はじめに
こちらのnoteでは「ChatGPTを使うと、デジタルの開発は大きく変わる」という記事を書いております。
いまや、ChatGPTだけでなく、Stable Diffusionのような画像生成AIも含め、これらを紹介する記事や動画が非常にたくさんある状況です。そうなると、当然「業務に活用したい」と思うのは自然なことだと思います。「デジタル技術を有効活用して業務効率化を実現する」という字面だけを見ると、社内におけるDXの取組と親和性が高そうに見えます。しかし、もしこれを本当に言い出したとしたら
「確かに面白いけれど、うちの会社ではできない」という声
が社内で聞こえないでしょうか?
これは新規事業の話ですが、こういう姿勢を見せる上層部が出てくると、せっかく新しい技術・ツールが登場しているのに、それを業務に使おうという話はいずれなくなってしまうものです。これは非常にもったいないと考えています。そこで、この点について、事例を紹介しながら考えていきます。
ChatGPTのアウトプットは「不正確」、だからこそ活用すべき
まず、そもそもChatGPTは業務に活用すべきなのか?という点についてですが、これは以下の記事が非常に参考になると思います。
この記述はとても正確に自動生成系AIのポイントを押さえています。一言で言うと
人間が行う作業をラクにしてくれるかもしれないが、不正確かもしれない
というものです。
うそはうそであると見抜ける人でないと(自動生成系AIを使うのは)難しい
これはとても有名なインターネットミームですが、2000年の言葉だそうです。
しかし、この考え方はいつだって重要です。それが、自動生成AIであっても。
たとえば、ChatGPTに、私の趣味である「(将棋を勉強するのに)良い問題集を教えてください」と聞いてみます。
ChatGPTはすぐに5つも紹介してくれました。が、ここで一つ問題があります。
この5つのいずれも実在しない書籍
なのです。
確かに、ここで「著者」とされる方はすべて実在のプロ棋士で、どなたも複数の書籍を出されています。しかし、その説明文は(将棋に少しでも興味がある人が読めば)どれも違和感ばかりです。たとえば、将棋の問題集を「将棋パズル」と呼ぶような言い方はしませんし、書籍4については、その「著者」とされる鈴木大介九段のところから違和感です。将棋ファンに「鈴木大介と言えば?」と聞けば
などとは言うでしょうが、鈴木九段に詰将棋のイメージはありません。
もう一つ、AIに将棋に関するイラストを描かせてみました。
これの絵に関しては「残念」の一言なのですが、これはおそらく生成に使うDBの問題で、
将棋 → 英語で“Japanese Chess” → Chess をもとに画像生成
というプロセスを経たためそうなったのでしょう。いずれにしても「将棋の駒」というものが正しく理解されていないように見えます。
おわりに ~ 敵を知り、己を知れば
このように、ChatGPTのアウトプットは確かに不正確なところがあります。「不正確である」という点に懸念を示すような企業であれば、この時点で「だから利用は止めよう」となるかもしれません。しかし、本当にそれでよいのでしょうか?
私が考えるに、現状の自動生成AIは二つの方向性で使い方が考えられます。
(1) 曖昧な質問に対する無難な回答をさせる
一つは、
正解がないような曖昧な質問だとそれなりに回答を作る
という性質をうまく利用するものです。
以上のような事例を見ると、「正解との比較」を人間側ができない領域、逆に言うと「どう回答してもある意味正解」ということに対して、まずます平均点の答えを出させるのには有効ということです。
AIなのに「答えがあること」より「答えが無いこと」の方がマシ
というのは非常に興味深いです。
(2) 人間の回答を「正しく」書き直させる
もう一つは、
人間が先にタタキ台を提示し、それをAIがブラッシュアップさせる
という使い方です。
こちらは、人間が書いたことを修正させる前提ですが、
AIが(文字通り)機械的に直してくれるので人間にストレスがない
というところはメリットでしょう。
いずれにしても、不正確であることを「使わない理由」にすることは簡単です。しかし、そんなやらない理由、やりたくない理由を考えることは不毛です。確かに不正確な道具だが、どうやったら使えるのか?楽になるのか? を考えて仕事をしていきたいものです。
(この項終わり)