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「仕事が忙しい」と言っている人、実はそんなにラクをしたいとは思っていない説

はじめに

以下のような記事がありました。

「驚かれるかもしれませんが、今やっている方法よりも効率的な進め方を提案した場合、感謝されると思いきや不機嫌にされることは意外に多いです」
(中略)
元山文菜(以下、元山):業務コンサルという仕事をするなかで、アナログの作業をデジタルに置き換えるデジタルシフトや、単純作業をロボットに任せるRPAなどを提案することは多いんです。もちろん提案するからには、時間効率とコストをきちんと勘案したうえです。
人によっては「一日がかりだった仕事が5分程度で終わるようになった」ということもあるため、会社にとっても担当にとっても嬉しいことのはずなんですが、それでも仕事を進めていくなかで、時に「今まで通りのやり方がいい」という声をいただくことがあります。理屈で考えたら、反対する理由はないはずなので、同じ問題にぶつかっている方は多いだろうと思います。

「変化を嫌う、職場の老害」が生まれるワケ。仕事が“10倍効率化”しても不機嫌に | 日刊SPA!
https://nikkan-spa.jp/1893709

いまや毎日のように「DX」というキーワードを目にし、ChatGPTも出てきて、みんなで日本の生産性をさらに上げよう!というメガトレンドは、いまや日本どころか世界中巻き起こっているはずなのに。それなのに、なぜ「今まで通りのやり方がいい」ということになってしまうのでしょうか? 今日はこの点を考えていきます。

そもそも人は仕事のやり方を変えたいと思ってない

そもそも、ヒトは面倒なことは嫌で楽をしたいと口では言うのですが、ここでいう「面倒」とは

今の環境を変えることも含まれる

のです。

――なぜ非効率的な仕事を守ろうとする方がいるのでしょうか。
元山:先にもお話しした通り、人間は変化が苦手です。心理的ホメオスタシスと言いますが、私たちには本能的に「現状を維持したい」「変わりたくない」という感情が備わっているのです。だからこそ、その人の抱える「怯え」をくすぐってしまうと人は変化を制御するために一気に抵抗勢力化します。

「変化を嫌う、職場の老害」が生まれるワケ。仕事が“10倍効率化”しても不機嫌に | 日刊SPA!
https://nikkan-spa.jp/1893709

この記事では、書類やExcelについての扱いが書かれていますが、これ以外にも「非効率な業務」の代表格としてFAXがあります。しかし、このFAX、

何と日本だけでなく、世界中で未だに残っている

というのです。

1960年代半ばに「Magnafax Telecopier」としてビジネスにおける有効な情報技術となったFAXは、その前の「Selectric typewriter」や後に登場するフロッピーディスク同様、当時の技術では驚異的なツールだとして脚光を浴び、効率化やコスト削減を実現する必携の革新技術だった。
それから50年以上たった今、より速く、より安全で、よりアクセスしやすい通信手段を、全てのオフィスワーカーが気軽に使いこなしている。
それでも、プリンタの近くやコピー機の中、あるいはオフィスの冷水機の近くでFAXを見つける機会はまだある。

「FAXまみれ」は日本だけじゃない 固定電話回線が大好きな英米の事情:
CIO Dive - ITmedia エンタープライズ
https://www.itmedia.co.jp/enterprise/articles/2212/07/news010.html

2022年にもなって、いまだにFAX?と感じる方も多いかもしれませんが、このような環境を変えたくないと思うのは世界共通だというのです。これも、すでに慣れている「FAXによる業務」から仕事のやり方を変えるのが面倒だからです。

「DXすると工数が増えるからやりたくない」

一見意味が分からないフレーズですが、これは事実です。何故かというと、

自社のDX化に直接的な影響を受けるのは経営トップ層ではなく、現場層

だからです。

本来、人間の本質は変化を拒むことが強いため、様々な理由をあげて変化が起きないように反応してしまうものです。換言しますと、大半の場合は「できない。」ではなく、「やりたくない。」という気持ちが先行してしまい、個人最適な考えを選択します。しかしそれでは組織全体をみた全社最適なDXは実現できません。次節の成功要因3にも関連しますが、自社のDX化達成後のビジョンや現場層の方々にとってのメリットを分かりやすく描写し、行動を喚起させることも非常に大切です。

自社のDX化を成功させている企業・組織の共通項は何か。
現役DXコンサルタントが解説 | 株式会社GeNEE
https://genee.jp/contents/success-factor-dx-project/

現場の方はバカではないので、今の仕事のやり方がどうやらベストではなさそうだと頭ではわかっているのです。しかし、

それを言うインセンティブが働かないので、口では「できない」と言う

のです。それはたとえば「それを言うと怒られる」とか、「じゃあオマエが率先してシステムを導入しろと押し付けられる」とか、いろいろでしょうが、本音では「そういうのを含めた対応まではやりたくない」し、

結局やらない方がトータルで得

だと判断しているだけなのです。なので、やりたくなるようなインセンティブの設計が何よりも重要だとここでは書いているのですね。

おわりに ~ 「怠慢は美徳」を伝えなさい

今回は、従業員にとっての「仕事がラク」とは、業務量が減ることだと思われがちだが、実はそうではなく

「これまで通り」であること(量は関係ない)

ということを書いてきました。また、これをぶち破るにはインセンティブが必要ということも書いてきました。

ここでインセンティブの案の一つを示します。それは

「『怠惰』であれ」と伝え、『怠惰』であったことを評価すること

です。

プログラマーの三大美徳という言葉をご存知でしょうか?

プログラマは、プログラムに処理を行わせるために頭を使いますが、それは

プログラマ自身が退屈な仕事から離れるため

です。これは、もしかしたら「ラクをするのは後ろめたい」という価値観と逆かもしれません。

これはもっと言うと、子供の頃から

「忙しくしている方が褒められる」「忙しくしてないと怒られる」

という環境にいたからかもしれません。

DXが進まないのは「暇があるなら、手を動かせ」と言われて育てられたから? #一枚絵図

肝心なことは成果を出すことであり、その成果はプログラムやAIで出したって構わないはずです。デジタル活用で一番考えるべき意識改革は実はこの点ではないかと考えております。もっと言えば、DX人材教育と称して行うものはPythonの書き方よりもむしろこちらではないかとすら思います。

いずれにしても、いますぐやるべきことは「便利ツール」を作るよりも、

「そもそもそんな業務止めようぜ」と言って、実際に止めてしまうこと

です。これができない限りDXは実現できないと言っても過言ではありません。

(おわり)

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