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モロッコの地震

2023年9月8日の深夜、日本時間の9日午前7時すぎ、モロッコ中部のマラケシュから70キロほど離れた内陸部を震源とする、M6.8の地震がありました。この地震で、世界文化遺産に登録されているマラケシュの旧市街で建物が倒壊するなど、大きな被害が出ています。今朝の情報では死亡は1037人でしたが、最新の情報では2012人が死亡し、2059人がけがをしたと伝えられています。

アメリカ地質調査所(USGS)によると、地震は現地時間午後11時11分に発生し、震源の震央はマラケシュの南約70kmのアトラス山脈の山中で、深さは18.5kmです。この地域での大きな地震は珍しいようですが、地中海はヨーロッパプレートとアフリカプレートの境界に位置しているので、地震が起こっても不思議ではありません。

地中海周辺のプレートテクトニクスについて調べていたら、12年前のナショナルジオグラフィックの面白い記事を見つけました。この記事では、これまでとは逆にヨーロッパプレートがアフリカプレートに沈み込んでいる可能性があることを示しています。ただし、この記事が書かれた時点では、研究者たちは懐疑的なようです。

地中海で新たな沈み込み帯を発見か
2011.04.20

 ヨーロッパがアフリカ大陸の下に沈み込んでいるかもしれない。最新の研究によると、西地中海に新たな沈み込み帯が形成され、周辺の地震リスクが高まっている可能性があるという。沈み込み帯は、2つのプレートが衝突し、片方が下へ潜ってマントルに沈み込む場所だ。緩やかに進行する場合もあるが、大きく揺らいで地震の引き金になるケースが多い。通常は海底にあるため、沈み込み帯型の地震は津波の原因になり、2011年3月の東日本大震災のように甚大な被害をもたらす可能性がある。

 地中海海底の一部も含まれるアフリカプレートは、何百万年も前から北のユーラシアプレートへ向かって移動を続けている。ただし、年に約1センチというスローペースだ。

 オランダにあるユトレヒト大学の研究チームは、同地域で起きた最近の地震を調査している。その結果、アルジェリアの海岸線からイタリアのシチリア島北部にかけて、プレート境界付近に新たな沈み込み帯形成の可能性が浮上した。研究責任者の地球物理学者リナス・ウォルテル(Rinus Wortel)氏は、「沈み込み帯の新たな形成は非常に珍しい」と語る。

 同氏によると、約3000万年前はプレートの上下が逆だった。当時、西地中海に大規模な沈み込み帯が存在し、アフリカプレートがユーラシアプレートの下に滑り込んでいたという。

 高密度の岩石から成るアフリカの海底がヨーロッパ大陸の下に潜り込んでいた。「しかし数百万年も経つと、アフリカプレートはかなり北へ移動し、西地中海に同プレートの海底部分がなくなってしまった。大陸部分だけ残されたが、海底より軽い岩質なため、沈み込みは起きなかった」。

 しかしその後も2つのプレートの収束は続き、地殻応力が生じていた。ユーラシアプレートでアルプス山脈、コーカサス山脈、ザグロス山脈が隆起したのもその影響である。

 研究チームは、プレート境界付近で最近起こった地震の位置や揺れから判断して、プレートの沈み込みが再開したと見ている。しかし、今度はヨーロッパがアフリカ大陸の下に滑り込んでいるという。

 今回の研究成果は、オーストリアのウィーンで開催された欧州地球科学連合(EGU)の最近の会合で発表された。新しい沈み込み帯発見の可能性には科学界の関心が集まったが、多くの科学者は慎重な姿勢を示している。

 アメリカ、ノースウェスタン大学の地球物理学者セス・スタイン氏は電子メールでの取材に対し、「荒唐無稽な話ではない。過去200万年の間に、地中海地方はイタリア本土などでも地質学的変化が起きている」と答えている。

 一方でアメリカ、オレゴン州立大学(OSU)の地球物理学者クリス・ゴールドフィンガー氏は、「簡単にはコメントできない内容だ」と態度を保留した。同氏は、OSUにあるアクティブテクトニクス海底マッピング研究所(Active Tectonics and Seafloor Mapping Laboratory)の所長を務めている。

 研究責任者のウォルテル氏は今回のデータから判断して、西地中海の地震リスクは評価の見直しが必要だと訴える。過小評価されていただけでなく、リスク自体が高まっている可能性があるという。「歴史的な経験から、3月に日本で起きたような大地震は他人事と考えてきた。しかし過去100年間に発生していないからと言って、リスクが皆無になるわけではない」。

 実際、シチリア島北東端の都市メッシーナでは1908年にマグニチュード7.1の大地震が起きている。高さ12メートルとも伝えられる津波が襲い、7万人が命を落としたという。

 さかのぼって1755年にはジブラルタル海峡の西で地震が発生。ポルトガルの首都リスボンを巨大津波が襲い、ヨーロッパ史上最大級の地震災害となった。約10万人が死亡したとの試算もある。

NATIONAL GEOGRAPHICの記事より引用

私はプレートテクトニクスの専門でもないし、地震の専門ではありませんので、詳しいことはよくわかりません。もしヨーロッパプレートがアフリカプレートに沈み込んでいると仮定すれば、アフリカ側で地震が起きやすいことは、地学の教科書的な知識からも類推することは出来ます。

モロッコの山岳地方は、これから朝晩寒くなるそうです。これからは住む場所を失った生存者への支援が必要でしょう。

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