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短歌集/葉月 「日差しつらぬく」



弧を描く とうめいな水 涼しげな
七色になる 魔法のように


雨続き 願った晴れ間 手の中に
あなたを誘う 理由ができた


べとべとに 愛の香りを 漂わせ
やわらかな肌に がぶりと歯形


天高く 蒼空に消ゆ 振り向けば
トランペットは 君へのエール


なにしてる 五文字の調べ 11時
まずはパジャマを 着替える予定


ねぇ見てよ これはフランス これはチリ
愛しい背中 世界は広い


日焼け止め 日傘にタオルに エイトフォー
それでも会いたい 理由はいらない



久しぶり 昼から飲んじゃう? その言葉
目線で伝わる あの子とランチ


午後七時 お日様が消える その様子
夜のスイッチ みたいだと言う



カラカラと 不安定に鳴る 足元よ 
夕顔揺れる 裾恥ずかしげに



張り付いた 前髪からかう 照れ隠し
いつもより狭い その歩幅さえ


目の前で 上がる華より 眼の中で
揺れるその華 そっと見つめる


呼吸さえ 聴こえない夜 華の下
伝えた二文字 届いたでしょう?


ふくらんだ 紅い頬っぺた 汗ばむ額
万歳しながら 何を見てるの


影並ぶ コンビニ帰りの 熱帯夜
右手はアイス 左手は君


四十度 近い気温なら 心ごと
溶かしてほしい どこにも消えない


一人分 空いたベッドで 蹲る
夏で良かった 暑くて良かった


どろどろに 混じった汗と 籠る熱
このままひとつに 夢までとろけて


太陽を 向くのよと言う その花は
強がりに見えて 苦手と言えず


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水無月文月、とひっそり続けている現代短歌にチャレンジしてみたシリーズです。
7月と8月の違いってなんだ、と悩みながら今月はなかなか難産だった・・・。

先月まで短歌ひとつずつにも小タイトルをつけていましたが、何となくわたしの物差しで世界を狭めてしまうような気がして、やめました。



さて。夏は、すきですか?

わたしはどうしてだか、日差しに責め立てられているようであんまり得意ではありません。

梅雨もだめだし、夏もだめだし、ほとほとだめなことばっかりです。


それでも、ふいにいとおしく憶い出してしまうのは夏の記憶だったりするんですよね。

母に内緒で濃いめにいれたカルピス
昼寝をして頬にいつまでも残った畳の跡
浴衣が肌に引っ付く川沿いの蒸し暑さ
何度も洗ったはずなのに玄関で零れ落ちる白砂



何故、幾つになっても夏は特別なんでしょう。

世間が変わり果てた今年の夏も、いつの日にかふと思い返したときに微笑んでしまうような、どうかそんな記憶が少しでも残りますように。





こちらのキリンさんのコンテスト応募作、お陰様で未だかつてない程の閲覧数と愛溢れるサポートをいただいておりまして。
note公式様におすすめいただき、Twitterでも素敵な帯でご紹介いただき、これは夢か!!?と驚く日々が続いております。

何に驚いたかって、非会員ユーザー様からのスキがなんと20以上も!!凄すぎる!!
どちら様経由で辿り着いてくださったのかをインタビューしたい。いや、もはや一人ひとりのお宅に菓子折を持って御礼参りがしたい・・・。


ずっとそんな感じで、もう胸がいっぱいです。

いつか書きたくて、なかなか書けなくて、ここしかないと思いながらかなり心して出した作品だったので、本当にとっっても嬉しくて。

募集期間が終了する頃に、何故この話を書いたのか後書きを記そうかなと思ったりしています。



茹だるような猛暑の2020年・夏、今年はこのコンテストが一番の思い出になりそうです!

乾杯〜〜!!(既に達成感で満ち溢れたわたし)












価値を感じてくださったら大変嬉しいです。お気持ちを糧に、たいせつに使わせていただきます。