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エッセイ 16 満足プレパレーション

1日かけて庭の草むしりをした日の夜は、身体の疲労と共に満足感でいっぱいです。きれいになった庭を見て満足し、健康的で適度な運動をしたことに満足し、家族からの感謝の言葉に満足します。

この時、心の満足感とともに、自分にとって何か成長があったのかを探ってみます。

 ・運動によって体力がついた
 ・草むしりの技術、効率が上がった

草むしりをすることにより、これらは確かに成長したといえるでしょう。
しかし、新たな知識が自分の頭の中に入ってきているわけではありません。これまでやったことのある事、覚えていることを利用して作業を行っているだけです。将来の自分のために必要な学習をして、成長しているとは言い切れません。

もちろん草むしりをすることが意味のないこと、という訳ではありません。ただ、この満足感満足してしまうことは、自分の成長をストップさせてしまう恐れがあると思います。

同じ時間を過ごすのであれば、できれば毎日新たなことを学んだり、身に付けることで成長をしていきたいものです。その成長が将来のためにつながります。しかし、身体を動かすことで満足感を得てしまうと、1日のうちでそれ以上の学習をしなくなってしまいます。それがたまにであれば、良い運動だったと意味のあることにもなりますが、毎日続いてしまうと新たな学習を得る機会がほとんどなくなります。

大人の1日の自由時間における勉強時間の平均は6分程度です。子供に比べて大人が勉強をしないのは、仕事を終えた後の心や身体の疲労からくる満足感が原因です。「今日はもう十分働いたので、あとはゆっくり休んでもいいだろう」という意識から生まれてきます。心と身体を休めることは決して悪いことではありません。ただ、この満足感によって引き起こされる学習不足が、今後も毎日ずっと続くことが危険だというお話です。

この危険を避けるために、以前から自分の中で繰り返しているアラームがあります。

「身体を動かすこと」にかまけて、「頭を使うこと」をおろそかにしないように

どうしても楽なほうに気持ちがなびいてしまいます。”勉強しなくてもいい” ”頭を使わなくてもいい” という言い訳は、仕事や作業を終えた後に手に入ります。このアラームを楽なほうに気持ちが揺れた場合に思い返すようにしています。「今日の自分は昨日の自分より1つでも成長したのか?」

特に若いうちは将来に向けての成長のために、この落とし穴に落ちないように意識する必要があります。と、私は考えていました。


満足感も大切

しかし、この満足感ってとても大事な意味があることに気づきました。

毎日を心穏やかに過ごせる

毎日の生活の終わりに、ひとつでも満足できるものがあると、心が安定するものです。たしかに新たな知識という点での成長はしていないのですが、気持ちが穏やかに過ごせることは、とても大切なことです。特に歳をとった後に。

成長することがひと段落ついた後、ある程度の年齢を重ね、仕事もひと段落をついた後に、毎日の生活に満足感を得ることが難しくなっていくことは容易に想像できます。その年齢に達するときには、将来のために何かを学ぼうとか身に付けようと思うことも少なくなります。身の回りに起こることのほとんどは、これまでの人生の中ですでに経験済みのものです。新しい成長も求めておらず、新しい刺激もほとんどありません。

その時に、毎日の生活に満足感があるということは、”生きがい”にもつながります。


人生後半に困らないために

町の定食屋さんを家族経営をされている方の様子を紹介した番組を見たことがあります。そこのおばあちゃん。90歳を過ぎてもなお、厨房に立ち料理を若いお客さんにふるまっています。とても活き活きとされています。

料理を作ること、接客をすることに、常に毎日の成長があるとは思えません。しかし、これが私の目にとても素敵な様子に映りました。どうせ同じ時間を過ごすのであれば、成長をしていきたいとおもっている私の目にも、この様子はとても素晴らしく感じます。

会社勤めから定年退職をされた方の中には、それからの時間を何に使ってよいのかわからないと困る方が多いようです。ハローワークなどには再就職を求めて通う方が多くみられます。どうしても年齢がネックとなり希望の職種に落ち着くことは難しいようです。自分の趣味を活かして、喫茶店などの経営に手を出すこともあるようですが、その時の思い付きで始めた事業は、うまく運営することは困難です。

人生の後半に必要なのは毎日の満足感なのではないでしょうか。1日過ごした夜に、生きている意味がないと感じることなく「今日も生きていてよかった」と、少しでも意味を持たせることができます。まだ若いうち、年齢でいうと40代から50代あたりに、この満足感を毎日得るための準備をしておくと、高齢になったときに意味のある毎日を送れるようになりそうです。


満足プレパレーション

人生の後半に毎日満足感を得るための準備をすること。満足プレパレーション、略して「満プレ」です。

その年齢になると、お金は生活できる程度で構わないはずです。それほど稼ぐ必要はありません。仕事をするにしても、商売をするにしても学生のアルバイト程度の金額で十分です。

心の安定のために、人との付き合いは多少必要になると思います。もちろん人の性格にもよりますが、自分と同じ感覚を持ち、同じものが好きな人との会話は心地よいものです。こじんまりとしたコミュニティーが作りやすい環境も必要かと思います。

仕事や商売をするにしても、「利益追求ではない」「小さなコミュニティ」をコンセプトにすると、様々な広がりが見えてきます。

私の中にも、具体的な「満プレ案」があります。47歳の現在、じっくりゆっくりと準備をしているのですがとても楽しいです。定年を迎えたときには、何をやっていこうかと困ることなく、やっと満プレを実施できるとワクワクしたいものです。準備の段階で早めに整った場合は、早期退職しスタートを切るかもしれません。

現在は高齢化社会です。今後ますますその傾向が強くなっていきます。高齢とはいっても元気な方ばかりです。せっかく動く身体と頭があるのなら、これまで頑張って勉強してきたことにひと段落付けるだけではなく、成長はせずとも毎日満足感を得られるような充実した日々を送っていきたいものです。


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