『変なこと言うのも大事』久保利英明×クリスティーナ アメージャン
久保利英明×クリスティーナ アメージャン(一橋大学 大学院 経営管理研究科 教授)2021年3月対談 vol.2
『私、生きてる価値ないじゃない』
久保利「日本人ってなんかこう、みんな周りを見て、誰かに合わせて一緒のことやらないといけないみたいに思ってるけど」
アメージャン「先生、あんまりそう思わないでしょう?みんなと同じ事しなきゃいけないとか、みんなと同じこと言うんだったら、私、生きてる価値ないじゃない。いつもそう思ってます」
久保利「思うよね」
アメージャン「だから、みんな同じこと言ってるから、私がちょっと違うこととか」
久保利「そうそう」
アメージャン「違う見方とかしないと、私の価値が」
久保利「価値ないよね」
アメージャン「ないと思います」
『変なこと言うのも大事』
久保利「ほんとそう思いますよ。で、それがまた次々と出てくるから偉いよね。アメ―ジャン先生しか言わない(笑)」
アメージャン「(笑)そんなことない」
アメージャン「でも、やっぱり、変なこと言うのも大事でしょう」
久保利「大事。人が言わないことを言うって大事なことですよね」
アメージャン「変なことを大事だと思いますね。(笑)空気読めないとか」
久保利「空気読むって言うのは、英語であるんですか、そういう言い方って」
アメージャン「英語をもう忘れてきましたけど」
久保利「アルメニア語にないんでしょ」
アメージャン「(笑)アルメニア語にはない。アメリカは日本ほどじゃないんですけど、周りをみて周りをハッピーにするような」
久保利「あーなるほど」
アメージャン「言うでしょ。上の人の」
久保利「ボスの機嫌をとるという」
アメージャン「そう」
久保利「そっか」
アメージャン「日本ほどじゃないし、やっぱり自分は自分の独特の貢献がないと」
久保利「そうですよね」
アメージャン「なんでここ来てるとか、なんでお金もらってるかとか思われる」
久保利「役に立ってないってことですよね。それはそうだと思うね。だからそういう意識っていうのはいつも持ってる。取締役会って経営者の集まりじゃないですか」
アメージャン「うん」
久保利「みんなと同じですと言ったら、お前いらないよっていう話なんですよね。そこがどうも日本人ってみんなと一緒で黙ってれば、それなりに偉くなってハッピーになれるっていう、これすごい誤解だと、僕は思うんですけど」
アメージャン「うーん。これからそれはもうできない」
久保利「できませんよね」
久保利「老人はそれなりに頑張って、老人だけど私はこう思いますっていうのをしっかり言って、叩かれる時はしっかり叩かれたらいいと思うんですよね。
叩くことによってこの国良くなることもあるし、意外とあの爺さんの言うことはまんざら間違いでもないぞっていう話があるなら、それ、年の功ってやつで意味があるよねと。だから物を知らない無知蒙昧だというような人は、ただの老害で終わっちゃうんだけど」
アメージャン「(笑)日本は、日本の一つの問題は、英語でageism(エイジイズム)って言うんですけど、この歳だからと言うんですけど、十分使ってないと思います」
久保利「ですよね」
アメージャン「老人を。ちょっと歳の方の考え方を」
久保利「考え方ね」
アメージャン「creativityとかいろいろありますけど、すごくもったいないし」
久保利「もったいないですね」
アメージャン「いま、日本の人口を考えたら」
久保利「もう、どんどんね(笑)」
アメージャン「(笑)どんどんね、だから、ほんとにそうもったいない。日本のイメージは、おじいさん起業家がもっといるといいんじゃないですか、70代の」
久保利「いいですよね」
アメージャン「多様な経験もあるし言いたいことも言えるし、お金も多分あるし、ネットワークもあるから」
久保利「持ってるでしょう」
アメージャン「一番起業に向いているんじゃないかなと。だからほんとうにもったいない」
