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原発再稼働に正式同意 女川町・立地議会で初 石巻市と県の判断に影響

 女川町議会は7日の定例会本会議で、東北電力女川原発2号機の再稼働を求める陳情4件を賛成多数で採択した。女川原発の立地自治体で正式に再稼働への「同意」に意思表示したのは同議会が初めて。意思は須田善明町長や石巻市議会、亀山紘市長、県議会、村井嘉浩知事の判断にも影響すると見られる。須田町長は「まだ確認すべき点もある」と慎重な姿勢で、立地自治体としての発表時期や方法を含めた賛否の明言は避けた。【山口紘史】

 再稼働を巡る請願と陳情は8月19日に開かれた町議会原発対策特別委で討論され、議長と委員長を除く全10議員は起立採決で陳情4件を採択、請願2件は不採択とした。本会議ではこの結果の報告後に討論が行われた。

 再稼働に反対の議員は「今の広域避難計画は実効性がない。再稼働は令和4年度まで延長しているので、急がず、まずは住民の不安を取り除くべき」「原発の安全神話は福島の事故で崩壊した。目先の利益でなく、原発に依存しない町づくりに舵を切るべき」と避難計画の不備や事故時の影響を指摘した。

女川町議会 再稼働の賛否請願・陳情を採決

再稼働に賛成する陳情は賛成多数で採択

 賛成の議員は「町収入は自主財源の町税のうち、約75%は東北電力関連。財政安定の要因になっているほか、社員も580人働いている」「原発稼働は地域経済に与える影響の裾野も広い」「再生可能エネルギーは将来的に主力になると思うが、まだそこまで技術が追い付いていない。環境保全と電力安定供給の両立には、現状で原発が不可欠」と地域経済や温暖化防止の観点で必要性を強調した。

 起立採決は各請願、陳情ごとに行い、賛成の陳情4件はいずれも賛成8人、反対3人、反対の請願2件は賛成3人、反対8人となった。

 町議会が再稼働に同意する姿勢を示した形となり、今後は須田町長の判断に注目が集まる。石巻市議会も再稼働に関する審査を進めているが、町議会の決定は各自治体の判断に影響を与え、再稼働に向けた動きもさらに加速化していくと見られる。


「責任の重さ感じている」
佐藤良一議長

 女川町議会の佐藤良一議長は、報道陣の取材に「責任の重さを十分に感じている。この世に『絶対安全』はない。今後も一層、事業者(東北電力)に対する注意喚起、協議など監視の目を厳しくしていく」と述べた。

 福島第一原発事故を引き合いに出し、佐藤議長は「立地自治体が事業者(東京電力)任せにしていたことも事故の一因と思う。女川町議会は震災前から通年で何十回も対策委員会を実施してきた」と常に監視の目を向けてきたことを強調した。

 採決には「賛成派の議員は『何が何でも再稼働に賛成』というわけではなく、慎重に精査して悩んだ末に出した結論と思う」と話していた。



「意思しっかり受け止める」 
須田町長 時期明言せず 防災、安全面を最重視

須田善明町長の囲み取材 (3)

質問に答える須田町長

 女川町議会が同意の意思を正式に示したが、再稼働には立地自治体の県、石巻市、女川町の各首長の同意が欠かせない。「議会の判断を重視する」と繰り返し強調してきた須田善明町長は本会議の採択後、報道陣に対して「意思はしっかりと受け止める」としたが、判断時期の明言は避けた。主なやり取りは次の通り。

 ―賛成陳情採択の受け止めは
 「賛成、反対討論はさまざまな論点が網羅されていた。採決結果だけでなくそれぞれの議員が討論で述べた意見なども含め、全体として受け止めたい」

 ―自身の判断は
 「原子力規制委員会の審査結果と広域避難計画の妥当性、町議会の決定、東北電力の運営能力を踏まえ最終的に判断する。土台の安全性と議会意思は方向が固まったが、まだ確認しなければならない事項があり、自分の中で判断材料がそろわないと判断はできない」

 ―どのような形で表明するか
 「まだ決まっていないが、議員からはまず議会に示してほしいと意見があった。どのような形で示せるのかは議会とも協議し、今後の対応を検討する」

 ―判断の妨げになるものがあるとすれば
 「一番は広域避難計画など防災、安全面。計画はすでに策定済みだが、国や県の実効性向上に向けてどう対応するのか、またはしないのか、確認する。それが住民の不安解消とさらなる理解につながると思う」


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