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逃避の散歩 12.蛇崩川緑道(その2:一之橋跡から大下橋跡)

(その1:親和橋跡から茶屋下橋跡)から続く

茶屋橋跡を過ぎると、緑道の姿は打って変わる。

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住宅の間を抜ける狭い道なのは相変わらずだが、舗装が新しく、また車止めにシールが貼られたものではなく、橋名板がついた柱が橋跡の目印となる。唐突な変わりようだ。

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スタートから29分経過、一之橋跡を通過。

先を進むと、道は先が見通せる清々しいまでの直線となる。歩くことに集中できる。

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少しだけ気分を上げていくか。脳内BGMをモトリー・クルーの『Kickstart My Heart』に変更。確実に知っている人は少ないだろうけど『シューテム・アップ』という銃撃戦しかない素敵な映画のエンディングでこの曲が使われている。他に覚えている限りでは、リブート版の『ヘルボーイ』でも使われてたっけ。

ほぼ無人に近いくらい人通りが少ないので、気持ちよく歩ける。

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スタートから30分経過、二之橋跡を通過。

辺りを見回す余裕はない。柱を撮ったら、ただ無心に歩を進めて逃避を味わうだけだ。

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スタートから31分、三之橋跡を通過。

ほんの数秒とはいえ、柱を撮るために足を止めるのがもどかしい。

よし撮れた、次行くぞ次。

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スタートから32分経過、明治橋跡を通過。

直線はまだ続く。「いいぞ、もっと先に進め」と自分の心が足に訴える。気持ちだけは加速装置のスイッチが入っている。歩きだし、機械の体じゃないけど。

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スタートから33分経過、昭和橋跡を通過。

調子よく進んでいたが、ここで水を差すような2車線道路に。右側の世田谷観音通りにある日本大学前交差点の横断歩道を渡り、続きを進む。

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これまでの気分が少し萎えてきたので曲変更。伊福部昭の『宇宙大戦争』(映画『宇宙大戦争』より)だ。これも気分が高揚して歩きが捗る。とくにJR新橋駅からJR東京駅まで線路沿いに歩くときは定番にしている。

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スタートから35分経過、昭和橋跡を通過。ここから唐突に柱の形状が細い柱から太い円柱に変わる。

そして、長い直線の続きに入る。前進前進また前進。

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スタートから36分経過、すすき橋跡を通過。

ここから再び、鎌倉橋跡から郷野橋跡の間のように、車道と並行して道幅も広くなる。

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案内図があるので、現在地を確認する。すでに橋跡を3分の2通過している。

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スタートから37分経過、中原橋跡を通過。

この橋跡からしばらくは、道に沿って桜並木がある。開花の時期にこの辺りを歩いたことはないが、それなりに人出があるんだろうな。

ここは龍雲寺通りとの交差点にあるのだが、信号が変わる前に渡れたのは助かった。

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スタートから38分経過、右手に駒留中学校がある新道橋跡を通過。

この辺りで長い直線は終わり、駒留中学校の前を通り過ぎると、その先には丘が見える。

そういえば、少し前に歩いた時は、ここから宮下橋跡まで整備工事で閉鎖されていた。なので、道の舗装が新しい。

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そろそろ、曲を切り替えたいが、いい曲が思い浮かばないな。

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スタートから39分経過、かみ橋跡を通過。

よし、丘もあって木々が多いから脳内BGMはジェームズ・ホーナーの『Main Title』(映画『コマンドー』より)に切り替えよう。気分だけはジョン・メイトリクス(吹替:玄田哲章)のように丸太を担ぎながら歩いているつもりでいる。

道は丘に沿って左に曲がっていくがやがて右へ大きく曲がる。

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そして、駒繋神社の前を通過、いや橋があるので近づいてみる。

