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【マッチレビュー】FC町田ゼルビア 2023年第42節 vsベガルタ仙台〜試された94分の集中力。2024シーズンへのプロローグ

こんにちわこんばんは。ひだりです。

ラストはやろうと思っていた、2023年最終節・ベガルタ仙台戦のマッチレビューです。あれこれ書いてますが、中見出したぐって斜め読みすれば主旨はだいたいわかる気がします。
よろしくお願いいたします。


日本酒のおでん出汁割がめちゃくちゃおいしかったです。

以下からレビューです。

前半

町田 4231-433連動プレス

ゼルビアは4231を基本フォーメーションに、前線デューク、荒木、高橋大悟3枚を中心に、仙台の442 中盤に入ってくるボールを監視。

敵陣ボール非保持での守備ではデューク、荒木、高橋大悟をファーストプレス隊として押し出し、バイロンが2列目の位置で上下動する433を形成。

マッチアップのイメージ

仙台が安全にボールを保持している局面では、むやみなハイプレスは行わない。仙台ビルドアップのパス回しでボールがピッチ上を移動しているタイミングでプレッシングをスタートし、ボールの受け手から時間を奪いエラーを誘う。

前の選手のプレスにあわせて、2列目が空いたスペースを埋め、仙台中盤選手へのパスコースを切る形でファーストプレスと連携したプレッシャーをかける。
ボールサイドに寄せた狭く深い守りで、仙台に前方パスでの簡単な前進を許さない。

仙台がクサビやロングボールを狙ってくる自陣大外〜ハーフスペースはSBが仙台アタッカーに距離を寄せてケアする。(前半17分あたりの守備がわかりやすい)

ライン落ちサポートで打開を図る仙台

ゼルビアの前進守備・プレスに対して、仙台はボランチの長澤・鎌田が下り目、町田のファーストプレスラインの間に落ちて、仙台最終ラインにパスの出しどころを作るサポート。

中盤では前線が下がる動きも取り、町田2列目(433 真ん中の3)の脇を狙って流動的に間のスペースに顔を出し、守備者-ボランチ-アタッカーでの3点によるパス連携での打開を図る。

町田の前がかりなプレスの機を見て最終ライン裏へのロングボールも組み合わせるも、町田CBチャンミンギュの跳ね返しや藤原優大の広範囲に対応するカバーリングも効き、決定機にまでは持ち込ませない。

仙台は前目の選手が下り目の移動してサポートすることでボール保持の時間を増やすことに成功するも、結果として仙台の攻撃開始位置も後ろに重くなり、なかなか前進できない。
結果的に、仙台の攻撃もパス連携打開より、中盤での球際争い、ロングボールのこぼれ球を拾ったタイミングでのアタックの方が有効性が高かったように見える。
ただし、そこは町田の土俵。町田守備陣も危険な局面では身体を投げ出しての守備も交えながら、ゴールを塞ぐ対応を取り続けた。

セカンドボールを拾ってサイド奥を狙う町田

町田がボールを奪うと素早く前へ。中盤からの前進はロングボールが主。
デュークのポストプレーをフックに、セカンドボール争いでは激しく寄せて球際勝負を仕掛ける。

奪いきれれば左サイドは太田荒木での連携、右サイドでバイロンが高上がりし個でのドリブル突破も活かしながらサイド奥を突く攻撃を試みる。

またデュークを中心に荒木、高橋大悟が衛星的に近い距離で動くので、バイタルエリア付近でボールを保持したタイミングでは、2・3名のダイレクトのつなぎでペナ内攻略を仕掛けていた。

セットプレー

町田は最終ラインから前線まである程度深さを持った戦い方だったので、前線や裏へのスピーディなパス出しを意識的に行っていた。
結果、ボールの受け手・出し手にやらせまいと寄せる仙台側のファウルを誘う副次的な効果もあった。

CKやロングスロー、セットプレーでは得点こそ生まれなかったものの、仙台守備陣にたびたび対応を強いることでじわじわと集中力を削いでいくアプローチは後半先制点をもって結実する。

自陣守備では前線から鍵をかける

仙台に前進守備を突破された局面の自陣守備では、前線がプレスバックで進撃を制限。
2列目がフィルターとして前方を塞ぎ、最終ラインは狭幅4バックの体制を取る。前で取れなくても2列目が、2列目が取れなくても3列目がケアできる形で対応していた。

