメンド(提案型)発注やその店舗以外でも客が欲しくなると購入できる仕組みでしょう。

AIが小売業を変えるかも知れない。その様な期待を持てる記事でした。


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