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ミリしら物理探査

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物理探査を1ミリも知らない人に、物理探査に関する専門用語を解説します。
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#科学エッセイ

ミリしら物理探査#14 優決定と劣決定

 物理探査の最終的な目的は、観測値から地下構造を推定することです。このデータ解析のことを、インバージョン(逆解析)と読んでいます。観測値と地下構造のパラメータ(比抵抗分布や密度分布など)の関係は、様々な仮定を考慮して、最終的にはy=Axのような線型方程式に帰着します。ここで、yは観測値ベクトル、xは地下構造パラメータ、Aはヤコビアン(感度行列)となります。大変申し訳ありませんが、この辺りの文章の意味が理解できない人は、線形代数や最小二乗法を勉強してからお読みくださいm(_ _

ミリしら物理探査#10 『スキンデプス』

 地磁気地電流法(MT法)では、自然の電磁場変化を測定して地下を探査することができますが、低周波(長周期)の電磁場を使えば、かなり深い地中まで探査が可能です。このMT法の可探深度を表わす指標に、スキンデプス(表皮深度;skin depth)と呼ばれるものがあります。    元々、表皮深度とは、ある材質に入射した電磁場が 1/e (≒ 1/2.718) に減衰する距離です。 この表皮深度は、透磁率がμ、導電率がσの導体では 1 / √(π f μσ) となります。透磁率に真

ミリしら物理探査#6 『ミリガル』

 ミリガル(mGal)は、重力探査で使う重力加速度の単位のことです。重力探査では、重力そのものではなく、重力加速度を測ります。  高校の物理学では、重力加速度は一定値の9.8メートル毎秒毎秒と習いますが、じつは地球上の重力加速度は一定ではなく、緯度や標高によって変わります。また、地下の密度分布が変化することでも重力加速度が変わります。重力探査では、密度変化に由来する微小な重力加速度の変化を測定します。  MKS単位系では9.8m/s^2ですが、cgs単位系では980cm/

ミリしら物理探査#5 『インバージョン』

 様々な物理探査を実施すると、地下の物性値に応じた測定値が得られます。例えば、重力探査を行なえば、重力値が測定できて、多くの重力補正のあとで、重力異常が計算できます。この重力異常から、地下の密度分布を推定するのですが、この推定には2つのアプローチがあります。  1つ目は順解析というアプローチです。地下の密度分布が決まれば、理論的な重力異常が、数値計算によって求められます。これがシミュレーションです。シミュレーションをシュミレーションと間違う人がいますが、英語のsimulat

ミリしら物理探査#4 『MT法』

 MT法は、日本語では地磁気地電流法と言います。名前が長いので、通常はmagneto-telluric(地磁気-地電流)の二文字を取ってMT法と呼びます。  地球は大きな磁石なので、地磁気という大きな磁場に常に晒されています。しかも、この磁場は一定ではなく、様々な要因で常に変化しています。その一つの要因が、大気中で起きる雷の放電現象です。雷が発生すると、その電磁波が電離層の間で共振して、特定の周波数成分が大きな磁場変動が生じます。これが、シューマン共振という現象です。  

ミリしら物理探査#0 『物理探査』

 ミリしらとは、ある物事について全く情報を持ち合わせていない状態、または、そのような何のことか全く知らない名称から自由に推測したりする遊びを指すそうです。ミリしらという呼称は「1ミリも知らない」の略だそうです。1ミリも物理探査を知らない人のために、物理探査学の用語を解説する記事を始めます。まずは、そもそも物理探査って何よ?、から始めたいと思います。  物理も探査も聞いたことはあるけれど、これをつなげた物理探査という専門用語を聞いたことがある人は少ないはずです。物理探査は、物