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伝えるという技術を考える

昨日は、着工直前に変更をしたいと連絡があったお施主さんとの打ち合わせで、その場で3Dをいじりながら話をまとめ、最小限の変更で留めることができて、一安心の上田です。

今日は伝えるということについて書こうと思います。

建築の設計という仕事は伝えるということを常に考えないといけない仕事だと思っています。

設計の仕事を初めて間も無く、何かの本で読んだ『図面は手紙だと思え』という言葉を今でも覚えていて、よくスタッフに話したりしています。

お施主さんとの打ち合わせでも、図面だけだと寸法などは伝えることができますが、仕上げや高低差などは文字で書いていても想像することは難しいですよね。
もちろん、建築の仕事をしていると図面を見て立体を想像することができますが、一般の人に図面だけでは理解してもらえないと思います。

設計の仕事をしていると、図面を描くことに夢中になって、伝える相手のことを考えることをおろそかにしてしまうことが多いです。

一般的な図面のほとんどは、工事現場に内容を伝えるものであって、お施主さんに伝わらないもの。

さらに、図面に内容を濃く描いていくと、文字はどんどん小さくなって、現場の大工さんに「字が小さすぎて読めない」なんて言われたりします。図面の内容を良くしようと詰め込んだことが、逆に伝わらないことになってしまう悪循環。

完璧な図面を描くことは、出来上がりに達成感もあり仕事した感じがありますが、これはただの自己満足だと思います。まさに「夜中のラブレター」。
盛り上がって自分のことばかり書いてしまい、相手のことを考えてないので、伝わらないものになってしまいます。

昨日の打ち合わせでは、着工直前なのでこの日に全てを決めてもらう必要があり、さらに最小限の変更で済ますことが求められていました。
これを図面だけで打ち合わせしてしまうと、こっちは伝えているつもりでも、相手はなんとなくしか把握できなくて、内容がまとまる可能性が低いです。

そこで、僕が準備したのは、図面と3Dです。
パソコンで視点を変えて見せたり、要望を聞きながらその場で変更して見てもらいました。もちろん、仕上げも近いのもを入れ込んでいるので、実際の出来上がりが想像できます。

要望を聞きながら、提案も加えながら、3Dに反映していくと、(変更が少なくなるように誘導しました)実は仕上げが気になっていたことに気がつきました。これは、図面だけで打ち合わせしていたら、辿りつくことができなかったかもしれませんし、もし辿りついたとしても、本当に良いのか見てみないとわからないという話になり、まとまらなかったかもしれません。

設計の仕事は、お施主さんに対しては、出来上がりをきちんと見せてあげ、理解してもらうことであり、現場に対しては、その内容をきちんとわかりやすく(見やすく)伝えることだと改めて学んだ打ち合わせでした。

建築業界は昔からのやり方に美学を持っている部分が多いと思いますが、そこに固執することなく、伝えるという技術を常に磨いていく必要があると思います。CADを使えることが建築家や設計士のスキルではないですよというお話でした。


ということで、今日も学びの多い一日でありますように!!


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