見出し画像

写真は国語

海外の仕事をしていると、現場で「That makes sense」とか「It works」がよく使われるのに気付きます。それぞれ「筋が通る」とか「うまくいく」というような意味です。つまり、状況からの入力と媒体への出力の答えとして、その写真が、意味をなしたり納得できるか、機能したり効力があるか、というようなやりとりが交わされるのです。

反対に言うと、筋の通っていない写真は、あまり評価されないのだという実感があります。意味不明では使い物にはならない、というようなシビアなプレッシャーがあるのです。撮影者には、その場で瞬時に、伝えるべきことを理解し、状況、空間、対象の関係性をすべてを把握したうえで、最良の「要点」として、適切な距離と構図、タイミングを見つけ出すことが求められているのです。

「美しい」写真であることは当たり前で、そのうえでいかに筋を通せているか、が重要とされるのです。意図を汲み、なおかつ想像の余白を残し、さらにデザインにどう落としこまれるかまでも考慮しなければいけません。たった一枚ですべてを表せるように捉えることは、特にドキュメンタリーやジャーナリズムの分野において求められる能力のはずです。

さて、写真は、「国語」に似ていると思いませんか? つまり、ある文章の要点を即座に掴み、作者の意図を理解し、客観性を持ちながらも主観を交えて簡潔に伝える術、というような。それは国語を学ぶうえで必要な読解力に似ていると思います。本や詩を読んで理解し誰かに説明できることは、撮影における答えの導き方のヒントになると思っています。

雰囲気のある写真、感覚的な写真、特に意味や意図や伝えたいことがあるわけではないけれど気持ちが良いと感じられる、それを楽しめるのも写真の良いところのひとつだと思います。一方で、最小限で最大限の情報を表そうとすること、この考え方は海外でのお仕事で学んだ気がしています。

優れた写真家には優れた文章を書く人がたくさんいるように思います。世界をどのように捉えて、その人なりに表現し伝えられるかは、写真や言葉に共通するのかもしれません。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?