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ぶったん四方山話

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これまでに経験した物理探査にまつわるエピソードを紹介します。
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#エッセイ

世界”物探”遺産の旅#14 ピサの斜塔

今回は、わざわざ世界物探遺産に指定しなくても、堂々とした世界遺産であるピサの斜塔について書きます。ピサの斜塔については、以前別の記事で書いています↓↓。 ピサの斜塔は、イタリアのピサ市にあるピサ大聖堂の鐘楼であり、世界遺産『ピサのドゥオモ広場』を構成する超有名な観光スポットです。高さは地上55.86m、階段は296段あり、重量は14,453tです。ピサの斜塔は完成時から傾き続け、一時は傾斜の増大と倒壊の危惧がありましたが、その後の処置によって、当分は問題ないと判断されていま

世界”物探”遺産の旅#13 北極点

北極点とは、自転する地球の最北端、すなわち北緯90°の地点のことです。別の表現で言うと、地球の自転軸と地球表面が交差する2点のうちの1つです。北極点は、歴史時代には北極海の氷上に位置していて、現在ではカフェクルベン島の北713.5kmの海上(氷上)とされています。なお、北極点直下の水深は4,261 m となっています。 北極点に最初に到達した人については、厳密には到達していなかったり、捏造疑惑があったりで、”この人だ”という決め手に欠けているようです。日本人では、1978年

ぶったん四方山話#13 地雷を踏むな!

地雷には2種類あって、対戦車地雷と対人地雷に分類できます。対戦車地雷は、その名の通り戦車の爆破が目的なので、ある程度の重さ以上でないと踏んでも爆発しません。それに対して対人地雷は、敵の殺傷が目的ではなく、負傷者を増やして敵の戦闘力を削減するのが目的とされています。そのため、対人地雷を踏んだ兵士や民間人は手足が損傷しても、生き延びることが多いのです。それゆえ、対人地雷は”非人道的な兵器”と呼ばれています。 イギリスのダイアナ妃が生前、対人地雷の撲滅に力を入れていたこともあって

世界”物探”遺産の旅#12 アイスランドのギャオ

地球上は、プレートと呼ばれる岩板で覆われていています。このプレートには二種類あって、大陸プレートと海洋プレートに分類できます。プレートは固定されているのではなく、プレート同士が相互に運動しています。それは大地の裂け目から、新しい海洋プレートが誕生し、移動しながら大陸プレートに衝突し、いずれは沈み込んで行きます。このようなプレート間のダイナミックな運動によって、地震や火山活動が起こります。 海洋プレートが誕生する場所は中央海嶺などと呼ばれ、一般的には海底にあります。そのため、

世界”物探”遺産の旅#11 モザンビークのCabora Bassa送電線

モザンビークの南部から南アフリカ共和国の北部にかけて、Cabora Bassa送電線という長い送電線があります。この電線の北端は川の上流部にあるので、たぶん水力発電腫からの電気を送るための送電線だと思われます。この送電線を使った”大規模な電気探査・比抵抗法”が実施されました。 通常の電気探査の電極間隔は、数mから数百mで、長い場合でもせいぜい数kmです。しかし、1973年から1975年にかけて、アフリカ南部(モザンビークから南アフリカ共和国)の送電線を使って電極間隔が30k

世界”物探”遺産の旅#10 スウェーデン・キルナ

キルナ(Kiruna)は、スウェーデンで最も北に位置する人口2万ちょっとの町です。キルナの市章には鉄とライチョウが描かれていますが、これはキルナ鉄山が街にとっての主要な産業であることを表わしています。キルナは、いまでも鉱山事業が盛んです。 キルナがスウェーデンの市になったのは1948年であり、当時は世界で最も面積の広い市だったそうです。現在はオーストラリア・クイーンズランド州のマウントアイザに続いて2番目に広い市となっています。このマウントアイザもキルナ同様の鉱山業の町です

ぶったん四方山話#12 野外調査、始めました~(^^♪

あまりに暑いので、「冷やし中華、始めました~♪」みたいなノリの出だしですみません。昨日(7/25)から、試作機による本格的な”MT法探査”を始めました。場所は、糸島半島の西端と、伊都キャンパス内です。 MT法を知らない人のために、簡単に説明します。この方法は、日本語では地磁気地電流法といって、自然の地磁気変動によって誘導された地電流を観測して地下の比抵抗分布を調べる電磁探査法です。自然の電磁場の周波数は、数十Hzから1/1000Hz程度まで様々な種類がありますが、低周波の電

