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ミリしら物理探査

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物理探査を1ミリも知らない人に、物理探査に関する専門用語を解説します。
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2021年10月の記事一覧

ミリしら物理探査#10 『スキンデプス』

 地磁気地電流法(MT法)では、自然の電磁場変化を測定して地下を探査することができますが、低周波(長周期)の電磁場を使えば、かなり深い地中まで探査が可能です。このMT法の可探深度を表わす指標に、スキンデプス(表皮深度;skin depth)と呼ばれるものがあります。    元々、表皮深度とは、ある材質に入射した電磁場が 1/e (≒ 1/2.718) に減衰する距離です。 この表皮深度は、透磁率がμ、導電率がσの導体では 1 / √(π f μσ) となります。透磁率に真

ミリしら物理探査#9 『インピーダンス』

 インピーダンスは、陽気なダンスではありません。語感から想像すると、そんな感じもしますが・・・。  インピーダンス (impedance)は、電気回路では電圧と電流の比を表す複素数です。インピーダンスは、直流回路におけるオームの法則の電気抵抗(レジスタンス)の概念を複素数に拡張し、交流回路に適用したものです。単位としては電気抵抗と同じオーム(Ω)が使われます。インピーダンスは複素数なので、複素抵抗とも呼ばれます。  電気回路のインピーダンスは、電圧と電流の比(電圧/電流)

ミリしら物理探査#8 『磁化率と透磁率』

磁化率χは帯磁率とも呼ばれ、外部磁場に対してどの程度磁化するのかを表わした係数です。厳密な表現ではありませんが、物質が外部磁場によって磁石化したときの磁石の強さを表します。帯磁率は真空の値を0として、-1から無限大までの値をとります。外部磁場と同じ方向に磁化される強磁性体や常磁性体は正の磁化率(χ > 0)となり、外部磁場と反対方向に磁化される反磁性体は負の磁化率(χ < 0 )を持ちます。 具体例でいえば、鉄やコバルトなどの強磁性体は正の大きな磁化率を持ちます。通常の物質

ミリしら物理探査#7 『ナノテスラ』

 テスラ(T) は、MKS単位系の磁束密度の単位です。このテスラは、磁気探査や電磁探査の磁場の単位で使われますが、1Tはかなり大きな磁束密度なので、通常はTの百万分の一の単位μT(マイクロテスラ)や、さらに千分の一にしたnT(ナノテスラ)が使われます。このテスラという単位は、アメリカで活躍したセルビア人の発明家であるニコラ・テスラ(Nikola Tesla)に由来しています。  テスラは、LIFE誌の1999年の「この1000年で最も重要な功績を残した世界の人物100人」に

ミリしら物理探査#6 『ミリガル』

 ミリガル(mGal)は、重力探査で使う重力加速度の単位のことです。重力探査では、重力そのものではなく、重力加速度を測ります。  高校の物理学では、重力加速度は一定値の9.8メートル毎秒毎秒と習いますが、じつは地球上の重力加速度は一定ではなく、緯度や標高によって変わります。また、地下の密度分布が変化することでも重力加速度が変わります。重力探査では、密度変化に由来する微小な重力加速度の変化を測定します。  MKS単位系では9.8m/s^2ですが、cgs単位系では980cm/

ミリしら物理探査#5 『インバージョン』

 様々な物理探査を実施すると、地下の物性値に応じた測定値が得られます。例えば、重力探査を行なえば、重力値が測定できて、多くの重力補正のあとで、重力異常が計算できます。この重力異常から、地下の密度分布を推定するのですが、この推定には2つのアプローチがあります。  1つ目は順解析というアプローチです。地下の密度分布が決まれば、理論的な重力異常が、数値計算によって求められます。これがシミュレーションです。シミュレーションをシュミレーションと間違う人がいますが、英語のsimulat

ミリしら物理探査#4 『MT法』

 MT法は、日本語では地磁気地電流法と言います。名前が長いので、通常はmagneto-telluric(地磁気-地電流)の二文字を取ってMT法と呼びます。  地球は大きな磁石なので、地磁気という大きな磁場に常に晒されています。しかも、この磁場は一定ではなく、様々な要因で常に変化しています。その一つの要因が、大気中で起きる雷の放電現象です。雷が発生すると、その電磁波が電離層の間で共振して、特定の周波数成分が大きな磁場変動が生じます。これが、シューマン共振という現象です。  

ミリしら物理探査#3 『SP法』

 SP法のSPは、Self Potential(自然電位)の略で、日本語では自然電位法です。またSPは、Spontaneous Polarization(自発分極)の略語とも言われています。  ある種の鉱床(硫化物鉱床やグラファイト鉱床)は、自然状態で分極しているので、地下で自然の電池のような振る舞いをします。そのため、ある基準点からの自然電位を測定すれば、鉱床の存在範囲が推定できます。SP法は、このような自然発生する電位に着目した方法です。  SP法は電気探査の一種です