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原石がひかるとき



いつ俺のことすきになったの、と言う。

ーー初めてふたりでカフェに入って、私が本日のタルトかスコーンで迷って迷ってようやくスコーンに決めたらあなたが注文するときに「ホットコーヒーと、カフェラテと、スコーンと、本日のタルトで。」って言ってくれたとき。俺もタルトひとくち食べたいんだよね、って笑った顔がたまらなかったなぁ。


私のことはいつすきになったの、と訊く。

ーー初めてふたりで出かける前に相談してて、当日の天気が曇りか雨か微妙でどこ行こうか難しいよなぁって俺が言ったら「考えても分からないことはとりあえず悩まずに、そうなってからどうするか決めましょう。」って言ってくれたとき。この子は頼もしいなぁって思ったんだよね。


今は俺のどこがすきなの、と言う。

ーーこのあいだ水族館に行ったときに、ペンギンの群れ見てたでしょ。そこで一羽だけ寝そべったまま全然動かない子を指差しながら、あいつ絶対にうちの子だよね、ってぽろっと呟いたところ。これから休みの日に昼寝してても許せちゃう。


じゃぁ今は私のどこがすきなの、と訊く。

ーーめちゃめちゃ不機嫌な顔で帰ってきて、明らかに仕事で何かあったんだろうなって見てると、お風呂場から大声でジュディマリが聴こえてくるところ。そのまま頭にタオル巻いて出てきた後、あっけらかんとしてご機嫌そうにまだ鼻歌歌ってるのを黙って聴くのが実は楽しみ。


ちなみに俺の嫌なところってあるの、と言う。

ーー洗い物してくれるのはうれしいんだけど、何回言っても水切りカゴの中にコップ上向きに置いちゃうところかなぁ。あれ、水切れなくて溜まっちゃうから。逆さまにしてほしくていつもしれっと戻してる。


私の嫌なところはちなみにどこ、と訊く。

ーーいつも靴下干してくれるときに、洗濯バサミに2足まとめて干すでしょ。取りやすいのはいいんだけど、黒のやつと紺のやつ、たまに混じってペアにしちゃってるとこ。何回か気付かなくて違うやつのまま履いて行ったことあるよ、俺。


・・・

そんなこと、って思うこと。
ちっさいな、って思うこと。


「すき」「いや」
だけじゃ伝わらないきもち。

「ありがとう」「ごめん」
だけじゃ届かない本音。


なにがしあわせで、なにがうれしくて。
なにがむかついて、なにがかなしいか。


こんなにも、思ってる。こんなにも、考えてる。

それでも、どれだけ近くにいても、
頭と心の中を見ることができないのであれば。


もっともっと、感情の解像度を磨きたい。


同じものを、なるべく同じ温度で見たい。
違うものを、どこが違うのか分かりたい。

あなたと、つながる。
ただしく、とどける。

だからこそ、今。 「  磨け、感情解像度  」


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私も応募させていただいたコンテスト「磨け感情解像度」の募集期間が、昨日で終了しました。

毎日投稿される皆さんの熱の入った作品を、じゃぶじゃぶと浴びるように拝見してはすごく心が震えたのと同時に「あぁなんだか最近、きちんと自分の感情に向き合ったり、ただしく扱えていなかったのかも。」と、ふと思ったりしたのです。


以前働いていた職場の上司に、
「さっき言ったのに」は独りよがり。
「ちゃんと伝わったか」までが相手ありき。
という言葉をかけられたことがあります。

140文字で完結するTwitter。
スタンプひとつで会話が成立するLINE。


簡素で便利な表現ツールが次から次へと溢れるこの時代に、それでも「感情解像度を磨く」ことに注力するきっかけをくださったこちらのコンテストに、まずは心から感謝しています。本当にありがとうございました。
結果はどうあれ、取り組んだ段階でそのことを知覚し、今後のヒントになるような宝物を吸収できただけでも、この場にチャレンジしたこと自体が私自身の大きな糧になりました。


そんな気持ちがあふれてしまい、一息にこれを書きました。あとは来る結果発表の日を、わくわくとドキドキとがいっぱい詰まった気持ちのまま、皆様と共に楽しみに待ちたいと思います。

審査は大変でいらっしゃることと存じますが、どうぞ最後まで宜しくお願い致します!


(最後の最後で、何故か社内メールみたくなってしまった。まだまだ感情磨ききれず。)


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価値を感じてくださったら大変嬉しいです。お気持ちを糧に、たいせつに使わせていただきます。