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少年の主張県大会 県知事賞に入駒さん(矢本一)

言葉で助け合う社会へ

 中学生による「少年の主張宮城県大会」が9月28日、利府町文化交流センター・リフノスで開かれた。石巻地区の代表として出場した東松島市立矢本第一中学校(平塚輝校長)3年の入駒奏羽さんが最優秀の知事賞を受賞。現在、県代表として北海道・東北ブロックの審査に進んでおり、この代表者に選出されると11月12日に都内である全国大会に出場する。
 県大会は青少年のための県民会議、独立行政法人国立青少年教育振興機構などが主催し、今年で44回目。7月から各地区で予選が行われ、県大会には12地区の代表13人が出場した。
 主催者によると、今年は、多様性にあふれた社会に願いを込めたものや手話を学んだ経験から考えたこと、部活動を通して芽生えた思いなどテーマ設定がバラエティに富んだ発表だったという。
 その中で知事賞を射止めた入駒さんは「言葉を紡ぐ」と題して誹謗(ひぼう)中傷へ問題提起。教室の休み時間に、ある生徒が同級生に対して言い放った「消えろよ」という言葉への戸惑いを端緒に主張を展開した。自分の発言に責任を持ち、言葉を大切にすべきと語り、互いに助け合い、温め合う社会に思いを込めた。
 テーマについて入駒さんは「誹謗中傷の言葉はインターネット上だけのものという思い込みがあった。ふと教室を見渡すと私たちの日常にもあふれ、そのことがとても怖いと思えた」と話した。
 少年の主張は今回が2度目の出場。昨年は東松島市大会止まりで、その悔しい思いをバネに、今年は市、地区大会とコマを進めた。県大会は「みんな表現が上手くてレベルが高かった。緊張したが、地区大会での優勝が自信になり、発表自体はいつも通りにできた」と振り返る。
 市内の出場者が知事賞を得るのは今回が初めて。入駒さんは「まだ実感がなく『私でいいの』という心境だけどうれしい」と謙虚。普段は「とてもおしゃべり」だそうで、立派に発表する様子を地区、県大会で観覧した母親からは「まるでうちの娘じゃないみたい」と驚かれたという。

知事賞を受賞した矢本一中の入駒さん


 現在は、県代表者として北海道・東北ブロックの書類審査中であり、計7人の中から2人が全国大会で発表を行う。なお、今月末にある同校文化祭では教師や生徒の前で発表が予定されている。
【泉野帆薫】


少年の主張石巻地区大会  最優秀賞
少年の主張宮城県大会 宮城県知事賞

言葉を紡ぐ

東松島市立矢本第一中学校3年
入駒 奏羽

 「消えろよ」
 ある日の休み時間。いつも通り少し騒がしくて、そして皆の笑い声が響く楽しい時間でした。そんな時に、私の耳に入ってきた言葉。
 「お前さー、まじで消えろよ」
 そう笑いながら言う姿に、私は言いようのない衝撃を受けたのです。普段ならそこまで気にせず、聞き流してしまっていた言葉。しかし、その日はなぜかはっきりと聞こえた笑い交じりの「消えろ」が頭に残って離れませんでした。私が言われたわけでもないのに、笑って話している中で出た冗談だとも分かっているはずなのに、なぜか私は、その言葉が気になって気になってしかたがなかったのです。
 「どうしてあんなに軽々しく『消えろ』が言えるのだろう。どうして、人を傷つける言葉を笑って言えるのだろう」
 そんな疑問が胸に渦巻き、誰にもその疑問を打ち明けることもできないまま、私の心はモヤモヤとした気持ちを抱えることになりました。
 皆さんは動画を見たりしますか?その動画にどんなコメントがされているかを見たことはありますか?どんなに可愛くても、どんなに上手でもコメント欄にはこんな言葉たちがあふれています。
 「可愛くない」「下手すぎ」「見てられないんだけど」「動画出すのやめろ」「まじでウザい」「顔出すな」
 その人を否定する誹謗中傷の言葉たち。きっと軽い気持ちで書いているのでしょう。もしかしたら良かれと思って書いているのかもしれません。しかし、この言葉たちを向けられた人が傷付けられていないわけがないのです。しかし、そのことに気付いている人は多くはありません。「言葉のナイフ」が簡単に誰かに向けられるようになってしまっていると私は思うのです。
 ではなぜ、このような人を傷付ける言葉が軽々しく言われるようになってしまったのでしょう。私は先ほど触れたネットの世界が関係していると思います。テレビだけでなく、今は配信された動画を見て楽しむ時代になりました。そして時に、人を攻撃する言葉は、「いじり」として笑いを呼びます。そして、それはそのまま現実の世界に戻ってきます。ネットで許されるなら現実でも言っていいだろう、やっていいだろうがエスカレートしていき、人を傷付けることにためらいが失われていったのだと思います。その結果、言葉の意味や伝わる思いを考えず、私たちは言葉を軽々しく使ってしまうようになってしまったのだと思います。
 このままでは、気付かないうちに誰かを傷付けてしまう社会になってしまう。私はそんな未来になってしまうのが怖くてしかたがありません。そうならないためにも、私たちは何をしていかなければいけないのでしょう。私自身、軽はずみに言葉を使ってしまい、人を傷付けてしまったことがありました。だからこそ、それに気付けた今、自分の言葉に責任を持たなければいけないのです。言葉の意味を、どのように相手に伝わっていくのかを考えて言葉を発していかなければいけないと思います。
 世の中には「言葉を紡ぐ」という言い回しがあります。言葉を「紡ぎ」、人と「繋ぐ」私たちだからこそ、伝える言葉に意味を持たせて、大切にする生き方をしていきたいと思うのです。言葉はたった一言で人を生かすこともできるし、その命を奪うこともできます。そのことを忘れず、大切に言葉を紡いでいきたいと思います。
 皆さんも相手に思いを伝える言葉を大切に、皆が笑顔になれる言葉を紡いでいきましょう。私も自分の言葉を誰かを攻撃するためじゃなくて、誰かを守るために、誰かを勇気づけるために使っていきたいと思います。「消えろ」じゃなくて「一緒にいてくれてありがとう」を私は伝えていきたいと思います。これからの未来が、言葉でも助け合い、温め合える世界になりますように。


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