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ぶったん四方山話

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これまでに経験した物理探査にまつわるエピソードを紹介します。
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#物理探査

今世紀最大の発見!? ピラミッドの空間

エジプトの首都カイロ近郊のギザにある、世界最大のクフ王のピラミッド内に、通路のような新たな空間が発見されました。エジプト考古学の権威ザヒ・ハワス博士によれば、「今世紀最大の発見だ」とのことです。しかし、今世紀はまだ始まったばかりです。今後も”もっと凄い発見”があるかもしれません。この研究成果は、約4500年前に建てられたとされるクフ王のピラミッドの内部構造の解明の手掛かりになると期待されているようです。 個人的には、「あれほど大きいピラミッドなので、新しい空間があっても不思

I can show you the "subsurface" world.

『I can show you the world』は、ディズニー映画の名作『アラジン』の劇中歌のタイトルです。主人公のアラジンは空飛ぶ絨毯に乗り、「Do you trust me? (信用してくれるかい?)」と言ってプリンセスを誘い、「I can show you the world. (外の世界を見せてあげられるよ)」と言って、プリンセスに今まで見たことが無い広い世界を見せてあげます。 アラジンはプリンセスに、”目で見える”素晴らしい”地上の”景色を見せてあげるのですが

支石墓について

私の本業は地下資源の探査に関する研究&教育ですが、副業(?)として遺跡探査の研究もしています。本業の地下資源探査では、主に地熱や鉱物資源の探査に関する新しい手法の開発や新しい機器開発などを実施しています。また遺跡探査については、遺跡フィールドでの調査を行なうケーススタディがメインです。 福岡市西区の九州大学の伊都キャンパス内には、前方後円墳を始め、各種の遺跡/遺構が存在していますし、そのお隣の糸島市にも多くの遺跡/遺構が存在しています。時々、地方自治体の要請を受けて遺跡探査

世界”物探”遺産の旅#14 ピサの斜塔

今回は、わざわざ世界物探遺産に指定しなくても、堂々とした世界遺産であるピサの斜塔について書きます。ピサの斜塔については、以前別の記事で書いています↓↓。 ピサの斜塔は、イタリアのピサ市にあるピサ大聖堂の鐘楼であり、世界遺産『ピサのドゥオモ広場』を構成する超有名な観光スポットです。高さは地上55.86m、階段は296段あり、重量は14,453tです。ピサの斜塔は完成時から傾き続け、一時は傾斜の増大と倒壊の危惧がありましたが、その後の処置によって、当分は問題ないと判断されていま

世界”物探”遺産の旅#13 北極点

北極点とは、自転する地球の最北端、すなわち北緯90°の地点のことです。別の表現で言うと、地球の自転軸と地球表面が交差する2点のうちの1つです。北極点は、歴史時代には北極海の氷上に位置していて、現在ではカフェクルベン島の北713.5kmの海上(氷上)とされています。なお、北極点直下の水深は4,261 m となっています。 北極点に最初に到達した人については、厳密には到達していなかったり、捏造疑惑があったりで、”この人だ”という決め手に欠けているようです。日本人では、1978年

世界”物探”遺産の旅#11 モザンビークのCabora Bassa送電線

モザンビークの南部から南アフリカ共和国の北部にかけて、Cabora Bassa送電線という長い送電線があります。この電線の北端は川の上流部にあるので、たぶん水力発電腫からの電気を送るための送電線だと思われます。この送電線を使った”大規模な電気探査・比抵抗法”が実施されました。 通常の電気探査の電極間隔は、数mから数百mで、長い場合でもせいぜい数kmです。しかし、1973年から1975年にかけて、アフリカ南部(モザンビークから南アフリカ共和国)の送電線を使って電極間隔が30k

ぶったん四方山話#12 野外調査、始めました~(^^♪

あまりに暑いので、「冷やし中華、始めました~♪」みたいなノリの出だしですみません。昨日(7/25)から、試作機による本格的な”MT法探査”を始めました。場所は、糸島半島の西端と、伊都キャンパス内です。 MT法を知らない人のために、簡単に説明します。この方法は、日本語では地磁気地電流法といって、自然の地磁気変動によって誘導された地電流を観測して地下の比抵抗分布を調べる電磁探査法です。自然の電磁場の周波数は、数十Hzから1/1000Hz程度まで様々な種類がありますが、低周波の電

世界”物探”遺産の旅#7 サルイエール

サルイエール(Sariyer)は、トルコのイスタンブールの最北端、ヨーロッパ側に位置する地区である。この地区のボスポラス海峡に面した村々は、かつては漁村でしたが、この街の富裕層の保養地となりました。オスマントルコ時代には、スルタンがピクニックや遠足でこれらの村々を訪れました。18世紀から19世紀にかけて、海岸には裕福な外国人商人たちの夏の別荘が立ち並んでいた。この時代には、多くの外国大使館が夏の離宮を建設しました。海岸道路が建設されて以来、これらの村々やその背後の丘陵地帯には

ぶったん四方山話#11 電気探査の伝統

伝統とは、ある民族・社会・集団の中で、思想・風俗・習慣・様式・技術・しきたりなど、規範的なものとして古くから受け継がれてきた事柄のことを言います。また、それらを受け継ぎ、伝えることを意味します。伝統を受け継ぎ、長く後世に伝えることは難しいことです。能や狂言、歌舞伎などは発祥当時は最先端の流行芸能でしたが、その技が数百年も受け継がれたことで伝統芸能になりました。 日本の物理探査学の伝統は、ひとりの研究者から始まりました。九州帝國大学工科大学の小田二三男助教授(当時)は、実家が

ぶったん四方山話#7 「測点まで移動できません!」

 熊本県の阿蘇南外輪山の大自然の中に、アスペクタと呼ばれる世界最大級の野外ステージがあります。この劇場は、1987年に熊本県が県民の文化施設として設置しました。”アスペクタ”とは世界の『アソ』の景観の中で体験する『スペクタクル(壮大な光景・景観)』という意味の造形語です。この野外ステージは、ホテルグリーンピア南阿蘇の敷地内にあります。バブル真っ最中の頃、年金のお金が余っていましたから、グリーンピアホテルがかんぼの宿として各地に作られました。ここも、その一つです。  丁度、こ

ぶったん四方山話#6 目の力

 視力の測定方法には様々な方法があります。私が小学校の頃は、ひらがなを読む方法が一般的でした。学校の保健室にも眼科にあるものと同じものが置いてありました。確か左端の列は上から、”りさつくけてへこいりぬ・・・”だったと記憶しています。  今は、大きさの異なる“C”の形をした環が開いている方向を識別する事で測定するランドルト環が用いられています。ランドルト環での視力検査では、5mの距離から約1.45mmの切れ目を判別できると視力1.0とされます。昔は悪くても1.5、調子がいいと