久保利「アメ―ジャンさんの前に対談をした、堀さんというホリプロのファウンダーですけど、この人89かな。先月対談したんですけどすごいですよ、面白いですよ、若々しいです。合氣道とか氣というのはすごく大事だ。氣というのはなんだというので関心を持って80歳の時に合氣道を始めたと」
アメージャン「すごい、すごい」
久保利「ね(笑)そういう人が何人かいらっしゃる。そういう文化っていうか、チャレンジングなことって、日本人は持ってないわけじゃないと、僕、思うんですけどね」
アメージャン「そうですね、着物の世界もそうですね」
久保利「はい」
アメージャン「着物作ってる、染色してる偉い先生、80歳とか90歳とか」
久保利「そうだうよね」
アメージャン「この着物、この作家さん若いけど、60になったっていう」
久保利「(笑)」
アメージャン「若いんです。80とか、そのときやっとこの創造力」
久保利「腕がついてくる」
アメージャン「腕が、うん」
久保利「それくらい何十年もやらないと、職人芸にならないんですよね」
アメージャン「日本の昔からそういうことは」
久保利「ありますよね」
アメージャン「あったのに、なんでそういうことを活かさないかっていうのは不思議で」
久保利「浮世絵の画家だってそうですよね(葛飾)北斎とかみんな、あれ」
アメージャン「90」
久保利「90いくつで描いてるでしょう」
アメージャン「ねえ」
久保利「若々しい絵ですよ」
アメージャン「すごいです」
久保利「だからそういう風に考えると、年をとったから駄目だとか年寄りを全て老害だとかそういう風に言うべきではないと思いますが、しかし逆に言うと、面白くもおかしくもない、ためにならない人は、別に若かろうと老人だろうと」
アメージャン「関係ない」
久保利「ダメなんだよね」
久保利「よーく見ると個性ってすごくあるんで、そこに着目をしてみるべきですよね。確かに。アメ―ジャン先生は、なんでそうなんだろうかとご自身でお考えになったことはないですか」
アメージャン「ないんです。自分はそんな変わってると思わないんです」
久保利「(笑)」
アメージャン「普通だと思います(笑)」
久保利「でも外国人でご自身で着物をそれだけ着こなせる人って普通じゃないと、僕思うんです」
アメージャン「(笑)着物はちょっと普通じゃないと思いますけど」
久保利「着物はお好きなんですか」
アメージャン「大好きです」
アメージャン「私、昔から洋服は好きだったし、織物とか編み物、刺繍とか、そういう手を使うhobby、たくさん、編み物とか大好きで、布を、昔から母もそうだったし、綺麗な布も大好きで、高校大学まで結構、自分の洋服、自分で作って」
久保利「縫って。ほお」
アメージャン「縫い物も好きだし、だから、着物が好き」
久保利「好きなんですね」
アメージャン「布の」
久保利「感触」
アメージャン「とか、色とか好き、なんとなく好きだし。けど、着物、もう少し深くなったら、やっぱり多様性ですね」
久保利「うん、うん」
アメージャン「日本の場所、沖縄も京都も違うし、新潟のいろいろ、越後上布」
久保利「越後上布とかね」
アメージャン「違うし、着物で、日本の面白さが」
久保利「地域性を含めてね」
アメージャン「地域性もそうだし、結構、変わった作家さんとか」
久保利「いらっしゃいますね」
アメージャン「すごい人がいるし、着物たくさん買ってるから」
久保利「(笑)」
アメージャン「よくいろんなとこ行って、みなさんと話して」
久保利「へえ」
アメージャン「面白い。取締役会は、取締役会でいろいろ言うんですけど、日本のこと何もわからないとか言えないでしょ、着物姿見たら。こんなに日本のこと好きだし」
久保利「そうそうそう」
アメージャン「仕事の道具だし」
久保利「それはかしこいね(笑)」
アメージャン「(笑)最初は、着物はすごく綺麗だし日本のnational clothingだから、ちょっと着たいなと思っただけだったんですけど、段々」
