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ぶったん箸休め

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物理探査のことを略して、物探(ぶったん)と呼びます。ここでは、物探とチョッとだけ関係ある話題を集めました。智の箸休めです。楽しんで下さい。
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2021年7月の記事一覧

流体流動電磁法

 たまには、ゴリゴリの物理探査の記事を書こうと思います。  流体流動電磁法は、私と共同研究者の田中俊昭博士が考案した、全く新しいコンセプトの物理探査法です。物理探査は、地下資源のような動かないものを探す方法ですが、流体流動電磁法では地熱流体、石油・天然ガス、地下水などの地下の資源流体に着目したモニタリング探査法です。下の図は、地熱流体の生産と還元の様子を示したものですが、地熱流体が流動すれば、それに伴って流動電流が生じます。また、その流動電流によって二次的な磁場も発生します

はじめての物理探査

 「はじめてのお使い」ならぬ、「はじめての物理探査」の話です。  本格的な物理探査を体験したのは、大学4年生の時でした。場所は、八丁原地熱発電所がある筋湯周辺でした。当時の大学は7月初旬から9月初旬までの2か月間が夏休みで、9月に二週間ほど講義があって、それからが前期の試験期間でした。試験終了と後期の始まりには一週間ぐらいの余裕があって、その期間を”試験休み”と称していました。  試験休みに研究室でノンビリしていたら、野外調査に行っているはずの先輩がひょっこりと部屋に現れ

沖縄で見た火星の大接近

 前回の金環日食に引き続き、沖縄&天体ショーの話です。何故だか、沖縄と天体ショーには縁があります。2003年8月27日18時51分(日本時間)に、火星が地球へ大接近しました。これは、21世紀で最大の火星大接近です。  惑星同士は、公転軌道の半径によって公転角速度が異なるので、外側の惑星よりも内側の惑星の方が公転にかかる時間が短くなります。そのため、ある期間を経て内側の惑星が外側の惑星を追い抜くときがあります。追い抜く際、惑星同士が一時的に最接近する現象を接近と言い、そのうち

沖縄で見た金環日食

 大学院生の頃は、物理探査のアルバイトで九州・沖縄を駆け巡っていました。時には、東北地方にまで行ったことがありました。沖縄には二度ほど、地下空洞の探査のアルバイトで行きました。  最初の空洞探査は、沖縄の那覇港の浅瀬での探査でした。この探査は、橋脚を建てるための基礎地盤調査で、橋脚の予定位置付近に空洞がないかを確かめる探査でした。この探査には流電電位法を使いました。二度目の調査は、沖縄本島から離れた宮古島の隣の伊良部島での空洞探査でした。今では、宮古島から伊良部島への橋が出

詐欺には気を付けて!

 十年以上前になりますが、大阪地検特捜部から電話がかかってきたことがありました。どうやら、詐欺の裏付け捜査をしているとのことでした。もちろん、詳しくは教えてくれませんが、質問内容から”金鉱発見に絡んだ詐欺”のようでした。  最初の質問は、「小田二三男教授という方は、九州大学にいますか?」でした。小田先生は九大の教授でしたが、はるか昔に定年退官された、五代前の教授でした。もちろん既に他界されていました。小田先生は日本初の”物理探査学講座”を開設された先生で、私にとっては伝説上