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ミリしら物理探査#11 『サーミスタ』

 地温探査では、温度計を使って地面の温度を測定します。温度の測定方法は数種類あります。かなり昔は、アナログの水銀温度計を使っていました。1m深地温探査用に、長さが1m近くある特殊な水銀温度計が、研究室に何本もありました。ただし、水銀は危険なので、現在は使用が禁止されています。研究室にあった水銀温度計は、伊都キャンパスの移転の際にすべて廃棄しました。

 現在は、温度センサを使ったデジタル方式の温度測定が主流です。例えば、金属の抵抗は温度の上昇に応じて大きくなるので、この電気抵抗の温度依存性を応用した温度センサが、金属抵抗体温度計です。金属抵抗体温度計は、主に工業用途で使われ、その代表的なものが白金測温抵抗体です。白金測温抵抗体は、 常温付近の低温計測が得意で、安定度が高く、測定精度が高い測定が可能です。ただし、 最高使用温度は約500℃で、機械的衝撃や振動に弱いといった短所もあります。

 金属ではなく、半導体を使ったセンサがサーミスタ(thermistor)です。サーミスタは、温度が変わると電気の流れ難さ(電気抵抗)が変化する電子部品です。したがって、サーミスタ内の電気の流れを監視することで、温度を常に知ることができます。一般的に、半導体は温度が上がれば電気抵抗は下がります(NTCサーミスタ)。しかし、その逆に、温度が上がれば電気抵抗が上がる半導体(PTCサーミスタ)もあります。

 サーミスタの温度依存性は、1833年にマイケル・ファラデーによって発見されています。ファラデーは、硫化銀半導体の抵抗が温度変化によって急激に減少することを、実験によって確かめました。この原理を利用して、後にサミュエル・ルーベンがサーミスタの市販化を実現しました。

 サーミスタは、半導体の抵抗体を被測定体に接触させ、生じた電気抵抗の変位差を検知のうえ温度測定を行う温度センサですが、非接触で温度を測定できるセンサが、コロナ対策で普及しました。このタイプの温度計は、熱赤外温度計(放射温度計)と呼ばれています。以前から、赤ちゃんの耳で温度を測る非接触タイプの温度計はありましたが、オデコで温度を測る放射温度計はコロナ対策で急速に普及しました。

 温度があるものは例外なく、熱赤外線を出しています。また、この熱赤外線のエネルギーは、温度の4乗に比例します。つまり、熱赤外線のエネルギーが測定できれば、温度が逆算できるのです。この原理を発見したのが、シュテファンとボルツマンです。この原理は、シュテファン・ボルツマンの法則と呼ばれています。太陽の表面温度も、シュテファン・ボルツマンの法則から推定されています。

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