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ぶったん四方山話

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これまでに経験した物理探査にまつわるエピソードを紹介します。
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#世界物探遺産

世界”物探”遺産の旅#16 ヒマラヤ山脈

世界の屋根と言われるヒマラヤ山脈は、世界で一番、標高の高い地域にある山脈で、パキスタン、インド、ネパール、中国、ブータンと5つもの国に跨っています。この山脈中で最も高い山はエベレストで、標高は8849mもあります。ちなみに、エベレストは後から勝手につけられた名前で、チベットではチョモランマ、ネパールではサガルマータです。 この壮大なヒマラヤ山脈の麓では、ヒマラヤ岩塩といわれる岩塩が取れます。パキスタンで取れる岩塩はピンク色をしているので、ピンク岩塩ともいわれます。でも、こん

世界”物探”遺産の旅#15 海上自衛隊・えびの送信所

えびの送信所は、宮崎県えびの市に所在する海上自衛隊の超長波送信所です。無線通信は電波を使って行いますが、海中深くまでは電波は届きません。ただし、周波数の低い電波を使うと、海中の浅い深度(10~40m)までなら通信が可能です。えびの送信所は、海に潜る潜水艦向けの超長波送信施設として建設されました。当初は福岡県での建設が検討されましたが、最終的にはえびの市に建設されました。 稼働中の超長波通信施設としては国内唯一のもので、使用周波数は22.2kHzで、出力は200kWです。超長

世界”物探”遺産の旅#14 ピサの斜塔

今回は、わざわざ世界物探遺産に指定しなくても、堂々とした世界遺産であるピサの斜塔について書きます。ピサの斜塔については、以前別の記事で書いています↓↓。 ピサの斜塔は、イタリアのピサ市にあるピサ大聖堂の鐘楼であり、世界遺産『ピサのドゥオモ広場』を構成する超有名な観光スポットです。高さは地上55.86m、階段は296段あり、重量は14,453tです。ピサの斜塔は完成時から傾き続け、一時は傾斜の増大と倒壊の危惧がありましたが、その後の処置によって、当分は問題ないと判断されていま

世界”物探”遺産の旅#12 アイスランドのギャオ

地球上は、プレートと呼ばれる岩板で覆われていています。このプレートには二種類あって、大陸プレートと海洋プレートに分類できます。プレートは固定されているのではなく、プレート同士が相互に運動しています。それは大地の裂け目から、新しい海洋プレートが誕生し、移動しながら大陸プレートに衝突し、いずれは沈み込んで行きます。このようなプレート間のダイナミックな運動によって、地震や火山活動が起こります。 海洋プレートが誕生する場所は中央海嶺などと呼ばれ、一般的には海底にあります。そのため、

世界”物探”遺産の旅#11 モザンビークのCabora Bassa送電線

モザンビークの南部から南アフリカ共和国の北部にかけて、Cabora Bassa送電線という長い送電線があります。この電線の北端は川の上流部にあるので、たぶん水力発電腫からの電気を送るための送電線だと思われます。この送電線を使った”大規模な電気探査・比抵抗法”が実施されました。 通常の電気探査の電極間隔は、数mから数百mで、長い場合でもせいぜい数kmです。しかし、1973年から1975年にかけて、アフリカ南部(モザンビークから南アフリカ共和国)の送電線を使って電極間隔が30k

世界”物探”遺産の旅#8 マーシャル諸島・ジャルート環礁

マーシャル諸島共和国(通称マーシャル諸島) は、太平洋上に浮かぶ島国で、いわゆるミニ国家の一つです。この島国は、ミクロネシア連邦の東、キリバスの北に位置していて、”真珠の首飾り”とも呼ばれるマーシャル諸島全域を領土としています。現在は独立国家ですが、一時期は日本が統治していました。Wiki情報では、以下のような歴史年表になっています。 1914年 - 第一次世界大戦において日本が占領。 1919年 - 国際連盟からの委任で日本の委任統治領(外地)となる。 1920年 - 国

