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店長熱唱 靴ブラシ置き引退

リーガルシューズ石巻 閉店も〝らしさ〟全開

 紳士靴ブランド「リーガル」=本社・千葉県=の専門店「リーガルシューズ石巻」=石巻市立町=が3日、閉店した。42年の歴史に幕を閉じる瞬間、常連客ら約20人が集まり別れを惜しんだ。閉店直後には店長の新柵ひろ子さん(52)が好きな歌謡曲を披露し、地域への感謝を込めた。

 店は、同市中央で「向山靴店」を営む正岡賢司さん(75)が昭和56年に立ち上げた。単一ブランドを扱う専門店であり、装いにこだわりを持つ市民を中心に愛された。日本製革靴のパイオニアであるリーガルは、流行とは無縁のデザインと高い耐久性が評価され、長年愛用する人も多い。

 同店は東日本大震災で被災するも、翌年に営業を再開。しかし郊外の靴店台頭や商店街の衰退などで経営が難しくなり、惜しまれながらも42年間の営業に終止符を打った。

 最終日は午後5時に店のシャッターが静かに降りた。店内では集まった常連客や地域住民とともに、新柵店長が〝打ち上げ〟を催した。シャンパンなどを開けて乾杯し、しんみりとはせず、華やかに締めくくった。

 店のオーナーでもある正岡さんは「店を閉めるのはめでたいことではないが、皆さんには本当に感謝。気づけば42年間も店を続けられた。思い出を糧にして、今後の人生も歩みたい」と万感の思いをにじませた。

 新柵店長は店内にカラオケを流しながらマイクを握り、山口百恵さんが引退コンサートの最後に歌った「さよならの向こう側」を熱唱。途中、涙ぐむ一面もあったが、曲が終わると長年愛用した靴磨き用のブラシを床に置き、店の奥に消えるパフォーマンスで締めくくった。

 再び、店内に姿を見せた新柵店長は「私は33年間ここで勤め上げた。『ありがとう』の一言であり、後悔はない。今はやり切った達成感がある」と笑顔であいさつ。店内はねぎらいを込めた拍手で包まれた。【渡邊裕紀】


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