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「ユーザーフレンドリー全史」は良い教科書でした

ユーザーフレンドリー全史という本を読んで、良かったのでご紹介です。

なぜユーザーフレンドリーという概念がここまで広まったのか、ヒューマンエラーの防止、ユーザビリティの向上に関する話から、UX(User Experience)が重視される時代に至るまで、そして2021年現在のユーザーフレンドリーの課題と今後の展望までおさえられていました。

HCI(Human Computer Interaction)やHCD(Human Centered Design)、UXなどのキーワードに興味のある方は、一読しておいて損はないと思います。

ただ、本書は図が少ないので知識がない人だと文字を読んでいるだけでは「何のことを言ってるんだ?と」なる方もいると思います。なので、知らない事例が出てきたら検索しながら読み進めると学びが深めやすいと思います。検索すれば出てくる有名な例ばかりなので、すぐに見つけられます。

少し中身の話をすると、たとえば、スリーマイル島の原発事故(1979)の事例が象徴的です。オペレーター室がユーザーフレンドリーになっていなかったことで、ヒューマンエラーが積み重なって事態が深刻になったことが書かれています。そこから、およそ40年の間にユーザーフレンドリーの「当たり前」がどれだけ進化してきたのかを感じられます。

また、デザイン思考という共感のツール化がなぜ起きて、ここまで活用されるに至ったのか。さらには、ユーザーの無意識をハックするような(中毒にさせるような)UXと、それに対して求められる倫理など。いま世界で議論されている重要なトピックまで、歴史的な背景を踏まえて学ぶことができます。

この本は、あくまで歴史について書くことが主であって、具体的なユーザーフレンドリーなプロダクトやサービスのデザイン方法について詳しく書かれた本ではありません。そういうところについては、教科書的には安藤先生の「UXの教科書」とかを読んだほうが良いかもしれません。

また、ユーザーフレンドリー全史は分野の知識が全くない人が、さらっと読むには、ページ数も多く少々重たい本です。

個人的な感想としては、ユーザーフレンドリーという分野の歴史を、とても楽しんで学ぶことができました。ここまで一冊でまとまった本になかなか出会えてなかったので、久々にヒットでした。自分が学生時代からずっと研究や実践で関わっているので、その影響も大きいと思います。

この本に掲載されている個々の事例については、書籍やウェブの記事、論文などはあるのですが、本として一気にまとめて読めるというのは大きな価値だと思います。皆さんも興味あれば手にとってみていただければと。

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