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歴史的大事件の伝承に

あさま山荘事件 予備の鉄球
石巻市の牡鹿観光で常設

 日本中を揺るがした昭和47年の「あさま山荘事件」。クレーン車でつり上げた鉄球で建物の壁を破る〝鉄球作戦〟は局面を打開する一助となった。その際に予備で用意されていたものと思われる鉄球が、石巻市門脇の㈱牡鹿観光(阿部忠昭社長)で常設展示されている。長年保管していた長野県内の建設会社から譲渡された。阿部さん(79)は「実際使われたものではないが、歴史を物語るもの。石巻の若い世代にも史実を知ってほしい」と話していた。

 事件は連合赤軍の若者5人がライフル銃などで武装し、山荘=長野県軽井沢町=の管理人の妻を人質にして籠城。包囲する警察に発砲を繰り返した。鉄球作戦は事件発生から10日目に行われ、警察も建物に突入。激しい銃撃戦ののち、女性は無事救出され、5人は逮捕された。

 この攻防で民間人1人が犠牲となり、現場にいた警察官2人が殉職した。事件の様子はテレビ中継され、最高視聴率は89・7%を記録した。

鉄球を譲渡された阿部さん(左)と運搬を担った日下さん(右)

 阿部さんに鉄球を譲渡した建設会社の会長は当時、殉職者をしのんで関係者に慶弔金を渡した。この返礼で予備と思われる鉄球が贈られたという。阿部さんが会長と知り合って鉄球を見せてもらったのは20年以上前。そこから公私ともに縁を育んできた。

 牡鹿観光に展示されている鉄球は、直径70㌢で重さは955㌔㌘。重機で持ち上げて貨物車に積み、約6時間かけて㈱生活情報館=同市南中里=の日下啓一会長(74)とともに石巻に運んだ。走行時は動かないよう鉄球をしっかり固定したが、阿部さんは「持って帰るだけでも命がけだった」と話す。

 誰でも見ることのできるよう、国道45号沿いの駐車場に面して設置。「1972年2月あさま山荘事件」など簡単な説明も付されている。来年2月には事件から52年となる。阿部さんは「こうしたことが二度と繰り返されることがないよう、石巻の若い世代にも事件があったことを知ってほしい」と話していた。【泉野帆薫】


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