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沖縄で見た金環日食

 大学院生の頃は、物理探査のアルバイトで九州・沖縄を駆け巡っていました。時には、東北地方にまで行ったことがありました。沖縄には二度ほど、地下空洞の探査のアルバイトで行きました。

 最初の空洞探査は、沖縄の那覇港の浅瀬での探査でした。この探査は、橋脚を建てるための基礎地盤調査で、橋脚の予定位置付近に空洞がないかを確かめる探査でした。この探査には流電電位法を使いました。二度目の調査は、沖縄本島から離れた宮古島の隣の伊良部島での空洞探査でした。今では、宮古島から伊良部島への橋が出来ましたが、当時はまだありませんでした。伊良部島では、ポール・ダイポール法による空洞探査を実施しました。

 沖縄での最初のバイトの時に、日食を体験しました。説明するまでもないでしょうが、日食とは太陽が月によって覆われ、太陽が欠けて見えたり、あるいは全く見えなくなったりする現象です。もちろん、日食を見るためにアルバイトに行ったわけではなく、本当の偶然でした。日食のことは、沖縄に着いてから知りました。

 かなり前になりますが、この話は1987年9月23日、沖縄で20世紀最後となる金環日食が観測されたときの話です。金環日食とは、地球・月・太陽がほぼ一直線に並び、太陽の方が月よりも大きく見えることから、月の外周部分で光がリング状に見える現象です。1901年から2000年の20世紀中に日本で観測された金環日食は計6回しかありませんでしたから、とても貴重な体験でした。

 この日は、那覇港の浅瀬に組んだ櫓上の測定現場で、ペンレコーダを使って流電電位法の測定を実施していました。海での測定は、潮流による流動電位が激しく、測定には骨が折れました。この日に日食があることは沖縄に来てから知っていたので、休み時間には”黄色のビニールテープを張ったサングラス”を使って、太陽を観察していました。しかし、測定作業に追われて、だんだんと日食のことを忘れていました。

 その瞬間は、突然やってきました。月と太陽がほぼ重なったころ、周囲の世界が”黄色”になりました。それから、それまでは9月なのに気温が高かったのですが、その時間だけは少しだけヒンヤリと感じました。この時は、測定作業を中断して太陽を観察しました。私にとっては、人生で初めて見る日食でしたが、リング状に太陽が輝いているのがはっきりとわかりました。黄色&ヒンヤリした時間は僅かで、段々と元の状態に戻っていきました。

 21世紀に入って初めて見られた金環日食は、2012年5月21日です。この時は、九州・四国・本州太平洋側と観察範囲が広かったので、全国的に話題になりました。私は伊都キャンパスで、二度目の金環日食を見ることが出来ました。三度目はあるのかなぁ^^。


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