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小説の中の地球科学#2 『M8』

 『M8』(エムエイトと読むらしい)は、巨大地震を題材にした高嶋哲夫さんの小説です。高嶋さんは、元々は原子力関係の研究者で、海外留学の経験もあるようです。そんな理系の作者が書いたパニック小説が、この『M8』です。

 勘の良い人ならわかると思いますが、M8はマグニチュード8を表わしています。マグニチュードは、地震そのものの大きさを表す指標です。マグニチュードの数字は、数字が大きくなるほど大きな地震であることを表わしています。厳密にはモーメント・マグニチュードと、気象庁マグニチュードの二種類があります。それぞれ計算の仕方が違うので一致はしませんが、ほぼ同じと考えて間違いありません。ただし、同じ地震では気象庁マグニチュードの方が大きめの数字になります。

 福岡西方沖地震がおよそM7、関東大震災の時の地震がM8です。この小説は、関東大震災級の地震がやって来るという設定で書かれた小説です。マグニチュード8(M8)の地震は、”巨大地震”にカテゴライズされます。マグニチュードは、数字が1増えると地震のエネルギーが32倍になります。関東大震災の直下型地震は、福岡西方沖地震のおよそ32個分です。それを考えると、M8の地震がいかに大きいかが良くわかります。

 しかし、この小説は東日本大震災が起こる前に書かれていますから、高嶋さんも実際にもっと大きな地震が関東の近くで起こるとは思ってもいなかったようです。事実が小説を超えてしまいました。東日本大震災の地震は、マグニチュード9(M9)ですから、関東大震災の地震の32個分のエネルギーとなります。M9以上の地震は、”超巨大地震”にカテゴライズされます。

 少し紛らわしいのですが、”震度”という指標もあります。震度は、ある大きさの地震が起きた時の、私達が生活している場所での”揺れの強さ”のことを表します。気象庁では、0, 1, 2, 3, 4, 5弱, 5強, 6弱, 6強, 7の10階級に分けた震度が使われています。

 Amazonに乗っていた本書のあらすじは、以下の通りです。『阪神・淡路大震災を体験した若手研究者がマグニチュード8規模の東京大地震を予知した。もう、あの過ちはくり返してはならない!。 研究成果とデータを基にリアルに地震の恐ろしさを描く』。私も読んだことがあるので、内容は知っていますが、ここでは詳しく書きません。興味のある方は、読んでみて下さい。

 パニック小説はあまり好きではありませんが、地震のことをどこまでリアルに描いているのかという興味から、本書を手に取りました。小説は面白いと思いましたが、どうしても”科学的な説明”に関心が行くので、素直に楽しめません。理系の作者らしく、地震に関する知識はシッカリしていました。


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