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私が撮りたかった女優展のこと、その1

私が撮りたかった女優展 II』のために堀田真由さんを撮らせていただきました。それにともない『コマーシャル・フォト 2020年3月号』にて本展についての記事が掲載されています。ここでは誌面の都合上、掲載されなかった答えの全文を公開してみます。

堀田真由さんを被写体として選んだ理由
ポートレートを撮るうえで大切にしているのは「目」です。初めて堀田さんの目を見た時にいいなと思ったのが理由です。柔らかだけれど強いというか(それは「彼女自身」でもあると撮影したあとに気づきました)。あと信頼している人に「濱田さんが撮った堀田さんを見てみたい」と言われたことも大きかったです。誰を撮りたいという自分の気持ちも大切ですが、そういう「ファン目線」のような意見に間違いはないと思ったので、堀田さんにお願いしました。

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撮影テーマについて
テーマは決め込みませんでした。お仕事だとそうはいかないのできっちり準備しますが、今回はより自由な発想で挑めたのでそうしました。1回目のロケーションは快晴の芦ノ湖。東京から車で2時間で、遊覧船にも乗ったので強いて言えば小旅行、それがテーマとまでは言えないですがひとつの気分になっていると思います。2回目は雨の渋谷。こちらは一方で歩ける距離の中だけで撮影しました。なのでより身近な気分がでたと思います。結果的にいろんな意味で対照的な画が生まれて堀田さんご自身の表情や彼女を包む景色に幅がでたと思います。

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そのテーマはどうやって決めましたか?
テーマを決めなかったのはそれが苦手というのもありますが、撮影中に移ろう風景と堀田さんの表情の変化、そこから生まれる自分自身のひらめきに期待していたからです。できるだけ飾らない自然で素のように見える写真が自分のスタイルなので、ロケーションという大枠だけ用意して、制限をつくらず即興で撮りました。

女優を撮ることについて意識したことはありますか?
俳優は演じることが仕事だと思いますが、どこからが素でどこからが演技なのか、そういう部分を曖昧にできたらと思って撮っています。それは今回に限らず普段から同じです。圧倒的な何かを撮るというより、その曖昧さやアンバランスさみたいなものを、丁寧に切り取ることで、(これがもっとも大切なことなのですが)見ていただいた方のなかでゆっくりひとろがっていくものにできればいいなと思っています。

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印象的な点、苦労した点、コミュニケーションなど
苦労はなかったです。というのも、今回はゴールがきっちり決まっている通常のお仕事と違って、よっぽどのミスがない限りどんな写真でも正解になり得るからです。程度の差はありますが撮ればどれもOKのつもりで、その話は事前に堀田さんやスタッフのみなさんにも共有していました。もちろん撮影中に会話はしますが、あえてあまり踏み込まないようにしています。気持ちも実際の距離もすこし引いた視点を持つように心がけています。これは撮る人、撮られる人という二者だけの関係の写真にしたくないからです。ただ、ぐっと寄ったりもして緩急がつくように気をつけました。芦ノ湖では思いつきで遊覧船に乗ったり、車で走りながら見つけた風景の中や、休憩でふらっと入ったお店で撮影させてもらったりたと、山と水辺という豊富な色味と風景の表情のなかでゆったりと堀田さんの変化を追えたのはとてもよかったです。

撮影しての感想など
すべてアドリブで次の動きも誰もわからないなかで進んだ撮影でしたが、それに対して的確にかつ柔軟な状態で写ってくださった堀田さんの瞬発力や理解力、そして天性の勘が素晴らしく、とても相性がいいと感じてました。またご一緒できればと思っています。

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私が撮りたかった女優展 II
2020年2月25日(火)〜 2月29日(土)
11時〜19時(最終日のみ18時まで)
Gallery 5610(東京都港区南青山5-6-10)
入場料 500円

晴れの芦ノ湖と雨の渋谷。光と影、風と土、空と水、移りかわる景色のなかで堀田さんはいつも眩しく輝いていました。そこに写る彼女の表情や姿は、人として、俳優として、そのあいだをグラデーションのように揺れ動きながら、それでもなお強さを感じさせるのです。撮影を終えた今、そのしなやかさが堀田さんの魅力なのだと気づきました。

濱田英明


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