世界”物探”遺産の旅#7 サルイエール
サルイエール(Sariyer)は、トルコのイスタンブールの最北端、ヨーロッパ側に位置する地区である。この地区のボスポラス海峡に面した村々は、かつては漁村でしたが、この街の富裕層の保養地となりました。オスマントルコ時代には、スルタンがピクニックや遠足でこれらの村々を訪れました。18世紀から19世紀にかけて、海岸には裕福な外国人商人たちの夏の別荘が立ち並んでいた。この時代には、多くの外国大使館が夏の離宮を建設しました。海岸道路が建設されて以来、これらの村々やその背後の丘陵地帯には、イスタンブールの裕福なビジネスマン、俳優、音楽家たちが、海岸線と背後の豊かな森林に惹かれて所有する高価な別荘が多く建ち並ぶようになりました。
現在のサルイェールは、伝統的なトルコの港町で、インフラはあまり整備されていません。この地の主な産業は漁業で、魚市場や行列のできる有名な魚料理店があります。また、カフェやケバブハウス、バーなども充実していて、週末にはイスタンブール市民の多くが食事やお酒を飲みにやってくるそうです。有名なミュージシャンが経営するレストランも多く、お客のためにライブを行うこともあります。
この地を世界物探遺産に選んだのには、深い理由があります。この地では、オスマントルコの前のビザンツ帝国(東ローマ帝国)時代から、山手の場所で14世紀頃から銅の採掘が行われていました。この地で1940年代、銅鉱床の探査を目的とした自然電位法が行なわれました。ある種の硫化物鉱床は、その鉱床自体が自発分極を起こして、自然状態でも電位変化が観測できます。その電位異常から、銅鉱床が見つけられるのです。
その探査結果が、以下の図です。上の図が、その時に観測された自然電位異常で、大きな負の電位異常(負の中心)から、硫化物鉱床の位置が推定されました。この図は、”世界で一番有名な”自然電位法の観測結果で、海外で出版されたほとんどすべての物理探査学の教科書に載っています。下の図は、その後のボーリング調査や地質調査を合わせて解釈された鉱床の範囲です。
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