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博多『祝いめでた』のルーツ

 大学入学のために福岡に来て以来、1年間のアメリカ生活を除けば、福岡生活がずっと続いています。気付けば、田舎で過ごした18年の倍以上を福岡で過ごしてきました。今日は初めての、地元密着な内容です。

 福岡に住んでいると、「福岡市民のお祭り好き」なことがよくわかります。全国的に知られている春の博多ドンタクや夏の博多山笠以外にも、秋には筥崎宮で放生会ほうじょうやがあります。一般的には放生会は”ほうじょう”と読みますが、筥崎宮の放生会は”ほうじょう”と読みます。さらに、冬には筥崎宮の行事である玉せせりというのもあります。こんなにお祭りがある地域は、他所にはないのではないかと思います。

 博多山笠のフィナーレを飾る追い山の開始時には、福岡市民なら多くの人が知っている『祝いめでた』が歌われます。この歌は、山笠の時だけでなく結婚式などの祝い事や、宴会のシメなどにも歌われます。『祝いめでた』の歌詞は以下の通りです。

 祝い目出度めでたの若松様よ 枝も栄ゆりゃ 葉もしゅげ
 エーイーショウエ エーイーショウエー ショウエイ ショウエイ
 (アー) ションガネ
 アレワイサソ エサソエー
 ションガネー

 最初の歌詞が本当の歌詞部分で、カタカナ部分は掛け声(合いの手)に相当します。しかし、この掛け声の部分の意味が正確には分からないそうです。私の解釈は以下の通りです。

 さあ歌いましょう さあ歌いましょう 歌おう 歌おう
 (歌わなきゃ)もったいないよ(=楽しくないよ)
 あなたも私も みんな一緒に歌いましょう 
 (歌わなきゃ)もったいないよ(=楽しくないよ)

 『祝いめでた』のルーツは『伊勢音頭』にあると書かれていたので、少し調べると、3番目の歌詞にソックリな歌詞が出てきます。

 目出た目出たの若松様よ 枝も栄て 葉も茂る

 『祝いめでた』では、先頭の歌詞が「祝いめでた」に変更されていて、方言のために歌詞の語尾が変化しています。伊勢音頭の音韻律は7・7・7・5が基本で、どちらもこの規則を踏襲しています。伊勢音頭はお伊勢参りを媒介にして全国各地に広まったみたいで、飛騨地方には上記の歌詞と全く同じ『めでた』という祝い唄があります。その一方で、江戸に伝わった伊勢音頭は、年末の大掃除のあとの胴上げの時の歌として使われていて、以下のような歌詞になっています。

 目出た目出たの若松様よ 枝も栄て 葉も茂る
 お目出たや サアー サッ ササッ ササ

 個人的な感想ですが、この歌では合いの手のサ音の連続が大掃除の忙しさを醸し出しているような気がします。

 ちなみに伊勢音頭には伝統的な祝い唄(フォーマル版)と、宴会などで歌われるちょっとエッチな歌(インフォーマル版)があります。インフォーマル版の歌詞はココでは書けませんが、歌詞の内容から昭和の頃に作られたような気がします。興味がある人はググれば見つかると思いますが、インフォーマル版の歌詞の数はフォーマル版の歌詞を凌駕しています。 

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