逃避の散歩 26.東急目黒線(目黒駅から多摩川駅まで)
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なんとなく、渋谷から山手線の線路沿いに内回り方向で歩いている。
恵比寿駅を通過し、目黒に向かっている途中でふと思い浮かぶ。
以前、東急多摩川線を歩いた時に今はない目蒲線を思い出したけど、そういえば、路線がその一部だった東急目黒線の区間は歩いたことがないなと。
そうか。ここから多摩川駅まで歩くのも悪くない。そこまで歩けば目蒲線だった全区間を踏破したことになる。
そう思った時には目黒駅前に着いていた。行きますか。
まず、いま見える出入口があるJR東急目黒ビルの右横を通るJR山手線の外回り側に沿った下り坂の道を歩く。右側に妙に浮いた建物が見えるが、そこは撮影スタジオだ。有名な話ではあるが、目黒駅周辺は品川区だ。そして、いま歩いているのも品川区だ。
最初の角を右折する。奥にはコンクリート製の防護柵が、さらにその奥は古びた工事用フェンスと撮影スタジオのセットが見える。そこまで突き当たって左折。
スタートから6分経過したところで線路が見える。この先の高架は明治通りの上を通っているので、何度かその下を通過していたことはあるが、ここから見るのは初めてだ。
坂を下って目黒川を渡り、明治通りに出る。左前にある横断歩道を渡って線路沿いに歩き、道は少し右側に曲がりつつもその先に最初の駅の姿は見えてきた。
スタートから10分経過、不動前駅を通過。
進行方向から見て左側の坂を上る。結構勾配があり、角を通るごとに線路の位置を確認しているが、はっきり見えない上に、少しずつ線路から離れているような気がする。角に差し掛かるごとに立ち止まって様子を見ているので、思ったより進めない。
4つ目の角のところで、奥に柵とスロープのようなものが見える。行ってみたらどうかと直感が働く。
柵の方へ行き左右を見ると、やはり跨線橋だった。
とりあえず、エレベーター脇の人が一人通れるくらいの階段を下りてちょっとした上り坂を進むと、通りを挟んで細い路地が見える。線路に沿っているように思えるので、そこへ進んでみよう。右側の交差点まで移動して横断歩道を渡り、その路地へ入る。余談だが、路地のあるこの通りは桐ヶ谷通りという。
おそらく、100メートルほど進んだと思う。路地を抜けると景色が開ける。
左側には「品川区 不動前緑道公園」と書かれた看板と案内図がある。それによると、かつての線路跡を利用した遊歩道だそうだ。
少しだけ人通りのある広い緑道を通り抜ける。道の幅が広いので意外と悪くない。意外と駅まであと少しと思われるところで自転車置き場が横の狭いわき道を通れと言わんばかりに通せんぼする。そのわき道を抜けたところで、一気に人通りが増え始めた。
スタートから28分経過、武蔵小山駅の東口と西口を通過。
通過の証拠写真を撮ろうとするが、人混みが酷くていい感じのものが撮れなくて四苦八苦しつつ時間が掛かる。なんとか撮れたので急いで離脱。
武蔵小山は日本で最初に作られたアーケード商店街が有名なので混雑ポイントになることは覚悟していたけれど、今度近くを通るときは人混みが少ない時間帯を知る必要があるな。
この駅の西口を離れてすぐのところ、片側2車線分はある道幅が広い道に出る。鮫洲大山線だ。蛇崩川緑道を歩いたとき、足毛橋跡を通過するときに渡った都道だ。横断歩道を渡り、武蔵小山交番の脇を抜ける。
武蔵小山緑道公園を進む。この雰囲気、この辺りの景観となじんているように感じる。住宅街を通っていた線路跡に作るのは、こういう遊歩道公園で十分だ。線路跡に無理やり商業施設をねじ込まれるのはなんか居心地が悪い。
しばらく進んだところで、また自転車置き場で道が塞がる。しかし、左側に道があるので、そっちへ進む。突き当たって左右と入り、少し直進すると右奥にロータリーらしきものが見えてきた。ロータリーの方へ進むと、茶色い建物に「西小山駅」の表示がある。
スタートから36分経過、西小山駅前を通過。
またも自転車置き場で線路跡は塞がれているので、ここで検索してみる。進行方向から見て右側を通る商店街を抜けて最初の角を左折すると、また遊歩道があるそうだ。その通りに進もう。
今度は西小山緑道か。
緑道の端までたどり着き、目の前に見える歩道で合っているのか少し不安になり、すぐ検索する。これで間違っていないようだ。この突き当たった先は左右に分かれ、線路に沿って道が伸びているようだ。
左側の道を歩いていくことにする。緩やかなスロープを下りると、すぐ階段が見える。それを上ると左側が再び下りのスロープになり、下りきると軽い上り坂に出る。坂を上りと見えてきたのは洗足駅の出入口だ。
スタートから45分経過、洗足駅前を通過。
この駅、なんとなく降りた覚えがある。そう思っていたら、その理由は出入口の柱にある案内広告ですぐにわかった。昭和大学歯科病院だ。ずいぶん昔のことだが、そこで親知らずを抜いたのだ。その後渋谷で『シックス・センス』を観て、麻酔が切れかけた口の中が血だらけになったな。
