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情報のコモディティ化

 コモディティ化(commoditization)は、市場に流通している商品がメーカーごとの個性を失い、消費者にとってはどこのメーカーの品を購入しても大差のない状態のことです。コモディティ化の要因はいくつかありますが、おもな要因は技術の円熟化です。

 技術が円熟化し、消費者が求める以上の機能や性能を多数の製造者が実現できるようになると、製品の供給のためのハードルが下がります。すると、それまで先行者が占有していた市場に新規参入しやすくなり、製品の均一化供給量の増加価格の低下等が起こります。パソコンやICメモリなどの分野は、この傾向が顕著でした。

 その昔、日本のパソコン市場はNECのPC98シリーズがほぼ独占していましたが、IBMコンパチブルのPCが売られ始めると、多くの会社が参入して一気にコモディティ化しました。さらに高性能なスマホが普及した現在では、パソコンの価値自体が低下しています。そのうち、「パソコンって何?」という時代が来るのは確実です。

 またメモリも、昔は日本が世界的にも大きなシェアを握っていましたが、韓国や中国の製造技術が日本に追い付いた後は、メモリの価格はどんどん下がり、日本のシェアは急激に小さくなりました。白物家電やカラー液晶なども、その例に漏れません。いま流行りののドローンも、少し前まで高価格でしたが、今ではリーズナブルな価格で手に入ります。数十年先には、電気自動車もコモディティ化(?)しているはずです。

 製品ではない”情報”にも、コモディティ化の波が押し寄せています。少し前まで、貴重な情報は新聞社・出版社・TV局などの限られたマスメディアが独占していました。しかし、インターネットが普及した現在、個人でも情報発信できることができるようになりました。現在は、情報過多な時代だと言えます。この事実が、マスメディアの衰退傾向の原因の一つになっています。ただし、インターネット上には、正しい情報や嘘の情報が混在していることに注意を払うべきです。

 便利になった半面、おかしな現象も時々起きます。ゼミの発表などで”ある専門用語”について調べる課題を出すと、「ネットで検索しても出てきませんでした」と平気で言い訳します。「図書館などで調べてみたの?」と聞くと、「考えてもみませんでした」と返事が返ってきます。

 インターネットで検索すれば、何らかの情報が得られる場合が多いのですが、玉石混合で、その真偽は不明です。研究に関する確かな情報は学術論文などが情報源でしたが、その論文すらネット経由で簡単に検索できます。本当に便利な世の中になりました。

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