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自動生成AIに将棋について聞いた結果、業務への活用方法を考えた

はじめに

こちらのnoteでは「ChatGPTを使うと、デジタルの開発は大きく変わる」という記事を書いております。

いまや、ChatGPTだけでなく、Stable Diffusionのような画像生成AIも含め、これらを紹介する記事や動画が非常にたくさんある状況です。そうなると、当然「業務に活用したい」と思うのは自然なことだと思います。「デジタル技術を有効活用して業務効率化を実現する」という字面だけを見ると、社内におけるDXの取組と親和性が高そうに見えます。しかし、もしこれを本当に言い出したとしたら

「確かに面白いけれど、うちの会社ではできない」という声

が社内で聞こえないでしょうか?

「これって面白いテーマですよね」と私が話し掛けると、「面白いのですが、うちの会社ではできないんですよね」とAさん。「なぜできないと思うのですか」と私が聞くと、「いや、これをやるには……」とAさんは答え始めました。
(中略)
それは、「うちの上層部がこの手のテーマの提案を受け入れそうにない」というものだったのです。

新規事業、石橋をたたいて壊す会社になっていないかhttps://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/00662/00037/

これは新規事業の話ですが、こういう姿勢を見せる上層部が出てくると、せっかく新しい技術・ツールが登場しているのに、それを業務に使おうという話はいずれなくなってしまうものです。これは非常にもったいないと考えています。そこで、この点について、事例を紹介しながら考えていきます。

ChatGPTのアウトプットは「不正確」、だからこそ活用すべき

まず、そもそもChatGPTは業務に活用すべきなのか?という点についてですが、これは以下の記事が非常に参考になると思います。

米Wall Street Journal(WSJ)は2023年2月22日に「生成系AIどう生かす CEOや建築家も試行錯誤」という記事を掲載した。生成系AIは、いわゆるChatGPTのようなコンテンツ生成系のAIである。おおよその趣旨は、従来のAIが物流の合理化など縁の下の力持ちとしての役割だったのに対し、生成系AIは個人や小規模企業が容易に入手し、負担の重い作業の自動化や創造性を必要とする作業のスピード化を図れる、というものだ。
一方このWSJの記事は、AIの専門家が「生成系AIツールは、既にその道の専門家である人を支援することに限り使用すべきだと注意を促している」と指摘したことを紹介している。不快なコンテンツや誤情報を生成することや、知的財産盗用やプライバシーに関する懸念があるからだという。

人間の仕事はChatGPTに奪われるか? 直接聞いて返ってきた答えから考える
週刊ITニュース深読み:日経クロステック Active
https://active.nikkeibp.co.jp/atcl/act/19/00432/022700006/

この記述はとても正確に自動生成系AIのポイントを押さえています。一言で言うと

人間が行う作業をラクにしてくれるかもしれないが、不正確かもしれない

というものです。

うそはうそであると見抜ける人でないと(自動生成系AIを使うのは)難しい

これはとても有名なインターネットミームですが、2000年の言葉だそうです。

しかし、この考え方はいつだって重要です。それが、自動生成AIであっても。

たとえば、ChatGPTに、私の趣味である「(将棋を勉強するのに)良い問題集を教えてください」と聞いてみます。

これらが将棋の「良い問題集」だそうです。著者にも注目。

ChatGPTはすぐに5つも紹介してくれました。が、ここで一つ問題があります。

この5つのいずれも実在しない書籍

なのです。

確かに、ここで「著者」とされる方はすべて実在のプロ棋士で、どなたも複数の書籍を出されています。しかし、その説明文は(将棋に少しでも興味がある人が読めば)どれも違和感ばかりです。たとえば、将棋の問題集を「将棋パズル」と呼ぶような言い方はしませんし、書籍4については、その「著者」とされる鈴木大介九段のところから違和感です。将棋ファンに「鈴木大介と言えば?」と聞けば

  • 四間飛車

  • ハチワンダイバー(漫画。作品内に実名で登場もする)

  • 麻雀

などとは言うでしょうが、鈴木九段に詰将棋のイメージはありません。

もう一つ、AIに将棋に関するイラストを描かせてみました。

将棋の駒…?