駅の左脇の道を通り抜けると、環状七号線が交差する北千束五差路交差点に出る。信号待ちをしている間に、少し先の道を検索する。それでもう大田区に入っていることを知る。
横断歩道を渡り、桜新道という線路跡に整備された遊歩道を少し進み、そこから一つ目の信号がある横断歩道を渡り、二つ目の跨線橋が見える信号でまた横断歩道を渡って線路沿いに歩く。駅に近づくにつれ下りになり、また上りとなる。
ここまで歩いて思ったのは、目黒線は地上に出たり地下に潜ったりを繰り返していて慌ただしいことだ。それに伴って上り下りが連続している。勾配がゆるいとはいえ、意外と膝に来ている。
スタートから58分経過、東急大井町線と合流する大岡山駅前を通過。病院と直結している駅は珍しいなと思ったり。
大岡駅前交差点の横断歩道を渡り、そのまま線路沿いに先を進む。また長い下り坂になると同時に、歩道がかろうじて一人分ほどの幅しかなくなる。しかも、今回のルートでは一番長い下り坂だ。線路を見ると、東急大井町線と並走しているが、やがて東急大井町線は高架へ上り、緑が丘駅方面へ進む。
途中で、おもむろに見た東京工業大学の外壁につけられている街区表示板で、いつの間にか大田区から目黒区を歩いていることに気づく。
スタートから1時間5分経過。坂を下り切ったところで、呑川の暗渠と交差する。東急多摩川線の終着駅である蒲田駅の近くを通っているあの呑川だ。奥に見える大井町線の高架の手前に丸い屋根が見えるが、撮影をした場の背後と繋がっている地下道の出入口だ。その先から開渠となっている。
先を進もう。数十メートル歩いたところではじめて踏切の前を通過する。目的の多摩川駅まで残り3駅という道のりの半分以上過ぎたところでだ。その直後、ほんの少し進んだところで街区表示板を見て、もう世田谷区に入っていることに気づく。目黒区とは短い付き合いだった。
3つ目の踏切に差し掛かり、道が左右に分かれる。軽くこの先を検索をすると、少しだけ遠回りになるが踏切を渡った側に車両基地があるようだ。面白そうなので、そっちへ行こう。
踏切を渡り、最初の十字路で「奥沢大蛇通り」と書かれた案内標識を見つつ左折。しばらく進んで6つ目の角で左側を確認してから左折して直進。
目黒線の車両基地に出た。車両が並んでいる奥側に奥沢駅の駅舎が見える。そのまま直進して突き当りを右、最初の角を左に入って自由通りに出る。左側を見ると踏切が見えるので直進。歩道が狭いこともあって、武蔵小山駅周辺に比べれば人は少ないのに妙な窮屈さがある。
以前、自由が丘の混雑をいかにして避けるかを考えながら歩いている時に何度か自由通りのこの辺を歩いているので覚えている。今回のルートは、歩いたことがある道を交差するので、それぞれがどう横で繋がっているかわかって楽しい。
こちら側からも車両基地の様子が見えるなと思いつつ、交番の前を抜けて踏切へ。
スタートから1時間16分経過、奥沢駅前を通過。
踏切を渡り、横断歩道を渡ってまた線路沿いを進む。少し前まで青空が広がっていたのに、ここから曇り空になってきた。
奥沢駅を越えてから最初の、数えて6つ目の踏切を越えたところで線路から離れるように道が左に曲がっている。ここまで検索はしていなかったが、直感で線路の方向を意識してジグザグに進めば線路沿いに歩けるのではないかと思い進む。行き止まりに入ってしまったら、その時に考えればいい。
最初の角を右折してちょっとした坂を上ると線路が見える。そのまま、突き当りで右折できる。その方向へ進むと防護柵が見える。念のため、ここで位置とその周辺を検索し、先を視認する。選択を間違えていなかったようなので、このまま直進。
スタートから1時間25分経過、環状八号線に合流する。撮影している方向から見て奥側が砧方面なので、手前側方向を進むと下丸子のあたりで東急多摩川線と蒲田駅の手前まで並行するわけだ。
歩道橋を渡って南側に進む。線路沿いはいきなり下り坂になっていて、線路側に視線を向けると田園調布駅が見えている。下ったところで世田谷区からまた大田区になり。そしてそこから上り坂になる。
スタートから1時間31分経過、坂を上り切ったところで田園調布駅前を通過。目的地まで残り1駅。
ここから長い下り坂を進む。途中に田コロ児童公園という小さな公園がある。そこと隣のマンションのある場所は、古いプロレスファンにはおなじみの田園コロシアムがあった場所だ。
坂を下り切ると、田園調布せせらぎ公園の駐車場出入口があり、その横に歩行者用の自由通路がある。ここまで来ると多摩川駅の駅舎がはっきりと見える。ゴールまであとわずか。
スタートから1時間40分、多摩川駅東口に到着。
多摩川線を含め、これで旧目蒲線の路線をすべて歩いたことになる。
今回は、武蔵小山駅周辺だけ自分にとっての課題が残ったものの、緑道が多くて気楽に歩けるいい道だった。実は4区にまたがる路線だったということがわかったのも面白かった。帰ろう。