親友に恋人ができたことを言えなかった話

小中学校が一緒でとても仲の良い親友がいた。

高校は別々の学校に通い、大学でまた同じ学校になった。お互い実家で家も近かったので、学部は違えどタイミングが合うときには一緒に通学して互いに近況報告などしていた。

大学生となればもちろん恋愛の話は上がるわけで、親友のそういう話も楽しく共感しながら聴いていた。

でも自分の話はなぜかできなかった。恋人ができたが、報告できず、付き合って1か月くらいたってから、実は付き合ったんだってようやく親友に言えた。何でもっと早く言わないのと言われたけどおめでとうと話を聴いてくれた。おめでとうと祝福されるようなことなのか、ぴんと来なかったけど、ありがとうと言った。

その彼とはお別れし、1年後くらいにまた恋人ができた。でも、これも親友には言えず、3カ月くらいたってからようやく報告した。

「そうなると思ってたよ。でも、また言ってくれなかったね」と静かに言われて、「ごめん」としか言えなかった。付き合ってから、何回も言おうとしたんだけど、なんでかやっぱりどうしても言えなかった。

近況報告で仲いいことは話していたので何度も「最近A氏とはどうなの?付き合わないの?」聞いてくれたりもしていたのに、「付き合わないよ」としか言えなかった。

親友はいつもリアルタイムにいろいろな話を聞かせてくれていたから、当然同じようにすることを期待していたんだと思う。できれば私もそうしたかったけど、付き合っていることを話すのは、罪を告白するようで、自分の中できちんと消化してからじゃないと言えなかった。それ以降、なんとなく親友と気まずくなってしまった。卒業まではなんとなく一緒にいたが、卒業後はほとんど連絡を取ることがなくなってしまったし、彼女は知らない間に結婚していた。

今はコロナ禍でなかなか気軽に会えないけど、いつかまた遊びに行けたらいいなと思う。本当に大好きな親友だったから。今でも夢に出てくるし、そのたびに何か救われている。

恋愛の話に戻すと、人の恋愛話なら楽しく聞けるし、共感もできる。気持ち悪いと感じたことも多分ない。でも自分の話をするのはすごく抵抗があるし、なかなかできない。

でも、その話ができないことで人との信頼関係が崩れてしまうことがあるんだなと身に染みた。それは私にとってはすごく悲しいことだけど、それだけ世の中では恋愛ってそれだけ重大なことなんだな。

恋愛の話をできることは一種の信頼関係の指標にもなっているのだと思う。

自分は世の中のスタンダードにあてはまらなくても、それを知って配慮したうえで行動することの必要性を意外なところで思い知った気がした。

今はグレイロマンティック・アセクシャルを自認しているのであるかはわからないけど、今後、自分が恋愛をすることが仮にあったとしても、それを人に言える気はしないので、どうやって恋愛話ができないことで損なう信頼を補うかは考えなければいけないと思う。多分、結婚した報告も私にはできない気がするのでそちらも同様に。

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