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ゲーテの石 Goethite

 小説『若きウェルテルの悩み』などで有名な、ドイツを代表する文豪・ゲーテには、自然科学者としての一面もありました。ゲーテは多才で、学生時代から自然科学研究に興味を持ち続け、文学活動や公務の傍らで人体解剖学、植物学、地質学、光学などの著作・研究を残しています。

 ゲーテは20代半ばのころ、ワイマール公国(現ドイツ)の顧問官としてイルメナウ鉱山を視察したことから鉱山学地質学に興味を持ったようです。ゲーテはかなり石が好きだったみたいで、ヨーロッパ各地の石を蒐集した彼の岩石コレクションは、1万9000点にも及んでいます。宮沢賢治も石が好きで”石っこ賢さん”と呼ばれていたみたいですが、文学と岩石には何か共通点があるのでしょうか?。

 針鉄鉱(しんてっこう)は水酸化鉄からなる鉱物で、針状の結晶が存在します。そのため、針のような鉄鉱石、つまり針鉄鉱という和名が付いています。しかし、明瞭に針状に見える鉱石は希で、多くは塊状や土状の集合体で存在しています。この針鉄鉱の英名は、goethite(ゲータイト/ゲーサイト)と言い、ゲーテ(Goethe)の名前にちなんでいます。これは1806年に、ゲーテと親交のあった鉱物学者によってこの鉱石名が名付けられたためです。

 針鉄鉱は、石英属の鉱物の内部に内包物として混入することも多く、水晶の中に針状・毛髪状・繊維状の形になって出現します。赤色の針鉄鉱が白水晶の中に混入したものは、ストロベリークォーツと呼ばれ、コレクターやレアストーン愛好家に珍重されているそうです。


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