互いの狙いを読み合いつつ、互いに交わしていなして、最終的に中盤でのデュエルや空中戦も多いジリジリとした展開の中、スコアレスのまま前半終了、後半勝負に進んでいく。

後半

後半冒頭:攻めたい仙台の意識 x バイロンの好判断が噛み合った先制オウンゴール

後半は冒頭、町田は自陣でのバックチャージでいきなりファウルを取られる。
仙台FKの局面、後半立ち上がりの時間帯パワーを持って押し込みたい仙台は、この場面で前重心のアタックを仕掛けたことが、結果的に最終ラインのエラーにつながった。

右サイド中央付近からのフリーキックは逆サイドのキムテヒョン→ヘディングで折り返し前線の山田へ。
山田はゴールを背にした方向でボールを受けた。本来はここでボールを収め、ペナ角・バイタルエリア・ハーフスペースに入り込む2、3人との連携でゴールを狙いたかった。ゴール前でのテンポの良い連携は、仙台が持っているアタックのスタイル。

ボールを受けた山田がボールをコントロールする前に、五分の体制でチャンミンギュがショルダーチャージで競って前にクリア。
クリアボールはバイロン→高橋大悟と渡り高橋は前線のデュークにスルーパスを通す。デュークはボールを追いかけるもここは仙台CB菅田がカバーリングしサイドへ簡単なクリア。

このクリアボールがタッチラインを割った瞬間、バスケス・バイロンの対応がカギだった。タッチライン外に跳ねてくるボールを受けられる角度までダッシュ。ボールを待ち構えそのままキャッチすると、裏に抜ける宇野禅斗へ即座にスローイン。クリアボールがタッチラインを出てから投げるまで3.5秒。

その間、仙台は最終ライン4枚がゴールエリアを守れるゾーンについていたものの、バイロン・禅斗・大悟を含め右サイドを分厚く攻め上がる町田に対して中盤の戻りが間に合っておらず、ポケットのスペースを埋めきれていない。

そうした状況下で禅斗のクロスの跳ね返しを

内に入るバイロン→
外に回る高橋大悟→
落として鈴木鋭いクロス→
仙台SB小出がクリアミスしオウンゴール

ここまで仙台フリーキックから31秒後のオウンゴールだった。
細かく見ていくと、このオウンゴールはこの局面だけ仙台最終ラインの精神的優位性を奪うアプローチの連発で、めちゃくちゃ町田っぽさのある、エモい1点だった。

町田が先制したことで仙台は前に出る必要が出てきた。

仙台の布陣変更

失点後、仙台は4141での対抗姿勢を明確にする。
先制点で勢いの出た町田はフォーメーションを3421に変え、仙台の最終ライン4枚の前1の脇あたりからサイド攻略を図る。

仙台のボール奪取からのカウンター、前に人数をかけた攻撃をいなしつつ、55分、狙っていた仙台サイド奥の攻略に成功する。

3バック・ボランチの連携からWB位置の太田へ。
太田からのグランダーパスは、仙台守備陣をしっかりと引きつけたデュークがフリックし、裏抜けした荒木へ。
荒木がそのままサイド突破し上げたクロスは仙台守備+ニアの高橋をかすりながら、こぼれ球の形でデュークの方向へ。ボールは少し後ろの方向に流れたが、うまく身体を開いたダイレクトボレーで2点目を奪った。

中距離パスで縦指向を強める仙台

2点を奪われた仙台はより積極的に前への圧力を強める。グランダーでそれまでより足の長い中距離パスを手前&奥に届けるボールを散らす。角度的にも45°・90°のあいまいさのないパスを多用し町田の守備の隙間をハッキリ突いてくる。仙台の選手間の距離が離れたことで、町田が中盤プレスをかけてもギリギリ届かない間合いを作られる。

町田は5バック気味の最終ライン+仙台2列目への即時プレスで規制をかけ、仙台の出方を観察しながら時計の針を進める。

60分、オウンゴールに絡んだDF小出・中盤ボランチ長澤・FW山田に替えて、オナイウ情滋、エヴェルトン、大卒ルーキー菅原を3枚換え。攻撃の活性化を図る。

オナイウをサイドバックの位置に配置し、大外からスピードを活かしたサイド攻撃を絡ませる仙台。64分シンプルなワンツーで抜け出したオナイウに太田が対応し仙台にコーナーキックを与える。
このコーナーキックをショートコーナーからの速いクロスに菅原が頭に合わせゴールを決め切る。
交代選手のカラーを活かしたアタックで早々結果を出した仙台が勢いづく。

