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博士号について

大学の教員や研究機関の研究員以外の人には、博士号は馴染みがないでしょう。博士は”はかせ”とも呼びますが、正式には”はくし”と読みます。一応、私も工学博士の端くれです。

博士になるためには、大学院の博士課程に進んで博士号を取得する必要があります。大学によって細かい規定の差はありますが、基本的には学術誌に研究成果の論文が掲載されて、その論文をもとにした学位論文を提出して審査をしてもらいます。最終的に、審査に合格すれば目出度く”博士号”が取得できます。昔は医学博士や法学博士など、博士の種類が少なかったのですが、現在は『博士(○○)』という形のパターンで、100種類以上の博士がいるそうです。

本日、私が担当する3人の留学生の博士論文の提出手続きを済ませましたが、ここに至るまでが一苦労でした。さらに、これから公聴会や審査の投票などのハードルが待ち構えています。一般的には大学院の博士課程(博士後期課程ともいう)は3年間ですが、3年以上かかる人も珍しくありません。大昔は、3年で取れる人は殆どいなかったので、3年経ったら『単位取得のうえ退学』して、その後の3年以内で博士号を取得するのが一般的でした。

現在、私が担当している博士課程の学生は全員留学生です。今のところ日本人はいません。日本人の博士課程の学生は減少傾向にあるようです。人口100万人当たりの博士号取得者数は、2008年には131人だったものが、2018年には120人になっています。現在はもっと少なくなっていると思われます。この博士号取得者数は、アメリカ、イギリス、ドイツ、韓国の4か国を大きく下回っていますし、減少傾向にあるのは日本だけです。

また、注目度の高い科学論文数の国際順位は、1990年代前半までは世界3位でしたが、2018年は10位にまで落ちています。日本は、平成の30年間に産業競争力も低落し、イノベーションの担い手を育てる仕組みの弱さが、産学の地盤沈下を招いていると新聞記事には書かれていました。大学教育が普及して教育水準が高いと考えられていたニッポンは、今や幻想です。残念ながら、先進国の中では低学歴国となりつつあります。

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