植物の全体性と個別性から見えてくること。

ハウス内で単一植物を均一に、育てるには全体性を見ながら管理します。

具体的には、サンプルで幾らかの個体の生育状況(草丈や葉の大きさなど)を調査し、平均値を見ながら光や温度、水、二酸化炭素などのパラメータを調整していきます。
個体差を無くし、均一にするためには必要量より少し多めの水や肥料を与えて、全体的に足らなくなる状況を無くします。
また、温度にムラができないように気流を制御することなどもあります。
均一に光が入るハウス構造にすることも挙げられます。

全体最適をとるためには栽培環境を整えることが考えられますが、それでもやっぱり若干の個体差が発生します。

ハウス内には、優等生もいれば、ついていけなくなってしまった子たちもいます。その場合、個体それぞれに適した植物体の管理をしていきます。
例えば、樹が旺盛な栄養成長に傾いている場合は、葉をとり光合成量を減らしながら、着荷数を増やして光合成同化物(葉で作られた糖)が流れる先を作ってあげることで、樹が落ち着きます。
逆に果実が多く樹が弱っている場合は、摘果してあげることで、樹を回復させることもできます。
病気が発症している部位は取り除いてあげることで広がるのを防ぐことができます。

この時に狙うべき環境管理は、全体の重心点に焦点を当てるということです。
ついていけない子たちに管理の焦点を当ててしまうと、優等生が退屈してしまってハウス群落全体として制限がかかってしまいます。

また、全体の平均より高めの重心(2:1按分点)に設定することで、ハウス群落自体が飽きてしまわず、より高い生産能力を発揮してくれます。

この具体例として、午後以降の昼寝現象を防ぐための転流促進温度などの考え方があります。
植物は、低温化では、光合成速度よりも転流速度の方が遅いため、午前中に活発に光合成していても、遅いベルトコンベアーでは渋滞してしまい、午後以降生産機能を発揮してくれません。
本来であれば、純光合成速度=総合光合成速度ー呼吸量により最適な温度管理の値が出ますが、転流不足により、制限がかかってしまいます。
実際の狙う光合成最適温よりも若干高く管理することで群落全体として昼寝現象を起こさず、生産性を高めることができるという訳です。

全体の大枠の環境管理により、群落全体を。
ついてこれていない個体は、個別に植物体で管理。
効果の違いについてパレートの法則が当てはまります。
前者は8割
後者は2割
くらいの差があるようなイメージです。

全体を鳥の眼で重心を見分けながら、
個別を虫の眼でモニタリングする姿勢が必要です。

また、ハウス内にムラがあることで今後動くであろう全体性を予測したり、限界値を教えてくれたりもします。
例えば、ハウスの端は乾きやすいため、乾燥するシーズンはハウスの端がハウスの全体の今後の環境ともいえます。
また、暖房機に近いエリアは温度が高く生育が早い傾向にあります。どの温度までなら問題なく生育するかということも示唆してくれます。
他にも谷下の水分率だったり、培地による、保水量の違いだったり考察できるポイントはいくつかあります。

傾向として、少しでも違う傾向の株が発生するということは、全体としてその株の方向に向かっている可能性があります。
特異な個体が発生している場合は、ハウス内全体での1つのシグナル(信号)を出している感覚です。
特異な個体は、条件が揃って発生しており、ハウス内で見れば潜在的な予備軍が多くいることがあります。
植物から出されるシグナルを早めに見分けて、適切に対処していくことが、重要になってきます。

ハウス内の環境ムラ(個体差)を逆手に取って、比較対比することで、同じ一作でも何作分もの経験値を手に入れることができます。

さて、植物の世界でのお話でしたが、私たちの所属する組織でも似たようなことがあろうかと思います。

植物から学んだこと抽象化して、学んだことを生かすとすれば、以下の通り。

①成果を出す力学
大きな方向性や組織体制、環境:個性による個別対応=8:2

②組織に現れるシグナルは、氷山の一角。
潜在的に広がる可能性のある膿のようなもの。

③環境ムラによる個性は逆手にとる。違いを楽しむことで新しい発見を得る。

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