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スタートから41分経過、こまつなぎ橋を確認。

さて、駒繋公園の横を通過するか。いやちょっと待て。

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ここは、何かの橋跡なのか? 何か名前を記したものがないか見回すが、それらしき痕跡は見当たらない。いつもこの暗渠を通るときは橋跡を意識しないので、一つでも橋跡を見逃したなら今回の散歩は失敗だ。名称シールが貼ってありそうなポイントをくまなく確認するが見つからない。

幸いにも、近くに案内図があるので確認する。

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「宮下橋跡は先だよな」と迷いつつ、やはり名称は見つからないので、橋跡でないだろうと判断。区の図書館などで記録を調べることができるならわかるだろうけど、そこまでこだわる必要も暇もない。

慎重になりすぎて、こんなところで足止めを食うとは思わなかった。

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スタートから45分経過、駒繋公園の横を抜けると同時に宮下橋を通過。ここでまた形状が一之橋跡から昭和橋跡までの柱状に戻っている。

しかし、あの何でもない通り道の確認で時間を食ったのは痛いな。

ここから、途端に道がまた寂れ、橋跡を記すものも再び車止めに戻る。これも暗渠でよくあることだ。再整備されてきれいになった区間と、かなりの時間を経て劣化したものが混在する。

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スタートから46分経過、下馬通りと交差する大石橋跡を通過。

また、ただの車止めに戻った。

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道は再び左へ緩やかに曲がる。

こういう、暗渠でよくある風景の統一性のなさを見ることは、考えようによっては贅沢なことかもしれない。なぜなら、その時にしか見れないものだからだ。

今は整備されたばかりのきれいな道でもいずれ舗装や柵は傷み寂れてしまうし、今は舗装が傷んでいるところは将来再整備されるだろう。植物が違うものに植え変わることも考えられる。もしかしたら、道幅を広げるために潰されて地図から消滅するかもしれない。

そんなことを深く考えて歩いているつもりはないが、歩く道のさりげない変化に気づいたときは、面白く感じることはある。

歩道の奥がちょっとした広場になっていて、申し訳程度のベンチと遊具が置かれ、奥が行き止まりになっているのが見える。その広場の手前に出口があり、左の歩道に出て進む。

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スタートから47分経過、足毛橋跡を通過。

ついに出た、車止めではなく鉄柵の角に名称シール。この朽ち具合がすごい。言うまでもなく、この鉄柵が先ほどの広場奥の行き止まりだ。

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中原橋跡以来の2車線道路にぶつかった。目の前の道は鮫洲大山線という都道で、その名の通り、南は品川区の鮫洲から北は板橋区の大山あたりまで続いている。

右側に交差点があるので、そこの横断歩道を渡って続きを歩こう。

あと少しでひとまず終着点に着くけど、ついでに脳内BGMを『宇宙船レッド・ドワーフ号』のテーマ(歌:ジェンナ・ラッセル)に変更しよう。イギリスのTVドラマのエンディング曲で、歌詞が「宇宙で孤独なので、南国でのんびり過ごす妄想で逃避したい」という内容で、いまの状況にぴったり。

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スタートから50分経過、ろく橋跡を通過。

駒留橋跡以来の、ガードパイプにシールが貼られているパターンだ。

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スタートから51分経過、平川橋跡を通過。

ここからまた道が左へ緩やかに曲がる。

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スタートから52分経過、砂利場橋跡を通過。

先に通った足毛橋跡にもあった、鉄柵の横に名称シールのパターンだ。

ちなみに、ここで中原橋跡から続いていた桜並木や車道との並行も終わる。

道は再び住宅の間を抜ける。集合住宅の前を通っているからか、道幅はそれなりに広い。

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スタートから53分経過、下馬通りと交差する大下橋跡に到着。

最後にきて、実はここまでありそうでなかったガードレールに名称シールのパターンだ。

ここで、世田谷区内の蛇崩川緑道は終わりとなる。

この先はちょうど下馬通りが境界となり、緑道は目黒区の道となる。

「さらばだ世田谷区、俺は越境して目黒区へ行くぜ」

(その3:大下橋跡からニ三橋跡、中目黒駅)へ続く。