久保利「深みにはまっていって(笑)」
アメージャン「(笑)ほんとにもう」
久保利「(笑)相当、投資もしてるでしょ」
アメージャン「(笑)いやそれはちょっと」
久保利「(笑)でも、着物ってすごく長い間持つし、価値がどんどんあがっていくし、もう作ってる人はいなくなりますよね」
アメージャン「そうそうそう」
久保利「絶対いいと思いますよ。しかも着ている楽しみができて、かつそれがね、財産になっていくっていう、すごいですよね」
アメージャン「財産にならないと思いますよ」
久保利「ならない(笑)」
アメージャン「(笑)」
久保利「まあ、いい人の染めたものとか」
アメージャン「いい人のものだったらね、いいかもしれないですけど」
久保利「絶対そうなりますよ、高いけど」
アメージャン「着物も日本人の、なんていうかしこいことから、一生三代」
久保利「三代ですよね」
アメージャン「来て捨てることじゃない」
久保利「ない、ない」
アメージャン「本当に何回も何回も来て、なんかあのいろいろできるでしょう」
久保利「できます」
アメージャン「作り直して、みんな捨てないんでしょ」
久保利「捨てません」
アメージャン「最後は座布団にするとか」
久保利「座布団にする」
アメージャン「布団になる」
久保利「お財布を作ったりね、きれの財布を作ったりとか、いろんなことを最後まで利用するんですよね」
アメージャン「日本のもったいない」
久保利「精神」
アメージャン「精神もわかる、ほんとにわかるんですね、着物って、ほんとにnoways、だからいま、みんなSDGとが新しいこと言ってるんですけど、着物ってもともとのSDGじゃないんですか」
久保利「そうですね」
アメージャン「商品のイメージは、たくさんお金出して買うけど、丁寧」
久保利「丁寧に使う」
アメージャン「大事に使います」
アメージャン「学生びっくりです、着物のことも知らないし、着付けもできないし、簡単な座禅とか、座禅って何。とか」
久保利「知らないですよね」
アメージャン「お茶のこととか、ほんとうに自分の国の」
久保利「文化そのものを知らないでしょう」
アメージャン「文化、知らないんですね、着物はきついとか大変だとか、そういう悪いことしか知らない。残念なことです」
久保利「なるほどなあ」
『好きな食べ物』
久保利「食べ物は、何がお好きなんですか」
アメージャン「カキフライ」
久保利「カキフライ。ほぉ、どうですか、日本のカキ」
アメージャン「美味しい」
久保利「美味しい(笑)」
アメージャン「(笑)なんでこんなにカキフライ好きか」
久保利「へえ」
アメージャン「食べるの大好きですけど」
久保利「特に、カキフライが」
アメージャン「大好き」
久保利「いいね。カキフライは美味しいですよね」
アメージャン「美味しい」
久保利「生ガキよりも、カキフライがいい?」
アメージャン「はい、カキフライがいい」
アメージャン「カキフライ、ステーキ」
久保利「はい、はいはい」
アメージャン「好き」
久保利「肉ね」
アメージャン「肉、大好き」
久保利「やっぱ、そこだよね」
アメージャン「(笑)」
久保利「体力の根源は」
アメージャン「カキとステーキ」
久保利「元気にやっていくためには必要なファクターじゃないですか」
アメージャン「(笑)かもしれない」
【Christina L. Ahmadjian(クリスティーナ・アメ―ジャン)PROFILE】
一橋大学大学院経営管理研究科経営管理専攻教授
アルメニア系アメリカ人の父と、スウェーデン系アメリカ人の母を持つ。
ハーバード大学卒業。日本企業での勤務経験を経て、
スタンフォード大学ビジネス・スクール経営学修士課程修了。
カリフォルニア大学バークレー校ハース・スクール・オブ・ビジネス博士課程修了。
現在、日本取引所グループ、住友電気工業、アサヒグループホールディングス等、複数の企業の社外取締役を務める。