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紙の本の将来

 木版による印刷は歴史が古いらしいが、金属活字を発明したのは、グーテンベルクとする説が最も有力です。グーテンベルグは、1445年までに活版印刷技術を考案して、その機器を実用化し、自ら印刷業・出版業を創設したといわれています。日本や中国では、文字(漢字)の数が多いため、木版を含めた活字の普及はなかなか進みませんでしたが、西洋では文字数が少ないため、活字の活用には有利でした。

 金属活字を使った印刷技術が普及し、それまで高価だった本が比較的安価で購入できるようになると、様々な情報(知識)の拡散が起こり始めました。ルネサンス、宗教改革、科学革命の発展には、活版印刷を利用して製本された本が大きく寄与しました。かつては書物が高価な貴重品だったことから、聖書は一部の聖職者だけの物でしたが、活版印刷による聖書が出版されてからは、一般にも広く読まれる様になりました。この頃が、本が歴史的にも最も活躍した時代で、生物が爆発的進化を遂げたカンブリア紀のように、本も劇的な進化を遂げました。

 紙の本は今のところ、まだ本の主流ですが、これからも主流を保てるかどうかはわかりません。むしろ、電子書籍等に取って代わられる可能性の方が大きいと思います。私は紙の本が好きなので、紙の本の存続に協力したいと考える一人ですが、スマホやタブレットが普及すれば、やはり紙の本の分が悪いと思います。

 紙の本の特徴として、『手元に残る』というのがありますが、これは長所でもあり、短所でもあります。紙の本は捨てない限り、手元に残りますが、電子書籍のデータは不具合が起きた際には消える可能性があります。しかし、”手元に残る”ことで居住空間を侵食します。大学の私の部屋は”本だらけ”で、今では本を置くスペースの確保に四苦八苦しています。

 紙の本のメリットとして、『記憶に残りやすい』、『読書に集中できる』、『充電や端末が不要』、『特定のページが開きやすい』などがありますが、どれも本質的なメリットではない気がします。電子書籍のアプリが高度化すれば、紙の本のメリットは薄れていくでしょう。むしろ辞書や図鑑などの重たい本は、電子書籍の方にメリットがあるでしょう。検索やマーキング機能も、電子書籍の方が簡単かもしれません。

 紙の本の変わらないメリットは、『装丁を楽しめる』ことだけでしょう。表紙や帯が美しい本だと、お洒落なインテリアにもなります。また紙の本なら、紙質(手触り)に拘ることもできます。これだけは電子書籍には出来ません。

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