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エッセイ 07 愛されるお魚
釣りをしていると、”求められていないお魚さん”が釣れることがあります。
”求められていない”というのは、”自然の生き物を相手とする罪深い遊びである釣り”の中で、たいそうわがままな言い分だと思います。
しかし、本命とするお魚さん以外が釣れた場合に釣り人は、普段の虐(しいた)げられている生活の鬱憤(うっぷん)を晴らすかのように、非道にふるまうこともあります。
釣りあげたままその場に放置したり、足で蹴飛ばして海へ帰したり、これらの行為は、お魚さんを大切にする意識を持って決してやるべきではありません。
それらの”求められていないお魚さん”には、フグやボラなどが挙げられます。
ただ、なぜこんなに嫌われているのでしょうか。彼らもどこかを改善すれば釣り人に好かれるお魚さんになる可能性はあるはずです。これから、その”どこか”を探してみたいと思います。
まず嫌われている原因として”食べられない”または”食べてもおいしくない”があります。
お魚さんにとってのこの部分は、たとえ改善したとしても食べられてしまうという、決してうれしくない結末になることは今は触れないでおきます。
フグはご存知の通り猛毒を身体にまとっています。ただ高級食材にあるように、専門家による処理を行えばおいしく食べることができます。
しかし、ただの釣りバカには捌(さば)くことはできません。
ボラは水質の悪いところで釣れた場合は、臭みが強く食べられたものではありません。しかしキレイな外海(そとうみ)で育ったボラはとてもおいしいようです。
これらは何万年かの努力と食生活の改善で、おいしく進化することが出来るかもしれません。
次に”見た目”ですが、フグの身体は小さく、お腹を風船のように膨らませる姿はかわいらしく、子供の遊び相手にもなってくれます。この点では嫌われる要素はありません。
ボラの姿はずんぐりとした身体にくりくりおめめで、正面から見ると愛嬌のある顔をしています。
ただ、このように説明するとかわいらしいお魚さんを想像されるかもしれませんが、実物を見てみると”キモイ”です。がんばったとして”キモカワイイ”が精一杯の誉め言葉です。匂いがキツいのも嫌われる原因でしょう。
ただこの部分は、たとえ見た目が悪くてもおいしく進化できれば問題ないかもしれません。釣り人は見た目のキレイな熱帯魚が釣れるよりも、おいしいお魚さんのほうを好むという習性があります。
本命のお魚さんに比べてたくさん釣れてしまうというのも、マイナス要素になります。
どんなに醜(みにく)い姿をしていても、どんなにおいしくなくても、ただ数が少なく珍しいお魚さんであれば、それだけでも希少価値が生まれます。
部屋の中で飼ってみたいという人も出てくるでしょう。
また、彼らは釣り人の大切なエサを横取りするだけでなく、針や糸を切ってしまうこともあります。ただ釣れてしまうだけなら良いのですが、道具を傷つけられると嫌な気持ちも湧き上がってきて当然です。
釣りをしていて、求めていないお魚さんを釣ってしまうというのは、完全に釣り人のエゴなのですが、本命を釣りたいという気持ちだけを持つ釣りバカは、もれなく単細胞まっしぐらです。
お魚さんの嫌われる要素のどこかを改善すれば、嫌われることはなくなるのではと考えてきましたが、ほとんどの原因は釣り人のほうにあるようです。
お魚さん自体は全く悪い部分はありません。
釣り人のみなさんは、これら外道が釣れた場合でも、遊んでくれたという感謝と共に、やさしく海へ帰してあげるようにお願いします。
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