世界”物探”遺産の旅#9 ハワイ・マウナケア火山

マウナ・ケア(Mauna Kea)は、ハワイ諸島にある火山で、ハワイ島を形成する5つの火山のうちの1つです。ハワイ語でマウナは「山」、ケアは「白い」という意味なので、マウナケアは”白い山”もしくは”雪の山”を表わします。この山は、ハワイにあるにも拘わらず、冬になると山頂が雪に覆われることがあります。この火山は、比較的粘性の低い溶岩から出来たため、タイトル画のように、平たい形になっています。 マウナ・ケア山頂付近は天候が安定し、空気が澄んでいることもあり、世界11ヶ国の研究機

世界”物探”遺産の旅#8 マーシャル諸島・ジャルート環礁

マーシャル諸島共和国(通称マーシャル諸島) は、太平洋上に浮かぶ島国で、いわゆるミニ国家の一つです。この島国は、ミクロネシア連邦の東、キリバスの北に位置していて、”真珠の首飾り”とも呼ばれるマーシャル諸島全域を領土としています。現在は独立国家ですが、一時期は日本が統治していました。Wiki情報では、以下のような歴史年表になっています。 1914年 - 第一次世界大戦において日本が占領。 1919年 - 国際連盟からの委任で日本の委任統治領(外地)となる。 1920年 - 国

世界”物探”遺産の旅#7 サルイエール

サルイエール(Sariyer)は、トルコのイスタンブールの最北端、ヨーロッパ側に位置する地区である。この地区のボスポラス海峡に面した村々は、かつては漁村でしたが、この街の富裕層の保養地となりました。オスマントルコ時代には、スルタンがピクニックや遠足でこれらの村々を訪れました。18世紀から19世紀にかけて、海岸には裕福な外国人商人たちの夏の別荘が立ち並んでいた。この時代には、多くの外国大使館が夏の離宮を建設しました。海岸道路が建設されて以来、これらの村々やその背後の丘陵地帯には

世界”物探”遺産の旅#6 グァラパリ

ブラジルのグァラパリは、有名な観光地の一つで、美しい曲線を描く白い砂浜で知られています。ここでは、海岸線に面した土地は隙間なく開発されていて、高層建築が建ち並んでいます。市内にはセチバ自然保護区が設定されていて、カメや鳥などの原始的な沿岸生態系の保護が行なわれています。 実はグァラパリは、世界でも有数の自然放射線量の高い地域としても知られています。グァラパリの周辺地域には、放射性物質を含むモナザイト(モナズ石)が多く埋蔵されており、このモナザイトが砂として海岸に堆積したため

世界”物探”遺産の旅#5 ポツダム

旧・東ドイツの都市ポツダムは、ポツダム宣言で有名な歴史的な町で、私が世界”物探”遺産に登録しなくても、本当の世界遺産に登録されています。ポツダム宣言は、1945年(昭和20年)7月26日にイギリス・ アメリカ・中華民国の名において日本に対して発された全13か条から成る、日本への降伏要求の最終宣言です。日本は1945年8月14日にこの宣言を受諾しました。その後、9月2日に日本が降伏文書に調印し、即時発効して第二次世界大戦・太平洋戦争は正式に終結しました。 タイトル画は、ポツダ

ぶったん四方山話#11 電気探査の伝統

伝統とは、ある民族・社会・集団の中で、思想・風俗・習慣・様式・技術・しきたりなど、規範的なものとして古くから受け継がれてきた事柄のことを言います。また、それらを受け継ぎ、伝えることを意味します。伝統を受け継ぎ、長く後世に伝えることは難しいことです。能や狂言、歌舞伎などは発祥当時は最先端の流行芸能でしたが、その技が数百年も受け継がれたことで伝統芸能になりました。 日本の物理探査学の伝統は、ひとりの研究者から始まりました。九州帝國大学工科大学の小田二三男助教授(当時)は、実家が

世界”物探”遺産の旅#4 チチュルブ隕石孔

チチュルブクレーターは、メキシコのユカタン半島にある巨大クレーターです。このクレータは、白亜紀末の6550万年前に、直径10~15キロメートルの小惑星が秒速20キロメートルで衝突した跡と考えられています。地名であるChicxulubは、現地での発音は”チチュルブ”に近いそうですが、その綴りから”チクシュルーブ”とも呼ばれます。 このクレーターの原因となったい隕石の衝突によって、マグニチュード11以上の大地震が起こり、高さ300mもの大津波が周辺に押し寄せ、大気中に舞い上がっ