これの絵に関しては「残念」の一言なのですが、これはおそらく生成に使うDBの問題で、

将棋 → 英語で“Japanese Chess” → Chess をもとに画像生成

というプロセスを経たためそうなったのでしょう。いずれにしても「将棋の駒」というものが正しく理解されていないように見えます。

おわりに ~ 敵を知り、己を知れば

このように、ChatGPTのアウトプットは確かに不正確なところがあります。「不正確である」という点に懸念を示すような企業であれば、この時点で「だから利用は止めよう」となるかもしれません。しかし、本当にそれでよいのでしょうか?

私が考えるに、現状の自動生成AIは二つの方向性で使い方が考えられます。

(1) 曖昧な質問に対する無難な回答をさせる

一つは、

正解がないような曖昧な質問だとそれなりに回答を作る

という性質をうまく利用するものです。

ChatGPTが得意とするのは、回答が1つに定まらないような曖昧な質問だ。今度は「人生には意味がありますか」と入力してみよう。
かなりそれらしい回答が返ってくる。決めつけるような回答ではなく、いろんな角度から人生の意味を考察している。「言質を取られないような優等生的な回答」にも見える。

ChatGPT誕生の秘密、人海戦術による大量のデータで人間の感覚を教え込む
| 日経クロステック(xTECH)https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/02380/030200002/

ChatGPTでは、たとえばワインの具体的な銘柄や商品名は出てきません。いろいろと質問をしてみても、嘘の情報を本当のように返してくることが頻繁にあるなど危険な部分もありましたし、自分の専門外のことについてはあまりそのすごさを実感できませんでした。ただ、日常生活の中で「こういうことをChatGPTに聞いたらおもしろそう」といったアイディアや、仕事中にデザインについて聞いてみたいことなどが思い浮かぶようになってきたため、そういったものを書き留め、あとからひととおり聞いたりしました。

今後は「アシスタントがたくさんいる世界」に デザイナー・富浦さん流、ChatGPTや生成AI活用の心得|企業で働くクリエイター向けウェブマガジン「CreatorZine(クリエイタージン)」https://creatorzine.jp/article/detail/4029?

ChatGPTにメールの文章を書かせてみると、少なくともフィッシングメールの文章よりも、はるかに自然な文章を書く。私はChatGPTの社会的な可能性を、攻撃者がどう利用するのかを注視している。ChatGPTを使えば、巧妙な文章を書くスキルがなくても、特定の企業や個人になりすますことが非常に簡単にできてしまう可能性があるからだ。

ChatGPTの「まるで人」の自然さが生み出してしまった“次世代の脅威”とは?:
「ChatGPT」が引き起こすセキュリティの新たな課題【第2回】TechTargetジャパン セキュリティ
https://techtarget.itmedia.co.jp/tt/news/2302/27/news11.html

以上のような事例を見ると、「正解との比較」を人間側ができない領域、逆に言うと「どう回答してもある意味正解」ということに対して、まずます平均点の答えを出させるのには有効ということです。

AIなのに「答えがあること」より「答えが無いこと」の方がマシ

というのは非常に興味深いです。

(2) 人間の回答を「正しく」書き直させる

もう一つは、

人間が先にタタキ台を提示し、それをAIがブラッシュアップさせる

という使い方です。

ChatGPTでできることは多岐にわたる。例えば次のようなことだ。

文章の加工
・文章の要約
・「だ・である」調と「です・ます」調の間の変換
・Wikipedia風の文章の出力
・特定のキャラクターの言い回しへの変換
作業効率化
・箇条書きから文章の作成
・文章の添削
・記事や小説の執筆補助
・文章からのスケジュールやタスクの抜き出し
・シチュエーションに合った定型文の出力
・問題点の洗い出し
・ブレーンストーミング
外国語関連
・翻訳
・外国語の文章の文法チェック
・外国語の会話の練習相手
プログラミング関連
・文章で指定した処理のコード生成
・コードからのドキュメント生成
・コードからのテスト生成
・コードのリファクタリング
・データベースのテーブル設計

「先生」ではなく「秘書」、ChatGPTのでたらめ回答を克服する使い方とは
| 日経クロステック(xTECH)
https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/02380/030600003/?

こちらは、人間が書いたことを修正させる前提ですが、

AIが(文字通り)機械的に直してくれるので人間にストレスがない

というところはメリットでしょう。

いずれにしても、不正確であることを「使わない理由」にすることは簡単です。しかし、そんなやらない理由、やりたくない理由を考えることは不毛です。確かに不正確な道具だが、どうやったら使えるのか?楽になるのか? を考えて仕事をしていきたいものです。

うそをうそと見抜けないと自動生成AIを使うのは難しい #一枚絵図

(この項終わり)


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