映像翻訳者に必要な英語力
こんにちは。遅咲きの映像翻訳者ヒデです。
私は以前、某英会話スクールで英語を教えていました。累計人数にして500名ほどです。個人的にサークルを作りグループレッスンをしていたこともあるので、実際に教えていた数はもっと多いと思われます。
英会話スクールには「TOEICコース」があったのですが、そのとき自らTOEICを受験し続けながら、かなり研究をして詳しくなり、結果としてTOEICのスコアと実際の英語力が肌感覚で分かるようになりました。
ひと言で「英語力」といっても定義が難しいですよね。なので今回は映像翻訳者に必要なTOEICのスコアについてお話しようと思います。ちなみに私は当時、990点(満点)を取得しています。
映像翻訳のスクールはいくつかありますが、某大手の映像翻訳スクールでは・・・
プロになった時点でクリアしておきたいおおよその数値的ラインは「TOEICスコア800点以上」
と定められていました。果たしてこの英語力で映像翻訳者としてやっていけるでしょうか。
あくまでも主観ですが、私の感覚では“それでは厳しい”です。
作品にもよりますが、映像翻訳として扱う作品の英語はほとんどが話し言葉です。それに対し、TOEICは英語を外国語として学ぶ人がビジネスの場において英語を使うために最低限必要な英語力を測るテスト。つまり、とても綺麗な正しい英語なのです。しかもTOEICで扱う語彙は制限がされており、SVL12000語(※)の内、10000語あれば900点以上が取れます。英検1級取得にはSVL12000語が必要です。
英語ネイティブの語彙数は以下のとおりだと言われています。映画やドラマの英語が難しいといわれるゆえんです。
Test Your Vocabularyというサイトが約50万人(2018年8月現在)のネイティブスピーカーを対象に調査した結果です。
中学生: 約20,000語
高校生: 約22,000語
大学生: 約22,000~25,000語
大人: 約25,000~38,000語
数分で知っている英単語数が分かるので、ぜひトライをしてみてください。
翻訳は通訳とは異なり、調べる時間が取りやすいですよね。むしろ、調べるのが仕事といっても過言ではありません。しかし、スクリプトを一読した時に分からない語彙が多すぎると情報が分断され、そもそものストーリーの流れが分かりにくくなってしまいます。ストーリーの解釈が曖昧なままだと、適切なハコ切り(音声の切れ目や翻訳内容に合わせて字幕を1枚ずつ区切っていくこと)ができません。どうにかハコを切ったものの、どうしても翻訳が思いつかず、ハコを切り直してみたら解決したということが多々起きます。つまり、完成までにやたら時間がかかってしまうのです。
私は翻訳スクール時代に先生から「映像翻訳は流れを読み、そのエッセンスのみを訳すからこそ、かなり高い英語力が必要。しかも話し言葉だから余計に難しい」と聞かされていました。何人もの先生がそうおっしゃっていたので、先生自身がそれを深く感じてらっしゃったのだと思います。
もちろん、翻訳には英語力だけではなく、日本語力やリサーチ力も必要です。今回は分かりやすくするため、あえて英語力のみをTOEICスコアに換算してお伝えしましたが、私が英語講師や映像翻訳の実務を通じて実感した映像翻訳者に必要だと思われる最低限のTOEICスコアは以下のとおりです。
900点以上(リーディング:450点以上)
リーディングで450点以上を取得していると、基礎的な文法力があると判断できるので、誤訳を防げます(それでも間違う時は間違いますが・・・)逆にそれ以下ですと、どうして誤訳なのかが分からない状態や、同じ誤訳を繰り返してしまう可能性が高いので、早急に文法力の強化をされることをお勧めします! ここをなおざりにすると、いずれ英語力が頭打ちになりますし、ハコ切りの上達も妨げられてしまいます。
試しに、以下の英文を訳してみてください。
There is only so much time and so much energy to be spent.
基礎的な文法力の向上に良いと思われる書籍をいくつかあげておきますので、参考にしてみてください。
先ほどの英文の回答です。
誤)投資できる時間とエネルギーはたくさんある。
正)投資できる時間とエネルギーには限度がある。
ごくシンプルな語の組み合わせでも注意が必要な一例です。
only so much部分で、おや? と気づけるかどうかがポイントです。
お読みくださりありがとうございました!
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