世界”物探”遺産の旅#7 サルイエール

サルイエール(Sariyer)は、トルコのイスタンブールの最北端、ヨーロッパ側に位置する地区である。この地区のボスポラス海峡に面した村々は、かつては漁村でしたが、この街の富裕層の保養地となりました。オスマントルコ時代には、スルタンがピクニックや遠足でこれらの村々を訪れました。18世紀から19世紀にかけて、海岸には裕福な外国人商人たちの夏の別荘が立ち並んでいた。この時代には、多くの外国大使館が夏の離宮を建設しました。海岸道路が建設されて以来、これらの村々やその背後の丘陵地帯には

世界”物探”遺産の旅#6 グァラパリ

ブラジルのグァラパリは、有名な観光地の一つで、美しい曲線を描く白い砂浜で知られています。ここでは、海岸線に面した土地は隙間なく開発されていて、高層建築が建ち並んでいます。市内にはセチバ自然保護区が設定されていて、カメや鳥などの原始的な沿岸生態系の保護が行なわれています。 実はグァラパリは、世界でも有数の自然放射線量の高い地域としても知られています。グァラパリの周辺地域には、放射性物質を含むモナザイト(モナズ石)が多く埋蔵されており、このモナザイトが砂として海岸に堆積したため

世界”物探”遺産の旅#5 ポツダム

旧・東ドイツの都市ポツダムは、ポツダム宣言で有名な歴史的な町で、私が世界”物探”遺産に登録しなくても、本当の世界遺産に登録されています。ポツダム宣言は、1945年(昭和20年)7月26日にイギリス・ アメリカ・中華民国の名において日本に対して発された全13か条から成る、日本への降伏要求の最終宣言です。日本は1945年8月14日にこの宣言を受諾しました。その後、9月2日に日本が降伏文書に調印し、即時発効して第二次世界大戦・太平洋戦争は正式に終結しました。 タイトル画は、ポツダ

世界”物探”遺産の旅#4 チチュルブ隕石孔

チチュルブクレーターは、メキシコのユカタン半島にある巨大クレーターです。このクレータは、白亜紀末の6550万年前に、直径10~15キロメートルの小惑星が秒速20キロメートルで衝突した跡と考えられています。地名であるChicxulubは、現地での発音は”チチュルブ”に近いそうですが、その綴りから”チクシュルーブ”とも呼ばれます。 このクレーターの原因となったい隕石の衝突によって、マグニチュード11以上の大地震が起こり、高さ300mもの大津波が周辺に押し寄せ、大気中に舞い上がっ

世界”物探”遺産の旅#3 九州大学伊都キャンパス

今回の場所は、私の勤務先でもある九州大学の伊都キャンパスです。九州大学伊都キャンパスは、単独のキャンパスとしては日本一の面積を誇ります。ただし、この面積の広さが世界物探遺産の理由ではありません。 私が伊都キャンパスを世界物探遺産に選んだ理由は、その歴史的な背景です。伊都キャンパス内には、古代からの歴史遺産が数多く残されています。とくに、前方後円墳の数が特徴的で、伊都キャンパス内には5基の前方後円墳が存在しています。 伊都キャンパスの東側から紹介すると、塩除古墳(53.5m

世界”物探”遺産の旅#2 クルスク

磁気異常(magnetic anomaly)は地磁気異常とも呼ばれ、地球上における地磁気の局所的な異常のことを指します。地球はそれ自体が大きな磁石と考えられていますが、その大きな磁石によって生じる地磁気は一様に分布しているわけではありません。規則的な磁場中に存在する不規則な磁場が、局所的な磁気異常/地磁気異常です。 磁気異常の発生機構にはいくつかの要因がありますが、主なものは鉄などの強磁性体が地球磁場によって磁化された誘導磁化です。物理探査の一種である磁気探査は、磁気異常の

世界”物探”遺産の旅#1 ワスカラン山

世界文化遺産や世界歴史遺産など、世の中には様々な世界遺産が存在しています。そこで、いつまで続くかわかりませんが、世界”物探”遺跡を紹介したいと思います。この物探とは、物理探査の省略形です。しばしば、物理探査はブッタンと呼ばれます。このシリーズでは、私が独断と偏見で選んだ世界物探遺産を紹介します。 ワスカラン山は、ペルーの最高峰であり、地球上の熱帯地域での最高峰でもあります。西半球で六番目に高いこの山は、アンデス山脈に位置し、山形はタイトル画のように北峰(標高6,655m)と