66分、町田はデュークに替えて、U22代表合宿での負傷以来、怪我明けの藤尾を久しぶりに投入。デュークは夜のフライトでオーストラリア代表に合流。マジおつかれ。

耐えて、替えて、チャンスを待つ

1点を返した効果で、仙台の攻守が息を吹き返す。仙台自陣では町田の前進をサイドに追い込んで3、4人の連携した守備で囲い込み。
攻撃では縦クサビとオナイウ突破、町田はプレッシングによる規制を続けながら耐えつつ、中盤でのボールの奪い合いが多発するジリジリした展開。71分には仙台の鋭い縦パスを受けた菅田が危険なシュートを放つも、福井の横っ飛び好セーブで失点を逃れる。

73分、太田、鈴木準弥の交代。コースケコールで盛大に讃える町田サポ、大ブーイングを浴びせる仙台サポ。
どっちの反応も真っ当かなと思っていますが、現地の雰囲気的には町田サポからすれば奮闘したコースケを讃えたい気持ち一心だったので、仙台サポからのブーイングはさして気にしていなかったような気がします。
投入したのは奥山・翁長。クロージングにはまだ速いながら、守備力・ハードワークの鬼を投入し仙台の勢いを消すための交代。

攻勢を続ける仙台に対し、町田は541のような形で後を固めつつ中盤+1トップ藤尾によるプレスで対抗し、仙台のビルドアップを牽制する。奪い切れればチャンスになりそうなところは多々あったが時間帯も影響してかファウル終わるケースがやや多くなる。

83分、荒木に替えて安井、高橋に替えてアデミウソン投入。安井・藤尾・アデミウソンの3人をピッチに揃え、守備を固めながらも隙を突くアイデアとパワーで1発の狙える体制を作る。

84分、下田コーナーからアデミウソンの落としを藤尾が受け、ボールを下げるそぶりを見せてから反転シュート。残念ながらサイドネットだが、アデミウソンのヘディングでのつなぎのコントロールも良く、簡単かつ計算できるやり方が見られ、来年に向けて期待が湧く。

87分、アデは見ていた

87分。中盤での浮き玉のボール争いのこぼれ玉をアデミウソンがアウトサイドで横の安井へ。安井が裏を取るも、ボールはそのままGKのもとへ。

「あー、裏抜けできなかったぁ」の雰囲気を漂わせつつ、GKにボールがてんてんと転がっていく合間、アデミウソンは仙台左CBキムテヒョンの位置とリアクションを一瞬だけ見ているように思える。キムテヒョンの方に目を向けた後、少しわざとらしく、自陣に戻るでもなく緩慢な動きで前線を漂う素振り。「このDF、集中切れてるぞ」と看破したような一連の動き。

果たしてGKが蹴ったパントキックをCBがヘディングで大きく高く跳ね返す。仙台最終ラインを超えていったボールにアデミウソンはジャストなタイミングで抜け出し、ボールを収めてドリブル独走〜前進のリズムを緩めGK林との距離感を測りながら、足元の振りのスピード、緩急でGKのタイミングを外すシュートも、いかにもブラジル人FWらしい良い仕事。期待がデカい。上手い。

仙台最後の猛攻

89分仙台はベテランレジェンドのリャンヨンギを投入。2点差とされながら戦い続ける姿勢を崩さない。

町田は守ってカウンターを狙いつつ、中盤の球際も厳しく行き時間を消費していく。

93分藤尾の競り合いがアデミウソンにつながりシュート。結局ファウルとなったが、打たれたシュートはきっちり止める林。FC東京時代からずっと知っているけども、この試合でもやはり林のシュートストップは本物だった。

オナイウ右サイドで仕掛けスローインを自ら投げる。会場どよめくロングスローにヒヤリとするもゴール前カオスの中やらせずペナルティエリア外にクリア、クリアボールをオナイウ自らミドルシュートを狙うも高く打ち上げてしまい、そのままゲームセット。最後全部オナイウの1人仕事多くて流石の存在感。

3-1で町田の勝利、5連勝で2023シーズンをフィニッシュ。

総論

前半4231-433切替とバイロンの役割

前半のベース4231→敵陣プレス433。
前目3枚をプレス隊にしつつ、ダブルボランチとサイドの連携で中盤争いに人をかけるところで、いつでも4231に立ち戻れる戦い方をしていたように思います。

バイロンを2列目に下げ、デューク・荒木・大悟をプレス隊とするギミックを理解すると、なんというかすごく味わい深かった。
バイロンを2枚目に置くことで、ボールを持ってドリブルを仕掛ける役割・プレス隊の奪った後のこぼれ球のケアやボールの出口、ペナ内エリア攻略にバイロンを使えるようになる。

前からプレスが重要なチームスタイルの中で、バイロンをあえてプレス隊から外すという選択。個を活かしながら戦術的な攻守を実現する柔軟性が感じられて、この辺は明輝さん仕事なのかなーという気がします。

昔のゼルビアで言えば、天才ドリブラー戸高をIHで使うような感じ…?実際はサイド中心であんまなかったように記憶しますが「使いたいスペースだからあえて空けて構える」という体制を戦術的な整合性を確保しながらピッチで表現できたのは、今シーズン42節通してチームが成長・成熟した部分なのかもしれません。

もちろん、その差配に応えて、中盤〜プレスバックしてのサイド守備のために上下動を絶やさず敢行したバイロンの黒子的仕事も素晴らしかった。

94分間の集中力で決まった勝負

町田の2点目以外の生まれたゴールは、すべてピッチ上での集中力が散漫となった一瞬の隙を突く形で発生した得点だったように思います。

特に町田1点目のオウンゴール・3点目のアデミウソンの裏抜け、 2つの得点については、プレーが切れて空気が緩んだ一瞬を突いた色合いがある。

人間がやることなので、94分もの間、息を止めるような集中を終始走り回りながら張りつづけることは不可能。

そんな中でも、ゲームの大きな流れを観て、流れを切らない判断をピッチ上の選手が自ら下して、それが結果につながった点は「町田らしさ」を考える上で凄く意味のある2点だったのではと思います。

ボールゲーム外の仕掛け的なところは、J1での戦いにおいても暗器として役立つシーンが出るかもしれません。
チームの息が切れてそうな雰囲気の時は、集中おじさん勢のみなさま、よろしくお願いいたします。

アデミウソンに感じた未来

DAZN中継でも話されていた通り、アデミウソンがゴールを決めてシーズンを終えれたことは非常に大きいと思います。

来年序盤はエリキはおらず、今シーズン序盤のような「どっしり守ってポープが止めてデュークに当ててエリキで勝つ」みたいな戦い方もできません。

セットプレーや得点シーン前後で、個を活かしたシンプルな連携でアデミウソンが機能したのは、ひとつの手札としてとても心強い。もともと短い出場時間でもボールの収め方、展開など上手さは十分に感じられていましたしね。

シーズンも終わり、ここから出入りは少なからずあるでしょうが、2023年の最終節にして2024年のプロローグとして、こうした結果が出たことは好材料です。

がんばりましょう🔥


試合当日は現地観戦、ゴール裏の上段あたりでずっと立ってコールしてました。
キックオフから時間が経つにつれ吹く風が切るように冷たく、持参したゼルビー帽子の防寒性の高さのおかげで乗り切れました。

ゴル裏ど真ん中の旗が振られるとピッチが隠れてしまい、局面ではほぼ何が起こったか見えなかったので、、振り返り観戦ではじめてディティールを理解できた。

つぶさに見ていくと、最終的なスコアやハイライトではあらわれない、試合経過に応じた様々な駆け引きがある、良い試合だったように改めて思います。
結果以上に、仙台の戦術が見える戦い方があって、それに抗する町田の対応があって、そういう試合をシーズン最後にできたのは本当に恵まれた最終節でした。

今季、結果が出ずいろいろ紛糾していますが、仙台のサッカーは本当に面白いですね。

堀体制を終えた後、来年どうなっていくか気にしていきたいなと思ってます。(ただ実経験的に、3年計画はあまり良くない気がします。。)

駅からすぐだしスタグルおいしいしWifiバンバン繋がるしなんかdポイント貯まるし、あれはいいスタジアムだわ。
野津田来たベガサポさんが不便って騒いだのは、このスタジアムに慣れていたら、やむないかもしれない。町田市もがんばってくれてるし、次にお越しいただくまでには、もうちょい便利にしておきます!

そんな感じです。
最終節を終えた雑感を近々、別途で来週あたり書こうと思います。おつかれさまでした!

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